観賞後、違う自分になっている映画①「カティンの森」

自分史上、最大級のトラウマ映画。

戦争映画ベスト1!

アカデミー賞を総ナメした「シンドラーのリスト」がメロドラマに感じてしまうほどの救いのなさ。絶望感。痛み。喪失感。そして精神の荒廃。

ひとかけらの救いもない。

「プライベートライアン」が観客を戦場に放り込む映画だとしたら、この「カティンの森」は戦争を体験した人間が心に負った傷を怨念をこめて観客に刻みつけてくる。

凄まじい。その一言。

淡々と流れ作業のごとく処刑される捕虜。ブルドーザーで埋め立てられていく死体の山。

生還した者でさえ、精神を病み路上で自殺し、残された家族は生還の希望を踏みにじられ、ただただ耐えるのみ。

エンドロールは長い無音からの鎮魂歌。

そう、これらのおびただしい死に大義などないし、彼らはただ無駄死にしていった。意味などないし誇れることなどない。後に残されるのは救いのない悲しみと虚しさのみ。だから慰め鎮める以外にないのだ。

英霊とか大義とか愛国とか、そんな上っ面なメルヘンに逃避することなく「お前はこの戦争が生み出す虚無に向き合えるか」と真正面から厳しく問われているかのような圧力。

圧倒的な虚無感に苛まれ、精神的な逃げ場もなく、劇場で暫く立ち上がれなかった経験は後にも先にもこの映画だけだった。


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