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【お仕事回顧】姉妹愛を描いた砂漠の国の物語
【お仕事回顧】この記事はなにか?
・ポートフォリオ的に見せるものです
・自分がスランプに陥ったときに振り返るお話の作り方の備忘録
です
公開許可を取っていないものもあるのでタイトルはボカしてあります
お話の作り方などを記載してあるのでネタバレがあります
(タイトル非公開なのでネタバレも何もないですが)
概要
砂漠の国を舞台に王女の成長を描く王道ファンタジー。全6作のシリーズ物のうちの3作目
期間
2020年5月~2020年6月
依頼元、依頼経緯
ゲーム制作会社、リピート依頼
関係者
企画窓口担当の方、打ち合わせ無し
仕事内容
ストーリーシナリオ、キャラクター設定、ストーリープロット制作、ストーリーシナリオ制作、その他テキスト各種制作
資料
特になし
納品物
企画大枠、キャラ設定、ストーリープロット、シナリオ、キャラボイス台本
ボリューム
60分尺のアニメくらいのボリュームをイメージ
時系列
各ストーリー依頼→作業→納品
概要
ひとことプロットは
「砂漠の国の女王である姉への劣等感を抱えた王女が、
様々な出来事に触れて王女として成長する話」でした。
全6編のシリーズ物の3作目、シリーズ物としては中盤に位置するストーリーで、定まってきたフォーマットに当てはめつつ、「英雄」を別の角度から描くのを目的としました。
ゲーム内にはアーサー王をモチーフにした歴史的な英雄がおり、その人物の国と同盟関係にあった国があった設定だったので、ストーリー内でそのお国柄を出せれば成功かなと思っていました。
舞台となる国は古代エジプトをモチーフにした国だったので、ビジュアル的にも非常に映えるデザインになりました。シナリオ執筆時は情報が文字しかありませんので、キャラクターや背景などのビジュアル、BGMなどが仕上がった完成形を見るまで(エジプトのオリエンタルっぽさが出るのか…?)と内心ドキドキしていました。が、毎回素晴らしいクオリティのビジュアルに仕上がるため、杞憂に終わります。
決まっていた事項は「砂漠の国」「英雄である女王が死亡する」「死亡した女王は後々異形のモンスターとなって主人公と戦う」などでした。
ストーリーの軸は「シンデレラストーリー」型です。みじめな境遇にある主人公が自分の努力もしくは誰かの助けを得て成功を収める超王道のストーリー型です。
設定したキャッチワードは「砂漠」「白銀」「女王」「姉妹愛」「百合」です。「白銀」はキャラクターのビジュアルや異名などにも使用した重要ワードになりました。
主人公のモチーフは世界三大美女の1人「クレオパトラ7世フィロパトル」。クレオパトラと名前のつく女性は歴史上複数存在していますが、僕たちがゲームや創作物で描くイメージはクレオパトラ7世のものです。
主人公を導く英雄である主人公の姉のモチーフはクレオパトラ5世トリュファイナです。クレオパトラ7世フィロパトルの母親と言われている存在です(諸説あり)。
今回はキャラ設定にがっつりモチーフキャラの史実エピソードや名前などを盛り込むことを決めていました。
絶世の美女としてめっちゃモテた
カエサル、アントニウスといった歴史上の英雄と運命的な出会いを果たして恋をする
絨毯に隠れて愛しの人に会いに来た
などなど。絨毯に~ のエピソードは厳密に言うとシリーズの別のストーリーで使用しました。
書きたかった感情は「姉妹の愛情」。厳しく見えて本当は愛している、という、ベタだけど不変的に求められる感情と、姉妹の関係性を描きたかったです。偉大すぎる姉の影に隠れてしまって自分が出せずウジウジしている妹が、姉の死をきっかけとして真の女王へと成長していくストーリー。という原型は最初からありました。
あらすじ
主人公は砂漠の国の王女です。その国では少し前に先代の王が崩御しました。王女は王位継承権を持ちますがまだ幼いため、成人するまでは王異母姉妹である姉が後見人として女王の政務をこなしています。
姉は非常に優秀で、その絶世の美貌と政治力で国力を増し、他国を併合して砂漠の大地を統一しようとしています。絹のような肌と鈴のような声、そして白く輝く長い髪は超常の力を放ち、姉は「砂漠の白銀」と称えられていました。
