【東大授業料値上げ開示請求・その5】それなりに黒塗りの開示を受けました
こんにちは。別に黒塗りする作業をした人が悪いわけではなく、その人にとってはそれが仕事なのだとは思いますが、とはいえこの国の情報公開制度の運用や実践の全体に対しては必ずしも納得がいっていない竹麻呂です。
何が開示されることになったかは前回の投稿をご覧ください。
何を開示請求していたかは初回の投稿「【東大授業料値上げ開示請求・その1】行った開示請求の内容を解説します」をご覧ください。
では、早速いってみましょう。今回はこちらで塗りつぶし処理はしておらず、真っ黒なところはオリジナルな黒塗りです。
ハイライト
前回同様、速報的に重要度の高いトピックを抜き出してみます。
5月14日の時点で、授業料増額分の充当を予定している内容及び所要額を具体的に示した表が存在し、会議に提出されていたことが明らかになりました→(2) 2024年5月14日の科所長会議の資料等
6月4日の時点で、授業料値上げを6月中に各会議で審議・決定するスケジュールが想定されていたらしきことが明らかになりました(その後にこのスケジュールが断念されたことは既報のとおり)→(4) 2024年6月4日の科所長会議の資料等
例によってリンクから該当箇所にジャンプできます。
(1) 諸会議の日程
見事な黒塗りで、無惨にもただの東大行事カレンダーとなり果てています。可哀相に。というわけで決定通知書をもらった時点で予想していた通りですが、ほしかった会議日程の情報は開示されませんでした。
ところで余談ですが、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律第6条第1項は、部分開示について「当該部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認められるとき」は部分開示しなくてよい(全体が不開示でよい)と規定しています。このケースで黒塗りされていない部分はどのあたりが「有意の情報」なんでしょうね。
(2) 2024年5月14日の科所長会議の資料等
開示決定時は「議題表」と「資料3授業料関係」の計11ページが開示されるとされていましたが、うち議題表が2ページでした。また、議題表を見ると資料3については「3-1. 授業料について(説明資料)」と「3-2. 授業料について(スケジュール)」の2つのパートに分かれているようです。
また議題表では議題03番「授業料関係」の「担当部署」が「財務課」となっていることが分かります。東京大学にどんな課があるかは東京大学事務組織規則や東京大学本部事務組織所掌事務規程をご覧いただくとして、今年の春に新設された「CFOオフィス」の事務方を経営企画課とともに担っている部署が財務課であることは、東京大学CFOオフィス内規に明記されています。CFOやそれを柱とした体制が学内にどのような変化を及ぼしているのかはよく分からないのですが。
さて、問題の資料3です。画像は抜粋して掲載していきます。
このような具合で、「改定後」「今後」の部分はことごとく黒塗りになっています。さてそれで、2ページ目は飛ばして、3ページ目にいきなり、これまでずっと出てくるべきなのに出てこなかった表が載っています。
当然のように中身は黒塗りですが、タイトルが「充当を予定している内容及び所要額」ということで、授業料の値上げに相当する額を何に使う予定なのかの一覧表であり、表の見出しの部分から金額の試算まで含まれたある程度具体的な内容であることが分かります。
こういった情報を示すべきことは、「総長対話」でも発言があったはずですし、教養学部学生自治会理事会の7月2日付け要望書でも指摘されています。既に内部でこのような資料が存在しているのに、学生に対して一切それを提示しない執行部の態度について、みなさんはどのようにお考えになるでしょうか。
次にまいります。
授業料免除に関するスライドです。筆者が軽く探した限り、授業料免除の適用者数の実績は検索で見つけられませんでした。どこかで公開されているのかもしれませんが、もしかしたら新情報かもしれません。
以下、同様に横向きのスライドが4ページ続きますが、おおむね公知の情報なので上に貼ったPDFを見ていただくとして、説明は飛ばします。最後に1枚だけ縦向きの紙があり、これが資料3-2「授業料について(スケジュール)」であると想像されます。「想像されます」というのは、こういうことになっているからです。
これぞ日本のお役所の伝統芸、ご堪能あれ。
6月中に決定・7月中旬に発表というスケジュール案がここで出てくれば決定的な証拠だと思っていたのですが、世の中そこまで甘くないですね。でもスケジュールの話はこのあとすぐまた出てくるのでご安心を。
