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【歴史本の山を崩せ#002】『戦国のコミュニケーション』山田邦明

言うまでもなく戦国時代にはスマホや携帯電話、インターネットなどというツールはありません。
情報のやり取りが文字通り死活問題に関わる時代のコミュニケーション事情は一体どのようなものだったのでしょう。

当時の情報伝達の主役は手紙とそれを届ける使者。
手紙が届くまでの間に、情勢が変わってしまうこともある。
そもそも、天候に阻まれ立往生することもあれば、敵国を突破できずに捕まってしまい、手紙を届けることができなくなることさえある。
通話もメールも、たとえ相手がどんなに離れた場所にいても、手のひらサイズの端末から即座にできてしまう現代人の感覚では、とてもではありませんが堪えられないでしょう。

現在に遺る当時の手紙を史料に戦国コミュニケーション事情を読み解く、非常に面白い本です。
それぞれの手紙には書き手の個性が表れていて、戦国武将たちの意外な素顔を垣間見ることができます。
例えば中国地方の覇者・毛利元就が息子に家庭内の愚痴をこぼす手紙など。
権謀術数に長けた元就も、そんな手紙が数百年後に本に載せられて読まれるなど思いもよらないことでしょう。

こうして紡がれた戦国時代のコミュニケーション事情にまつわる九つの話を収録。
各話の最後に、著者がコメントとして解説を付してくれています。
コメントには本文を書くにあたっての四方山話もあり、手紙という史料から歴史家がどのようにして史実を復元していくのかを堪能できます。
歴史ものが苦手だったり、慣れない人は、先にコメントを読んでから本文に戻ると内容の理解がしやすいでしょう。
時代順になっているので第一話から通読するのがベストではありますが、各話を単独で読んでもある程度大丈夫です。
登場人物の人数と相互の関係が複雑な第一話がもしかすると躓きポイントかもしれません。
第一話で壁にぶつかったら、第二話コメントから第ニ話本文へ飛んでしまう読み方もアリです。

『戦国のコミュニケーション』新装版
著者:山田邦明
出版:吉川弘文館
初版:2020年(オリジナル版は2011年)
定価:2300円+税

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