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【お仕事回顧】姫と騎士の恋物語

【お仕事回顧】この記事はなにか?
・ポートフォリオ的に見せるものです
・自分がスランプに陥ったときに振り返るお話の作り方の備忘録
です

公開許可を取っていないものもあるのでタイトルはボカしてあります
お話の作り方などを記載してあるのでネタバレがあります
(タイトル非公開なのでネタバレも何もないですが)


概要

騎士と姫の恋物語を軸にした王道ファンタジー。全6作のシリーズ物のうちの4作目


期間

2020年4月~2020年6月

依頼元、依頼経緯

ゲーム制作会社、リピート依頼

関係者

企画窓口担当の方、打ち合わせ無し

仕事内容

ストーリーシナリオ、キャラクター設定、ストーリープロット制作、ストーリーシナリオ制作、その他テキスト各種制作

資料

特になし

納品物

企画大枠、キャラ設定、ストーリープロット、シナリオ、キャラボイス台本

ボリューム

60分尺のアニメくらいのボリュームをイメージ

時系列

各ストーリー依頼→作業→納品

概要

 ひとことプロットは
「真の騎士を目指す若者が様々に苦悩し、愛する姫すら救えず絶望した後、それでも姫を救うために一歩踏み出す物語」でした。

 決まっていた事項は「騎士は後の世では成功者」「ヒロインが死後、異形となる」「2人は結ばれない」「歴史の流れ」。

 全6編のシリーズ物の4作目、シリーズ物としては中盤に位置するストーリーで、これまでのフォーマットを踏襲しつつ、シリーズのラストに向けてスタートを切る立ち位置でした。

 ストーリーの軸は「ロミオとジュリエット」型です。青春と燃える恋、しかし生きている間には報わず、別れが訪れる。ヒロインの死が前提だったので、その現実に直面した時の主人公の感情をどれだけ詰め込めるかの勝負でした。

 描きたいシーンとして最初に浮かんだビジュアルイメージがサモトラケのニケでした。ルーブル美術館に行った時に見た首無し翼の像の姿がとても印象に残っていたので、いつかこれを組み込んだストーリーを作ってみたいと思っていました。
 もうひとつ、ストーリー着手時からずっと、岬から見える夕焼けの情景が頭にあり、高所の岬に立つ灯台が舞台になるように設定しました。

 描きたかった感情は「無情」と「慟哭」でした。才能もある努力家が、努力をすればするほど本当に欲しいものが手に入らない。自分が成長するほど大切なものを失う、という無情と、その残酷に対する主人公の慟哭をシーンとして描きたかったです。

 キャッチワードは「灯台」「湖」「絶祈(ぜっき)」。「絶祈(ぜっき)」は人生最期の祈り、といった意味の造語ですが、語感と意味合いがとても好きです。祈りが好きで戦いを嫌う王女を「英雄」と呼ぶには少し無理がありましたが、戦闘力以外でも「英雄」と呼んでしかるべき要素がある人物を目指しました。

あらすじ


 主人公は、女性のために国を裏切り投獄された兄を持ち、裏切り者の家族として苦しんでいました。祖国を追われた主人公はとある国の灯台で、ヒロインの王女と出会います。王女は心優しい性格なのに国を滅ぼすほどの魔力を持っていて、望まない力に苦しんでいました。王女を助けたことがきっかけで、主人公は王女の国で王様の騎士として働くことになります。
 騎士として忠義を尽くす日々の中で、主人公は王女に、王女もまた主人公に恋をします。しかし、婚約者がいる王女との恋が実ることは、裏切り者の兄と同じ道を歩むことになります。
 主人公は恋心を押し殺しながら騎士になるために成長します。騎士としてさらに成長するために王女の元を離れる時、主人公はヒロインに羽根のブローチを渡します。主人公にとってはなんでもない贈り物でしたが、ヒロインにとってはそれが宝物になります。王女を守るために努力して「真の騎士」と讃えられるまでに活躍を続ける主人公ですが、王女の国は敵国に攻められ王女の身にも悲劇が起こります。
 主人公はヒロインの死に直面し絶望しますが、王女は「主人公に真の騎士になってもらいたい」と願っていました。本当に守りたい大切なものを何一つ守れなかった無力感を抱えながらも主人公は国を守るために戦い続けます。その心と苦悩を知らない民衆は主人公の姿に敬仰と感謝を投げかけ、主人公は「真の騎士」として讃えられることになります。


感想

 イメージしたクライマックスシーンは、好きな人の名前を叫び続ける主人公。そのことで忘我だったヒロインが目を覚まし、2人が再会するというシーン。そこにたどり着くために全体を構成しました。

