博物館の展示コンテンツ制作で生成AIを活用する事例
こんにちは。歴史にまつわるデザイン制作をしているたけもしです。(自己紹介はこちら)
博物館の展示制作では、情報の正確さと多さが求められる一方で、時間やリソースが限られているのではないかと思います。
このnoteでは、「縄文不動産」という企画展のデザイン制作で、生成AIを活用した3つの事例を挙げて、その活用のメリットと課題を紹介してみます!
「縄文不動産」についてはこちらで詳しく紹介しています💁♀️
生成AIの活用事例3つ
生成AIの活用①:縄文人の気持ちになって文章生成(GPTs)
使用ツール:GPTs
遺跡情報を入力し、物件ごとに特徴を設定することで、生成AIが「住んだ人」と「担当者」コメントのドラフトを生成。これをレビューし、最終的な制作物の叩き台として活用しました。
メリット
時間短縮:人手で数日かかる作業が約2時間で完了。
効率化:「事実を解釈した情報」や「現存しないものの復元」に対する親和性が高く、情報生成がスムーズ。
柔軟性:生成されたコメントをもとにレビュー・修正することで、効率的で良いアウトプットを実現。
デメリット
情報の正確性が完全には保証されないため、最後は学芸員さんの詳細な確認が必要。
コメントがテンプレート的になりやすく、個性や深みが不足する可能性がある。
生成AIの活用②:竪穴住居イラストのパターン出し(Midjourney)
使用ツール:Midjourney
生成AIツール(Midjourney)を使用して、竪穴住居イラストの構図やトーンを複数パターン出力。試作データを基に議論を行い、最終的に22点の描き下ろしイラストを制作しました。
使用したプロンプト例①
使用したプロンプトと出力結果②
メリット
イラストの初期案出力:短時間で多様なアイデアを生成可能。
認識の統一:議論のベースとなる視覚資料を提供し、イメージの齟齬を軽減。
効率性:ダミーデータを活用することで、アウトプットの方向性を迅速に決定。
デメリット
史実に基づく生成の難しさ:背景や植生を考慮した出力が困難。
人工物の混入:生成画像に不適切な要素が含まれる場合がある。
最終制作物には不向き:情報の正確さが求められる博物館展示では直接使用が難しい。
生成AIの活用③:紙の資料の読み取りOCR(Chat GPT 4o)
使用ツール:Chat GPT 4o
画像データをChatGPTに渡して文字起こしを行い、表形式のデータとして抽出しました。これにより、大量の紙資料を効率的にデータ化することができました。
メリット
作業効率の向上:100件以上の竪穴住居データを短時間でデータ化可能。
操作の簡便性:画像をアップロードするだけで自動処理が可能。
柔軟性:出力されたデータを容易に編集・修正できる。
デメリット
誤植の発生:一定水準の正確さが保たれるものの、全体の確認と修正作業が必要。
複雑なレイアウトや特殊文字には対応しきれない場合がある。
まとめ
総合的なメリットとデメリット
メリット
工数削減:膨大な作業時間を大幅に短縮。
効率的な試作:イラストや文章の初期案作成に適しており、議論や調整の基盤として有用。
データの迅速な準備:ダミーデータや資料データ化が迅速かつ効率的に行える。
デメリット
情報の正確性:特に博物館展示ではAIが生成した情報の信頼性を確保するための追加作業が必要。
技術的限界:時代背景や文化的要素を考慮した出力が難しく、背景素材や最終的なアウトプットには不向きな場合がある。
人手との併用が必須:生成物をそのまま使用することは難しく、学芸員やデザイナーの修正が不可欠。
生成AIを活用することで、限られた時間やリソースの中でも効率的に文章や図の制作が可能になります。
一方で、AIによる生成物には正確性や時代背景の再現性の課題があり、人手による確認や修正が必要です。
こうした技術の活用が、博物館の展示制作において何かお力になれば幸いです。
不明点などあればご気軽にご連絡ください!(💌:mositake@gmail.com)