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【東大授業料値上げ開示請求・その8】規則はまだ改定されていない説

前回「【東大授業料値上げ開示請求・その7】追加分の決定通知書が届きました」の続きで、今回は実際に開示を受けた話です(ちなみにシリーズ初回は「【東大授業料値上げ開示請求・その1】行った開示請求の内容を解説します」でした)。 予想通りと言えば予想通りですが、9月17日の教育研究評議会・9月18日の経営協議会・9月19日の役員会の資料はいずれも9月11日に公表されたものと同一でした。 さてここで生ずる問題は、授業料を値上げするという規則の改定は行われたのか、です。繰り返しとなり

    • 【東大授業料値上げ開示請求・その7】追加分の決定通知書が届きました

      こんにちは。9月24日の発表を受けて追加で提出していた開示請求について、決定通知書が届きました。 シリーズ初回は「【東大授業料値上げ開示請求・その1】行った開示請求の内容を解説します」でした。 いろいろと書き並べたので期限延長されるかと思っていたのですが、30日の期間内に決定されました。案件の複雑さというより同時に抱えている数の多寡の方が影響しているのかもしれません。ともかく、おかげで審査請求(決定から3ヶ月以内に提出する必要がある)の提出が当初分と追加分をまとめた形でで

      • 【東大授業料値上げ開示請求・その6】追加の開示請求を出しました

        こんにちは。9月24日に授業料値上げの「決定」が発表されたことを受け、追加の開示請求を出しました(noteの投稿を書くのが遅れました……)。 シリーズ初回は「【東大授業料値上げ開示請求・その1】行った開示請求の内容を解説します」、前回は「【東大授業料値上げ開示請求・その5】それなりに黒塗りの開示を受けました」でした。 開示請求の内容今回は4件です。番号は第1弾から連番でつけました。 (15) 2024年9月17日の教育研究評議会の資料・議事録等 (16) 2024年9

        • 東京大学の来し方10年と行く末

          現下の東京大学をめぐる情勢について把握するには、ときに過去からアプローチすることも有用なことがあるのではないかと思う。とはいえ、本稿は筆者が思いつくまま恣意的に項目を並べたエッセイのようなものなので、気軽に読んでいただければ幸いである。 “タフでグローバル”な「学部教育の総合的改革」この時代を知っている人もだいぶ減ったと思うのだが、かつて濱田純一という総長がいた(任期2009年度~2014年度)。彼は式辞などでことあるごとに“タフ”とか“グローバル”と唱えていたので、在りし

          【東大授業料値上げ開示請求・その5】それなりに黒塗りの開示を受けました

          こんにちは。別に黒塗りする作業をした人が悪いわけではなく、その人にとってはそれが仕事なのだとは思いますが、とはいえこの国の情報公開制度の運用や実践の全体に対しては必ずしも納得がいっていない竹麻呂です。 何が開示されることになったかは前回の投稿をご覧ください。 何を開示請求していたかは初回の投稿「【東大授業料値上げ開示請求・その1】行った開示請求の内容を解説します」をご覧ください。 では、早速いってみましょう。今回はこちらで塗りつぶし処理はしておらず、真っ黒なところはオリ

          【東大授業料値上げ開示請求・その5】それなりに黒塗りの開示を受けました

          東京大学の授業料値上げに関する第3次声明

          竹麻呂です。筆者個人の責任で、以下の通り声明します。 主文東京大学の2025年度の授業料は、9月中旬にも実質的に決定される可能性があると推測します。 国立大学の授業料ひいては高等教育の機会均等に関する制度設計の考え方を示す必要があると考えます。 学生が意思決定に参画する大学の姿を具体的に構想することが望ましいと考えます。 これは下のリンク先にある第2次声明をアップデートするものです。 以下、解説です。 2025年度の授業料の決定について7月3日に朝日新聞が「授業料

          東京大学の授業料値上げに関する第3次声明

          【東大授業料値上げ開示請求・その4】決定通知書が届きました

          こんにちは。ご報告に少し時間がかかってしまいましたが、先日、決定通知書が届きました。 開示請求の内容は初回「その1」で解説しています。以下からどうぞ。 前回は「【東大授業料値上げ開示請求・その3】大学の意思決定のあり方と情報公開制度に関する論考」でした。 ハイライト速報的に重要度の高いトピックを抜き出して載せてみます。 2024年6月4日の科所長会議において、「35枚69頁」の大部にわたって「本学の授業料改定案に対する各部局長並びに各部局教員等からの意見を取りまとめた

          【東大授業料値上げ開示請求・その4】決定通知書が届きました

          文科省の審議会での国立大学の授業料そして大学のあり方についての議論動向

          やはりこれのセンセーショナルな報道はかなりインパクトをもたらしたと思う。 切り取りをするのはあまり気分がよくないが、ここから話を始めないといけない。これは文部科学省に置かれている 中央教育審議会 大学分科会 高等教育の在り方に関する特別部会 の第4回で慶應義塾長の伊藤公平委員が行った発表(資料2-1「大学教育の多様化に向けて」)の話である。 辿りにくいのでリンクを貼っておくが、この回の議事録も公開されている。 それで、しかし報道に躍らされるのではなく、その前後の経過を含