ところでどうでもいいですが、これをこの状態で出してきたというのは、文書として資料3-2を1つの単位で捉えていれば「有意の情報が記録されていない」として丸ごと不開示になるはずですから、資料3全体を1つの法人文書と捉えてその部分開示として扱ったことになります。それは開示請求に係る法人文書を広めに特定することにつながりますから、(今回は結果として完全に真っ黒のページが増えただけですが)一般論としては請求者に有利な取り扱いです。1件目の会議予定表しかり、法第5条第3号と第4号柱書は片っ端から躊躇なく適用してくるのに、妙なところが律儀だなという印象を持ちます。
(4) 2024年6月4日の科所長会議の資料等
資料を請求していましたが、開示されたのは議題表だけです。
ここでのポイントは、議題02番「授業料関係」について、「教育研究評議会、経営協議会、役員会に付議」と書かれていることです。他の議題で「原案どおり了承」などと書いてあるところを見ると、この紙はおそらく会議終了後に結果を書き込んだものではないかと想像されるのですが、したがってこの時点では科所長会議での審議は終わって、その先のプロセスへ進むことが予定されていたことになります。なお、科所長会議は議決機関ではないので、会議としての了承を得なくてもプロセスを先に進めることは原理的には可能であり、実際議題03、04、06では「原案どおり了承」した上で「教育研究評議会、役員会に付議」すると書かれているのに、この議題02では「原案どおり了承」がなく単に後続の会議に付議する旨だけが書かれているのが意味深です。
それはさておき、時期からして付議する会議は6月に開催される回であると考えられ、すなわちこの時点では6月中に各会議で審議・決定するスケジュールであったと見られます。なお、実際には6月18日の教育研究評議会に授業料に関する議題は付議されず、後にこのスケジュールは断念されたことは前回の投稿で述べたとおりです。
もう一つ、決定通知書では69ページの「資料2授業料関係」として「本学の授業料改定案に対する各部局長並びに各部局教員等からの意見を取りまとめた内容」の資料があるとされていましたが、議題表を見ると「2-1: 授業料について(主な意見)」「2-2: 授業料について(部局からの質問)」「2-3: 授業料について(部局意見全体版)」の3つのパートで構成されていることが分かります。いずれにしても不開示なので中身はわかりませんが、資料2-1と2-2がおそらく要約版で、2-3が原文に近いものではないかと個人的には想像します。
(6) 2024年6月18日の教育研究評議会の資料等
開示決定通知書で授業料に関する議題は付議されていないとのことでしたが、たしかに議題表の一覧にも掲載されていませんでした。
(8) 2024年6月21日の経営協議会の資料等
スペースの無駄なので画像は貼りませんが、1ページだけの資料は5月14日の(最初の)科所長会議に出された資料の最初の1ページのように見えます。これだけの材料で、経営協議会とは一体なにを議論する場なのでしょうか。
(12) 教養学部自治会宛てのパブリックビューイング中止要請の決裁記録
これは前回の投稿で書いたように、決裁記録を請求したのに開示決定されたのは文書本体だけでした。一応もらっておきましたが、教養学部学生自治会が受け取ったものそのままなので、特に新規性はありません。
今後について
開示の実施をもって手続きとしては一段落ですが、結果に不服がある場合、「審査請求」という手続きに進むことができるようになっています。この手続では、総務省の「情報公開・個人情報保護審査会」という法曹関係の有識者による会議で開示・不開示の判断が適切だったかどうか判断されます。前回の投稿でもだらだらと書き並べましたが、法的に疑問の余地のある部分は少なくないので、審査請求を出すことを考えています。ただ、審査請求には少なくとも数ヶ月を要するはずで、仮にケジメとして手続きをするとしても、結果が出る頃には情勢はかなり先へ進んでいることが想定されますから、出すにせよ急がずに少し内容を練ってからやろうかと思っています。
また、今回のように期限延長が発動されてしまうと60日かかってしまってかなり機動性は落ちるのですが、今後も追加の開示請求が有用と思われる局面があれば利用していくことを検討しています。
本稿は以上となります。開示請求シリーズはしばしの休載となりますが、noteの投稿はネタが思いつけば引き続き書いていきますので、どうぞご愛顧ください。
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