そんな姉の影で主人公の王女は凹んでいます。後見人という立場にありながら姉は国民にも絶大な人気があり、本来の王位継承者である王女の存在を誰も覚えていないのでは、と危惧するほどでした。
姉は女王として毅然と振る舞い、その厳しい姿勢を王女にも求めました。
姉の厳しい態度もまた、王女を萎縮させてしまっていました。
隣国との戦争が迫る中、姉は外交の力を発揮し歴戦の英雄に援軍を求めます。
英雄の元から少数精鋭の援軍として騎士が派遣されます。
王女の護衛として派遣された騎士に対して、王女は最初は互いにツンケンしていましたが、危ないところを助けられた吊り橋効果+男性への免疫不足により、騎士のことが好きになってしまいます。
王女はこっそり王宮を抜け出して市場に行くことが頻繁でしたが、それはあるものを探すためでした。女王の座に就く前の幼い日々、ただの姉妹だった頃に姉が王女に買ってくれたペアの耳飾り。
あの頃のように姉と仲良くしたい、というのが王女の願いでした。
結局耳飾りは見つかりませんでしたが、騎士のアドバイスもあり、王女は姉としっかり話をすることを決意します。
王女が心配する中、姉は隣国との戦争に勝利し、大陸を統一することに成功します。戦が終わり、姉とゆっくり話がしたいと考えていた王女でしたが、姉とは面会謝絶になってしまいます。
実は姉には死が目前に迫っていました。姉が持ち、使っていた超常の力は「呪い」によって得た力で、その力と引き換えに、大陸を統一した瞬間、王座にいた者が生命を捧げなければいけない、という制約がありました。
姉は後見人として女王の座につき、大陸を統一をなした後に呪いによって死を迎え、全てを妹である王女に託そうと考えていました。
王女が姉の本心に気づいた時にはもう遅く、失われていく姉の生命に何もすることはできませんでした。
力尽きた姉の手からは古い耳飾りがこぼれ落ちました。
姉もまた、女王と呪いの重圧に耐えながら、かつて仲の良かった頃のように、ただの姉妹に戻りたかったのでした。
姉の真意を、愛を、その願いを知った王女は精神的な成長を遂げます。
姉の遺志を継いで迫る脅威を退ける王女の髪は、白銀に輝きます。
それはまるで、砂漠の白銀と呼ばれた姉が蘇ったかのようでした。
感想
シリーズの1作でありながら、独特なお国柄が表現されるストーリーだっただめ、シリーズの作品であることを強調するために別のストーリーに登場するキャラクター達を登場させることは考えていました。
シリーズのラストも固まってきていたので、別のストーリーで主人公として活躍していたキャラ達を再登場させることにしました。
王女が騎士のことが好きになってしまうシーンについてはギャグっぽい見せ方になっていますが、この関係性は後々まで影響してくる非常に重要な関係性作りでした。クレオパトラとアントニウスの恋人関係をイメージしながらシナリオを書いていましたが、実際の歴史もこんな風に、個人の感情1つで軍や国が動く、といったことがあったんだろうな、と少し可笑しい気持ちで書いていました。
王女が好きになる騎士は男装の女の子なので、百合CPになるのでしょうか? 姉妹、幼なじみなど、未熟ながら百合を意識したキャラクターのカップリングを設定しました。
前回のストーリーと同一のシリーズであることを示唆するために、前回のストーリーに登場したキャラクターを再登場させましたが、特に英雄キャラ達を横串でつなげるキャラクターが必要だったため、とあるキャラクターに、今回の英雄キャラである女王様と絡ませる役割を持たせて工夫しました。「英雄たち全員と面識があるキャラがいる」のが後々の協力体制を築くのに便利になってきます。
再登場キャラでいうと、膠着状態の2つの国を開戦にまで導き、非常に長引くだろうと予想された両国の戦争を数日で終わらせた化け物みたいな軍師がこのストーリーで活躍していたのですが、あまり話題になりませんでした。僕は好きなキャラなんですが、地味だからでしょうか……。
