猿とバナナ。🍌🐵
僕が小学生の頃、学者だった父が何故か張り切って、「ネーチャー」の全集を買い揃えた。かなり高価な科学全集だったが、小学生高学年の僕と弟にはその価値がさっぱり分からなかった。内容も大人向けで分かりづらかったし。
とはいえ、印象に残ってる記事が二つあって、一つは太陽の黒点についてなのだが、まあ、太陽も核融合するのねと思ったりした。(理解していなかったが)
もう一つが肝心かなめの「猿バナナ」である。これが一番印象に残った。
説明すると、地面にいくつかの木箱が置いてあり、天井にはバナナがぶら下げてある。さて、一匹のチンパンジーはどのようにして天井のバナナを取るのかという実験。
答えとしては、試行錯誤を繰り返しながら木箱をバナナの下まで積み重ね、箱に乗ってバナナをもぎ取るという結論を得た。もちろん科学者が。
この記事を読んで僕は「ふーん?」と思っただけなのだが、今考えてみれば人生はすべからくこれで、目的に向かって手段(道具も)を考えて、試行錯誤を重ねながら目的を達成するということしかないのではなかろうか?失敗もあるという前提なのはサルの実験から人間にも当てはまる。
今の若い人と決めつけるのは早計かもしれないが、試行錯誤というかあれこれ試して成功に導くという意識が薄いような気がするのだ。すぐに正解を求めがち。
これが最も現れていそうなのが受験産業と企業のセミナーで、手っ取り早くうまくいく方法を教わるかという思考に染まりきっている。断言してしまうが。
いやー、学んだり働いたりするのって本当にややこしくて、うまく学校で学んだり、職場でちゃんとやるにはある程度の失敗というのは付き物なんだよね。そこに人間関係も混ざってくるから余計ややこしい。
でも、先程の「猿バナナ」の例じゃないけども、いろいろと試すというか、試行錯誤しているうちに、勉強や仕事の手順も分かってくるし、いいアイデアを思いついたりする。得られる成果は塾とかセミナーの八割程度だと思うのだが、その分別の頭の使い方が身につくと思う。それにややこしさに耐えられるというおまけも付く。
僕も予備校や塾に行かなかったし、自己啓発本や人生訓を読んでもそれほど人生は変わらなかった。「君たちはどう生きるか」とか「嫌われる勇気」を読んでも実際の人生のややこしさと言ったら。
とはいえど勇気を呼び起こしてくれるのは「猿バナナ」で、霊長類の基本はこれしか無いのだと割り切って、今日も天井からぶら下がったバナナを手に入れるために箱を積み上げるのであった。
僕は仏教好きだけど、基本的に科学者の息子だし、人生経験から言っても「猿バナナ」を繰り返して生きていくのが人間の性だと思うんだよなー。
僕もがんばるから、君もがんばれ!