声を上げることから始まった ─ 2024年noteの振り返り
年末の昼下がり。書斎の窓から冬の日差しが穏やかに差し込む中、今年書いたnoteの記事を振り返ってみました。
9月から12月の間に、仕事や気づきをテーマに10本以上の記事を綴ってきたことに気づきます。
最初は「声を上げて働く」というシンプルな記事から始まりました。リモートワークが主流の中、日々の作業や考えを共有することの重要性を綴ったものです。
そこから、技術への向き合い方や、観察の大切さ、さらには物語を紡ぐことの意味へと、自然にテーマが広がっていきました。
声を上げることから始まった変化
私はリモートワークをずっと続けてきました。
その中で、作業や考えを共有することは、日常的に行ってきた大切な取り組みです。
特にSlackを活用して、「今やっていること」や「悩んでいること」をシンプルに伝えるよう心がけてきました。
たとえば、「こんなエラーが出ています」や「ここの実装、もっといい方法があるかも」といった短いメッセージを投げかけることで、意外な助言や新しいアイデアをもらえることが何度もありました。
こうしたやり取りを通じて、単に情報を伝えるだけではなく、チーム内で「お互いの雰囲気」や「問題への向き合い方」を自然と共有できるようになってきました。
日々の小さな積み重ねが、働き方を少しずつ前向きに変える力になっていると感じています。
物語として伝えたくなった理由
私は技術記事を書くのではなく、「教科書的なノウハウでは伝えきれない部分」を形にすることに挑戦してきました。
ソフトウェアエンジニアの仕事は、プログラミングにとどまらず、設計、チームでの協力、問題解決など多岐にわたります。
本当の理解は、断片的な知識が点と点として蓄積され、ある日それらが線でつながる瞬間に生まれるものだと感じています。
その過程を伝えるには、ハウツーではなく、もっと具体的で視覚的に想像できる方法が必要です。
そこで11月には物語形式に挑戦しました。物語なら、ソフトウェアエンジニアリングの背後にある「感情」や「葛藤」、そして「学びのプロセス」を立体的に描けると感じたのです。
主人公は、ユーモアあふれる言葉遣い(厨二病…笑)で周りを和ませる(?)エンジニアと、完璧主義が災いして視野を狭めがちな女性天才エンジニア。
二人の会話や成長を通じて、「エンジニアが技術とどう向き合い、どのように学びを深めるのか」を描きたいと思いました。
観察から始まる理解
「観察」の大切さを、思いがけない形で教えられた出来事もありました。
ある日、友人から「パンツ一丁で風呂場でPCを修理した」という話を聞きました。
笑い話のようですが、彼は初心者ながら静電気を防ぐためにそれが最善だと考えたそうです。
この話から学んだのは、「純粋な観察」が経験や常識を超える成果を生むこともある、ということです。
問題に真剣に向き合う姿勢が、予想外の発想や解決につながるのです。
「分からない」を大切にする
私たちの仕事では、SlackやGitHubなど、答えを求められる場面が頻繁にあります。しかし、「まだ分からない」という状態を受け入れることが、新しい発見のきっかけになると気づきました。
また、「分からない」には、日常の中での違和感や曖昧さも含まれるのかもしれません。
「優しさは、空から降りてこない」という記事では、日々の暮らしや社会の中にある「理解したつもり」の怖さを考えました。
日常に潜む曖昧さや分からなさを、対話を通じて受け入れる大切さを綴っています。
実践から生まれる気づき
日々の開発作業を通して、思いがけない気づきが生まれることがあります。
例えば、こんな場面がありました。
複雑なアルゴリズムをシンプルにする中で、ユーザーが本当に求めているのは「正確さ」よりも「素早いレスポンス」だと気づいたり、
バグの原因を探る中で、予想外のユーザー行動に気づき新たな機能を追加するきっかけになったり、
チームで議論する中で、プロダクトの見た目だけでなくユーザー体験全体を考える視点が生まれたりすることがあります。
これらは最初から計画して得られるものではありません。
声を上げること、観察し、分からないことを受け入れること。
その積み重ねが自然と気づきを生み、次の行動を導いてくれます。
これから紡ぐ言葉
今年、noteに書いてきた言葉たちは、何かを変えたり、誰かに「こうした方がいい」と伝えたりするためではありませんでした。それは、ただ私自身が日々の中で感じたことを形にして、心の中にあるものをすくい上げる作業でした。
来年もまた、「こうするべき」ではなく、「こう感じた」という言葉を大切にしたいと思っています。
それが、祈りのような小さな言葉の積み重ねであったとしても、何かが届くことを信じています。
私たちには社会を変える力はないかもしれません。でも、日々の中で、小さな気づきや手応えを積み重ねていくことはできます。
その積み重ねが、どこかで誰かの心を揺らし、その人がまた誰かの心に触れる。そんな循環が、きっと私たちの未来に小さな灯りをともすはずです。
来年は、一歩一歩、目の前にあることに向き合いながら、割り切れなさの中で揺れ動く自分を、言葉にしていきたいと思います。
そして、それが誰かにとっての祈りのように届くことを願っています。