【読書メモ】Value Stream Mapping ~全体最適を目指す~
Karen MartinさんとMike Osterlingさんの書籍「Value Stream Mapping 」を読了しましたので、感想や取り入れたいことをまとめておきます。
約10年前の2013年に発売された書籍ですが、今でも色褪せない有益な書籍でした。日本語訳がないため、久しぶりに英語での読了しました。
概要と感想
Value Stream Map(以下、VSM)は、トヨタ生産方式の中で生まれ、製造業だけでなく、あらゆる産業に応用できるものである。作成する際のポイントは、手順などのミクロを見るのではなく、プロセス全体の「フロー」、つまり、「リクエストを受け取ってから価値提供が完了するまで」の全体に着目することである。
本書では、事前準備、現状分析、改善案の検討、改善実施と継続の各フェーズにおける解説を行っている。継続的な改善が強調されるなど、アジャイルとも親和性が高いものとなっていた。
VSMの導入ポイント
全編にわたって注意しなければいけないポイントがたくさんあるが、特に重要だと感じたのは次の3点である
全体フローに着目する
もれなく声をかける
継続的に行う
全体フローに着目
長く組織を運営していると、過去の活動の中で改善活動が行われ、単純作業の自動化・手戻り防止策の実施といったものは多分に業務に盛り込まれているだろう。これ自体は素晴らしいものであるが、つぎはぎで改善を繰り返すことで、ソースコードがスパゲッティ化してしまうように業務も複雑になってしまう。VSMはこの作業レベルではなく、全体の業務プロセスに着目して大局を確認することで、リードタイムのボトルネックを見つけるのに優れていると感じた。
もれなく声をかける
VSMの作成は主に10人未満のメンバーで現状の分析を行う。改革を主導するリーダーは参加しているだろうが、各プロセスの分析には現場のメンバーと協力しながら明らかにしていく必要がある。さらに改善案の検討においては、事業責任者やCxOなどのステークホルダとの合意形成も必要になる。実行の途中で中断させられてしまわないように、節目節目で意見を反映し、各責任者からコミットを引き出すことが重要だ。
継続的に行う
VSMに限らないが、現状を良くしていくの活動を継続していくことがとても重要である。改善策を実施していくと、早期に効果が出るものもあるだろう。その結果、一定の満足感や成果を出したことで、活動が止まりがちである。しかし、その時に最善と思われるものであっても、ニーズの変化や技術革新によって、競争力がある状態はキープ出来ない。これを避けるために継続性を意識した活動とすることが、変革推進者には求められると感じた。
可視化における考慮点
実際にVSMを描く際に考慮したい点を備忘として列挙しておく。これらを意識しておくだけでも、いくつかの失敗を回避できるだろう。
プロセスの数を5〜15にする
VSMは長すぎても短すぎても効果を発揮しきれない。多すぎるステップは詳細化しすぎているか、長すぎるプロセスとなっている可能性がある。短すぎる場合は、すでに最適化されており、効果を出しきれない可能性がある。経験則によるものかもしれないが、この範囲に収める工夫をしたい。事実ベースの数値で議論する
リードタイムや実行時間は、実際の数値を取得していく。実行時間は把握しやすが、リードタイムは可視化が難しいこともあるだろう。後続へ引き継ぎ間隔、システム処理タイミング、マニュアルなどから抽出したい。ITなどの手段も明記する
該当プロセスのデータや資料等のアウトプットを作成するのに使用するOffice製品や専用ツールを可視化しておく必要がある。部分最適化されて連携が難しいIT資産、電話やFAX等のアナログ手段を明示化しておくことで、次のステップでの改善施策の検討がかなりやりやすくなる。
取り組みたいこと
現在取り組んでいる活動をVSMで表現し、関係者の合意形成を図る
改善策は関係者を巻き込んで検討し、活動の意義を腹落ちしてもらう
こんな人におすすめ
BPRや組織変革などを担っている方
顧客への提供価値をより高めたいと感じている方