 主人公の成長に甘酸っぱい青春のやり取りと、とてつもない絶望、最後に救いをひとさじ、という塩梅を意識しました。

 恋愛ものは苦手で、特に告白シーンは絶対にまっすぐ書かないと決めています。「あなたが好きです」「私も好きです」といった言葉を使った告白をさせずに、互いに想い合っているシーンを入れることを意識しました。

 途中、ヒロインが敵国に嫁ぐことになり、2人が物理的に離れ離れになります。その際に互いの気持ちを確認する手段、連絡する手段がないことに気づき悩みました。主人公もヒロインも奥ゆかしい性格なので、仲を取り持つ人物が必要でした。そこで、2人を接着する人物として主人公のライバルキャラを設定しました。敵国の女将軍という設定であるため主人公と競うこともでき、女性であるためヒロインの気持ちも理解できる、非常にストーリーにマッチした活躍をしてくれて、パズルのピースがガッチリはまった感覚でした。性格もとても好きで、キャラ設定の時に思いついた「超絶美形なゴリラ」というキャッチコピーはとても気に入っています。

 ヒロインが変身させられる異形(モンスター)は、腕が羽根になっていて首が無いモンスター(モチーフはサモトラケのニケ)です。
 頭部が無いのは死因と紐付きます。腕が羽根になっているのは、手が存在することで可能になる「祈る」所作を奪われたことを表現しています。己の存在証明でもある祈りを奪われ、異形の翼へと変えられたヒロインの悲しみをビジュアルで表現したかったです。

 主人公(とその兄)のモチーフやエピソードは、アーサー王伝説に登場する湖の騎士ランスロットでした。あまり気づいた人はいなかったと思います。グィネヴィア王妃との報われぬ恋に身を焦がす裏切りの若い騎士、あたりのエピソードを意識しています。

 ヒロインのモチーフはカスティーリャ王女のフアナ。夫とのエピソードなどを参考にしていますが、こちらはほぼ名前のみです。一番やさしい性格だけど一番強力な力を持っている、という設定は、なんとなく聖闘士星矢のアンドロメダ瞬を思い出しました。

 ヒロインとの別れから数年の間、主人公はかつて目指した真の騎士として活躍を続けます。地位も名声も得ますが、ただ、一番守りたかったもの「だけ」が守れませんでした。「真の騎士」という絶賛の中にある皮肉、みたいなものが表現できるようにしました。
 本シリーズの中でもっとも報われない人物、という設定をしてしまったせめてもの罪滅ぼしに、後世ではもっとも出世した人物、という歴史的評価にしました。ごめんね。

 クライマックス、記憶と意志を奪われたヒロインは祈るためではなく、殺戮のために手を組むことを強制され、無理やり力を行使させられていました。毎日主人公の無事を祈っていたヒロインは、祈る所作を行う時に必ずあのブローチを手の中に包んでいました。そのブローチと主人公の声が、ヒロインが目覚めるきっかけとなりました。

 スピッツの「みなと」をずっと聞きながら書いてました。情景が浮かんでこのシナリオに非常にマッチしていました。この作品で使用された背景とBGMは雰囲気がストーリーにマッチしていてめっちゃお気に入りです。
 主人公の慟哭と、互いの奥ゆかしい恋心、悲劇的な展開とラストシーン。風景やBGMと合わせてお気に入りの作品です。

まとめ

 全6編のシリーズの中で、死と正面から向き合うことのしんどさを1番感じた作品でした。多分ヒロインの死が予期されておらず、覚悟していたものではない部分がこれまでと異なる点だったからだと思います。
 シリーズ全体のラストのストーリーは救いのある流れにしようと決めていたんですが、そのラストの展開はこの作品の中では明かせないため、見ている側からするとただただバッドエンド、鬱な展開に見えている、ということに後々気づきました。書いている側がこれだけしんどいんだもの、見ている人たちはとてもつらかったと思います。
 ごめんね。

印象に残っているシーン&セリフ

遠く離れた主人公について語るヒロインのシーン


政略結婚により嫁いだ先で不遇な目に遭い、それでも気丈に振る舞う王女に対して、どうしてそんなに気丈でいられるかを問われて

「故郷から離れた異国で、孤独に頑張って、過去を乗り越えて、
 周囲に認められたすごい人がいるんです。

「その人をずっと見ていました。だから……こんなことで負けません。」

「それに、私の役目は祈ることです。
 この力で他者を傷つけることは決してしません。
 あの人は……私の祈りを好きだって言ってくれたから。」

ヒロインを失い忘我で冷静さを失う主人公


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

仲間の前で我を忘れて師に感情をぶちまける主人公。
師は黙って主人公の感情を受け止めている。

「何が真の騎士だ!!
 アラガン様の危機にも間に合わなかった。
 キャスティリアも守れなかった!」

「守ると誓った、たった1人さえ守れずに、何が騎士だ!!」



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