          文科省の審議会での国立大学の授業料そして大学のあり方についての議論動向

          【東大授業料値上げ開示請求・その3】大学の意思決定のあり方と情報公開制度に関する論考

          今度こそ開示請求の結果がそろそろ届くはずだが、その前に論考をひとつ。 あ、ちなみに初回は「【東大授業料値上げ開示請求・その1】行った開示請求の内容を解説します」、前回は「【東大授業料値上げ開示請求・その2】決定期限が延長されました」でした。 前置き:国立大学法人における情報公開制度の位置付け開示請求の仕組みを定めている情報公開制度は、法律によって国の行政機構に対して一律に設けられているものである。厳密には、対象とする組織によって行政機関の保有する情報の公開に関する法律(行

          【東大授業料値上げ開示請求・その3】大学の意思決定のあり方と情報公開制度に関する論考

          【東大授業料値上げ開示請求・その2】決定期限が延長されました

          こんにちは。東京大学情報公開室から封書が届き、開けてみたら「開示決定等の期限の延長について(通知)」でした。 前回「その1」は以下のリンクからどうぞ。 前説独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律では、開示か不開示の決定を「開示請求があった日から30日以内にしなければならない」としていますが、例外として、「事務処理上の困難その他正当な理由があるとき」は、「30日以内に限り延長することができる」ことになっています。つまり、つごう60日間が請求から決定までの期間になりま

          【東大授業料値上げ開示請求・その2】決定期限が延長されました

          【東大授業料値上げ開示請求・その1】行った開示請求の内容を解説します

          6月下旬に、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律に基づいて、国立大学法人東京大学に対して14件の法人文書開示請求を行いました。内容はいずれも今般の授業料値上げ(の検討)に関するものです。開示請求に対する決定は、期限延長の手続きが取られない限りは30日以内に行われることになっていますので、まもなく結果が判明するはずですが、それに先立って、行った開示請求の内容とその解説を示します。 開示請求の手続きは、東京大学のウェブサイト「開示請求の方法」のページに載っている様式に

          【東大授業料値上げ開示請求・その1】行った開示請求の内容を解説します

          国立大学の法人化以後における授業料などの変遷

          周知のとおり、2004年度に国立大学が法人化された際、授業料は文部科学省の定める「標準額」をベースに各大学が定めることになった。国立大学法人法第22条第3項に「国立大学及び次条の規定により国立大学に附属して設置される学校の授業料その他の費用に関し必要な事項は、文部科学省令で定める。」という規定があり、これに基づいて国立大学等の授業料その他の費用に関する省令が制定されている。 本稿では、この省令の制定時から現在までの改定の経過を辿り、国の制度がどう変遷してきたかを見ていく。個

          国立大学の法人化以後における授業料などの変遷

          国立大学の運営費交付金制度とその変遷

          今日は知識編である。巷で飛び交う「運営費交付金は年1%削減されている」とか「授業料を値上げするとそのぶん運営費交付金が減らされる」といった命題の真偽を確認する。答えから書いてしまうと、前者は部分的に事実を含んでいるが実態はもっと複雑であり、後者は現時点において直ちに事実であるとは言えない。 なお、本当は運営費交付金だけでなく競争的研究費(の、特に間接経費)や施設整備費補助金などを含めて大学財政全体を議論しなければならないと思うが、ひとまず運営費交付金に絞って記述する。 (

          国立大学の運営費交付金制度とその変遷

          大学における「自治」に関する概念の再整理の試み:意思決定への参画という観点での新たな実践に向けて

          本稿は、大学において「自治」と呼ばれうる概念や理念について、最近の大学をとりまく情勢の観点を取り入れつつあらためて検討を加え、再整理を試みるものである。 冒頭で結論を提示してしまえば、ひとくちに「自治」といっても以下の3つの概念に区分することができるのではないか、というのが本稿の中心的仮説である。 特定の政治的勢力ないし短期的・近視眼的政策からの大学自体の独立(大学の自治) 構成員それぞれによる大学の意思決定への参画とその仕組み(全構成員自治) 学生の自主的活動に対す

          大学における「自治」に関する概念の再整理の試み:意思決定への参画という観点での新たな実践に向けて

          東京大学「総長対話」という欺瞞

          報道をどこまで信頼するかという問題はあるが、それはひとまず措く(ちなみに4年前の事件では報道された情報が誤りだったというケースは結果としてほぼ見られなかったと記憶している)。 さて、授業料値上げの正式な決定が行われる場所は、この「科所長会議」ではない。科所長会議の規則的な意味での設置根拠は「部局長等との会議に関する総長覚書」だが、会議の内容はあくまで報告と意見交換・情報交換に限られており、審議や決定の権限は一切持っていない。また、この覚書はあくまで学内のもので、法令上に設置

          東京大学「総長対話」という欺瞞

          東京大学の授業料値上げに関する第2次声明

          竹麻呂です。筆者個人の責任で、以下の通り声明します。 主文東京大学の授業料値上げ問題に関し 授業料のあり方・国立大学の費用負担のあり方の議論を深めること 大学当局に対して考え方を明らかにするよう求めること 学生の意見を有効に表明するメカニズムを構築すること が望ましい状況であると分析します。 以下、解説です。 1. 授業料のあり方に関する議論の必要性これは以下の第1次声明でも表明した点です。 以下のnote投稿でも述べています。 重複をおそれずに記すと、営利

          東京大学の授業料値上げに関する第2次声明