マーケティングのHOWを導く型の話。
ごめんください。関谷です。
noteの更新も大体ひと月に一回くらいのペースで固定されてきてしまいました。
さて、今回はマーケティングのHOWをどうやって決めるのか。という視点で記事を書いてみようと思います。
今やSNSや各社のオウンド・メディア、個人ブログを通してさまざまなHOWに触れることができ、たくさんのTipsを知ることが容易になっています。〇〇マーケティングという言葉が飽和していますね。
HOWは、4Pでいうところのプロモーション(4Cで言えばコミュニケーション)にあたる”戦術”パートですね。色々なHOWが溢れる中で、どうやって自社にとって適切なHOWを導き出せば良いのでしょうか。
私が経験した中で、HOWの方向性を決める型について記してみたいと思います。
2つのコミュニケーション分類
まず知っておかなければいけないのは、コミュニケーションの分類についてです。コミュニケーション手法は大きく分けて2つに分類されます。
1)プッシュ的コミュニケーション
一つ目は、プッシュ方式のコミュニケーションです。
プッシュ方式では、4PのPlaceと強い結びつきがあります。流通戦略と併せて検討したい手法です。
主に、営業組織や流通業者に資源投下することで、流通の過程で顧客に対して自社製品を推奨してもらう手法です。
人的販売(営業)によるインセンティブ、流通業者に対する助成(7掛卸etc)などの手法が一般的です。
要するに、販売スタッフや販売店を含む流通業者に自社製品を優先的に売ってもらう努力をしてもらう手法です。
2)プル的コミュニケーション
一方で、直接最終消費者とコミュニケーションをとるのがプル方式のコミュニケーションです。
プル方式は自社ブランドに対する選好意識を促し、指名買いしてもらえるように努力する手法です。
広告やDM、メルマガ、試供品などの手法が一般的です。
SNSでよく目にするのはプル方式のHOWですね。
まぁ、プッシュ方式よりも分かりやすいし、華がありますよね。
場合によっては広告代理店のポジショントークだったりもしますが。
コミュニケーション・ミックス
聡いみなさんならお分かりでしょうが、どちらが優れているというわけでもありません。どちらも並行して行うのがベターですね。
広告がプル的要素ですので、プッシュ的なコミュニケーションは広告代理店にお願いすることは困難を極めます。なので、事業会社にお勤めなのであれば、プッシュ的要素について理解を深めると、広告代理店の協力とのシナジーで大きな効果を得られるかもしれません。
これら2つのコミュニケーション手法は商材によって強弱をつけながら資源配分を行います。
大きな基準は、その商材が「指名買いが期待できるか」という点です。
指名買いが期待できるのであれば、ブランド選好意識をより強固なものにするためのプル的コミュニケーションを優先して行うことが望ましいです。
逆に、指名買いが期待できない場合、またはその程度が低い場合はプッシュ的コミュニケーションを優先して行い、流通業者に「この製品を優先して販売したい」と思ってもらう努力が必要になってきます。
コミュニケーション・ミックスの型の要素
さて、ここからが本題です。
この強弱の付け方をもう少しわかりやすくできないか、という点においては【消費者行動類型】という”型”が非常に有効です。
消費者行動類型とは、縦軸に「購買関与度」、横軸に「知識」をとってマトリックス状にして消費者の行動パターンを紐解くための型になります。
「購買関与度」とは
「購買関与度」とは消費者が購買意思決定のときに感じるストレスの程度といったら良いでしょうか。「失敗したくない」心理のことですね。
高額な商材や購入頻度の低い商材ほど購買関与度は高くなる傾向にあります。
購買関与度が高いほど、消費者は情報を集めたがります。
例えば、注文住宅を決める際にいきなり指名買いする人はあまりいないと思います。
住宅展示場に行き、それぞれのハウスメーカーの特徴を知り、ネット上で口コミを調べ、時には相見積もりやコンペのような形式で提案をもらってから意思決定するのではないでしょうか。
これは、家という商材が高単価かつ一生に一度の買い物という頻度の低さから「失敗したくない」というストレスを引き出し、消費者に情報を集めさせるからですね。
「知識」とは
「知識」は、まぁ読んで字の如くと言いましょうか、消費者が持っている商材に関する情報量のことです。
知識を多く持つ消費者ほど提供する情報の要約が必要なくなります。
例えば、カメラを趣味にする人に対して「解放F値が2.8、ISO感度はMAX25600、画素数2000万画素」という情報を提供すると「ふむふむ」となり検討材料にしてくれそうです。
一方で、初めてカメラを買う人に同じ情報を与えるとどうでしょうか?「さっぱりわからないからスマホでいいか」となってしまうかもしれません。
これを要約して「一眼特有の綺麗なボケが表現できて、暗いところでも綺麗に映る!スマホの画素数の約2倍で拡大印刷でも綺麗なまま」と伝えると結果が変わるかもしれませんね。
要するに、「知識」はセールス側のコミュニケーション深度を規定してくれます。
4種類の類型
さてさて、「購買関与度」と「知識」の2軸で検討するので、4象限=4種類の型に分類できることになりますね。
以下、解説していきましょう。
一ノ型「購買関与度”高” × 知識”低”」
この型に当てはまる商材の消費者は、情報を集める意欲はあるが、現状では情報量が不足しているタイプです。
先ほど例に挙げた、注文住宅などはまさにこの型に当てはまります。
こうした商材では、製品やブランドに関する理解を支援するようなコミュニケーションが望ましいです。
つまり、販売員や自社の営業パーソンからの説明、流通業者からの推奨など「プッシュ方式」でのコミュニケーションが有効です。
