言ったことではなく、伝わったこと(日大事件からコミュニケーションの原則を考える)
日大学長の会見を見ていて、世代間、指導者・学生間でのコミュニケーションの齟齬についてのやりとりがありました。学長は、「皆さんも会社の中で、あるのではないか」という趣旨の発言をされていました。これまで日大の事件をどこか別世界の事件ととらえていましたが、この発言をきっかけに自分ごととして捉えることになりました。ここでは、日大選手が誤解したと言いたいのではなく、コミュニケーションの大原則について考えたいと思います。
意図した内容が伝わらないことは日常茶飯事に起きますよね、ビジネスの世界でも。だからこそ、ビジネスパーソンは、コミュニケーションの大原則「言ったことではなく、伝わったこと」を大切にしているのだと思います。あなたが言おうとした意図や言ったことが重要なのではなく、相手に伝わったことが重要なのです。これは企業勤務時代に研修で教わったことです。
だいぶ昔になりますが、NHK「英語でしゃべらナイト」という番組をよく見ていました。ある時、出演者の釈由美子さんがロッテマリーンズのボビー・バレンタイン監督にインタビューをしていました。正確に覚えていませんが、釈さんが「監督の仕事で何が大切ですか?」と聞くと、ボビーは、こう答えました。
The most important thing is to observe.
監督の仕事で一番重要なことは、観察することだと。その後こう続きます。何を観察しているかと言うと二つある。一つは自分の言ったことを相手が理解したかどうか、もうひとつは、その後相手の行動が変わったかどうか。そのために、相手の表情、行動をよくオブザーブしていると言っていました。相手が自分の伝えたいことを理解していなかったら、その場で別の言葉、別の言い方でもう一度言い直す。そして、その場で理解していたとしても、その後実際に行動が変わっていなかったら、もう一度自分の伝えたいことを前とは違う言い方で伝える。このことは、ビジネス、特に上司と部下の関係に非常に当てはまります。管理職の仕事で一番重要なのは、自分の言ったことが伝わったかどうか、行動が変化したかどうか、部下の表情、行動を観察することです。似たようことを、ラグビー日本代表のエディー・ジョーンズ ヘッドコーチも言っていました。
日大の監督やコーチは、選手を観察していたのだろうか?
自分の言ったことがどう伝わったかどうか、その後の行動がどう変わったかを。
言ったことではなく、伝わったこと。 The most important thing is to observe.
他山の石として、改めてコミュニケーションの鉄則を大切にしたいですね。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31017340W8A520C1000000/