イメージしたクライマックスシーンは2つあって、姉妹の別離のシーンと、王女が姉の遺志を継いで女王としての力に目覚めるシーン。どちらもうまくシーンに出来た感触はありますが、若干尺不足というか、詰め込み感が出てしまったので、もう少しどちらかに比重を置いた方がよかったのかなと少し思っています。
姉が女王の座に着いた状態でスタートするので、普通に考えたら主人公の妹に王位は回ってきません。なので、どうやって王位を妹に譲らせるか悩みました。このあたりは日本の戦国時代で武田勝頼が信玄の「後継者代理」として指定されたあたりのエピソードを参考にしました。
また完璧な英雄である姉をどうやって死に追いやるか、には悩まされました。このシリーズは毎度これで悩んでいる気がします。
砂漠といえばエジプト、エジプトといえばファラオの呪い、ということで、呪いを使うことにしました。愛しい人の死を乗り越えて成長する「瞬間」を描写できたのは有意義でした。
シリーズのフィナーレを飾る最終決戦の流れは出来ていたので、前回同様、ストーリーの最後にシリーズの結末を示唆するポストクレジットシーンを入れました。
異形となってしまった姉を妹が止めるシーンで、妹の成長が見せられました。主人公はシリーズの中で成長の幅がもっとも大きいキャラだった気がします。
まとめ
異国情緒溢れる砂漠の国が舞台になる物語は古今沢山ありますね。アリババと40人の盗賊、アラジン、千夜一夜物語。また、そういう物語を題材にしたゲームなどもプレイした記憶があり、幼い頃から「砂漠の国」のイメージは刷り込まれている気がしました。
そして砂漠の国といえば美しい女王が治めている、というのも刷り込まれているような……。これってやっぱりドラクエⅢの影響なんですかね……?
実際にキャラ設定やシナリオを書いてみて、砂漠の国の「ビジュアルとしての題材の良さ」「国の設定としての個性の出しやすさ」「現実とファンタジーが織り交ぜられた世界観の作り方」など、とても工夫のしがいがある題材だと改めて思いました。
印象に残っているシーン&セリフ
再登場した騎士達の会話。
再登場楽しかった……。
真面目(女)と不真面目(男)のライバル騎士。不真面目騎士が覗きを咎められて王女の護衛に粛清されそうになって……
「おい、助けてくれ!!」
「この……ちょこまかと!」
「ま、待って。何があったかわからないけど、
そいつは一応オレの連れで……。」
「そうだよ、話を聞いてくれって!俺は大陸からきた客だっての!」
「戯言を! いやらしい目でイスナ様を覗いていたくせに。」
「覗き見……? オレ達が警備の仕事をしている間に……。」
「の、覗き見なんてしてないっつーの!!
なあ、テフレア、なんとかしてくれよ。仲間だろ!」
「……………………。いや、知らない男が紛れてたみたいだ。
きっと賊ですね。やっちゃってください。」
「なんでだよ!!」
「覚悟……。」
なんとか意識を他に向けて切り抜ける
「ま、待ってください~、イスナ様!」
「ふぅ……命拾いしたぜ。」
「ちっ……。」
「舌打ちはおかしいだろ、お前。」
幼い頃の姉妹のやり取り
耳飾りを1つずつ持つ仲の良い姉妹。幸せになってほしい……。
「わぁ、キレイ!! これなぁに、姉様?」
「魔除けのお守りよ。あなたを守ってくれるわ。
1つずつ持っておきましょうか。」
「はい、姉様!! えへへ……姉様とおそろいだ。
あ。じゃあ、姉様のお守りを貸して?」
「? どうしたの、イスナ? 耳飾りを握りしめたりして。」
「お守りはカアラに応えてくれる力があるんでしょ?
姉様を守ってくれますようにって お守りにお祈りするの。」
「まぁ……。 ありがとう、イスナ。私もあなたを守れるように
お祈りするわね。」
姉の今際の言葉
妹に嫌われても構わない覚悟で厳しくし続けていたのに、今際の際、自分のために涙を流してくれる妹の愛に触れて。
(私の選択はきっと間違っていない……。
……あの耳飾りに祈っておいてよかった。
あなたが立派な女王に……なれますようにって……。
(でもね、こっそり別の願いも祈っていたの……。
今度生まれる時は……王族なんかじゃない、
どこにでもいる……普通の……姉妹として……。)
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