口コミなどで要約された情報が拡散されるような働きかけも有効になってきます。
この型に当てはまる場合、注意しなければいけないのは購買後の「認知的不協和」です。
購買後の認知的不協和とは、簡単にいうと「この商品で良かったのかな」というストレスを抱える状態とでも言いましょうか。高額な商品を買った時って「悩んだ末に買ったけど、あっちの商品の方がよかったかな」と隣芝青現象起きませんか?まさにそのことなんですよね。
なので、「知ってるブランドだから信頼できる」と思ってもらえるように広告などのプル方式でのコミュニケーションも求められます。
また、売って終わりではなく、購入後のアフタフォローもしっかり行う必要があります。「あなたの選択は間違っていませんよ」と伝えることで、上述した要約度の高い口コミの拡散を誘発しましょう。
二ノ型「購買関与度”高” × 知識”高”」
この象限に当てはまる商材の消費者は、知識もある上に情報収集にも積極的で、選好意欲が非常に高いのが特徴です。
例に挙げた趣味のカメラなんかが当てはまるかと思います。
選好意欲が高いので「指名買い」が十分に期待できますので、広告などのプル的コミュニケーションが効果的です。
また、CtoCコミュニケーション(他の消費者への拡散)も期待できるのでSNSなどを通して継続的なコミュニケーションも重要になってきます。
世界観を作り上げ、信者とも呼べるファンを創出するブランディングなどが効果を発揮する商材とも言えます。
さらに、この型の消費者は購入するフェーズになくても継続的に情報を収集する傾向があるので(情報を集めることそのものが趣味になっているような)、タッチポイントを広くとり、常に情報を発信しておく必要があります。
三ノ型「購買関与度”低” × 知識”低”」
この象限については、情報に無関心な消費者という特徴が大きいです。
思考停止して購入するような消耗品などが当てはまります。私も歯ブラシなどは磨ければなんでもいいと思い、店頭にある一番安いものを買ってしまいます。
要するに、「指名買い」は期待できないので、店頭で目立つための流通戦略が必要=プッシュ的なコミュニケーションに重きを置いた方が良いです。
また、マス広告を利用して認知率を上げ(プル的要素)、できるだけ欠品のないように配荷率を最大限にする努力(プッシュ的要素)が重要です。
マーケターなら憧れるP&Gのマーケティング手法はこの象限に当てはまるケースが多いですね。
この象限の商材は「バラエティ・シーキング」が起きやすいという点も大きな特徴でしょう。
バラエティ・シーキングとは「特に現在使用している商品に不満はないけど、他社製品に浮気してみよう」といった心理ですね。
シャンプーとか毎回思考停止で同じものを買うけど、たまに新商品が出てたりすると試してみたくなりませんか?そんな真理のことを指します。
比較的低価格で、購入頻度も高いので「別に失敗してもいいか」と思えるからなんでしょうね。
なので、他社の消費者を奪うチャンスがある一方で、自社の消費者の流出にも気を配らなければならないのでブランド広告のようなプル的なコミュニケーションも案外効果的だったりします。
四ノ型「購買関与度”低” × 知識”高”」
この象限に当てはまる商材の消費者は、自身の持っている知識に基づいて購入判断をするので、新しい情報には消極的です。
例えばですが、私はMacbook Airを愛用していますが、その前もMacbook Airでした。Macbookが優れていることはわかっているから、特に情報探索はせずにほぼ思考停止でMacbookです。次もおそらくそうでしょう。(M1チップにしたので実は情報探索しているのですが)
まぁ、このように経験に基づき判断するため、ほぼ指名買いです。
他のブランドに浮気されないように、広告を打つなどのプル的コミュニケーションが有効的です。
一方で、別に探索意欲も高くないので店頭で見つけることができなければ「別にいいや」というタイプの消費者なので、店頭での露出や配荷率の最大化などプッシュ的なコミュニケーションも非常に重要になってきます。
まとめ
ここまで書いて4000字程度。
文章を書くことに疲れてしまいましたが、もう一踏ん張りします。
ここまでの話をまとめてみると、
・コミュニケーション手法には大きく分けて2種類ある
1)プッシュ的(人的販売などへの資源投下)
2)プル的(広告などで指名買いを狙う)
・プッシュとプルの使い分けには4つの型が有効
一ノ型 プッシュが重要+補佐的にプル方式も
二ノ型 プル方式が超重要+タッチポイントを広げる
三ノ型 プッシュ(配荷率を上げる)×プル(認知率を上げる)
四ノ型 プッシュもプルもバランス良く
こんなところでしょうか。
私がこれまで担当した業務で一番やりがいがあったのは一ノ型ですかね。
人事評価制度にまで踏み込んだプッシュコミュニケーションは事業者でないとできません。
巷で話題になるHOWは広告代理店が絡んでいたり、代理店出身の方だったりでプル的要素に偏っています。
餅は餅屋ということで、プル的な要素は代理店に任せ(ディレクションできる程度の知識は必要ですが)、事業者側にはもう少しプッシュ的な要素も知ってほしいと思い、記事を書き起こしてみました。
今回の記事の参考にしたのは下記の書籍です。
事業者目線でマーケティングを考えるのであれば、基礎固めに大変重宝する書籍ですので、ぜひお手にとってみてください。
どんなに優れたHOWであっても、使う場面を間違うと効果は発揮されません。
マーケターなら、まず取り扱う商材を理解して、適切な場面で適切なHOWを選択できるようになりたいものです。
HOWの前にWHATを深掘りしてみるのも良いのではないでしょうか。
今回の記事がお役に立てれば、何よりです。