戯曲小説「ルイボスティー」
自分の書いたコントを小説にしました。
戯曲小説とでも言うのでしょうか。違ったらすいません。
「ルイボスティー」
というコントです。
一度コントを見てから読むのがおススメです。
『ルイボスティー』
僕の名前は渡辺。
今日は友達の町田に久々会うんだ。
最近の僕はあまり良いことが無くってちょっとナーバスだったから、良い気分転換だ。
町田が待っている喫茶店。
僕は地図を読むのが苦手で少し遅れてしまった。
喫茶店に入ると奥の席に町田は座ってる。
ごめんごめん、遅れちゃって
町田は笑って許してくれる。
それどころか僕の事を気遣ってくれる優しさを持っている良い奴だ。
町田は昔から良い奴なんだ。
顔に疲れが出てたのか町田は心配してくれた。
最近母親が入院しちゃってバイトばかりしてるんだ
言わなくていいかもしれないけど、
なんだか町田に弱音を吐いてしまった。
はっくしゅ!はっくしゅ!
大きいくしゃみが出てしまった。
町田は風邪かと心配してくれたけど、僕は花粉症なんだ。
薬が飲みたいけど、あの喉が渇く感じがどうも好きになれない。
すると町田は僕に有益な情報をくれた。
なんでもルイボスティーという紅茶があって、その紅茶を飲むと花粉症が治るというのだ。
しかもカフェインも入ってないから副作用も無いらしい。
さすが町田だ。町田は昔から何でも知ってる。
町田はバッグの中から小袋を取り出し僕に渡した。
聞くとそれはルイボスティーだと言う。
僕は嬉しくてお礼を言った。
友達だろって町田。僕はお前みたいな友達がいて幸せ者だよ。
最近はあまり眠れてなくて肌荒れも気になってきた。
町田もそれに気付いたみたいだ。
するとまた町田が僕に小袋を渡してくれた。
どうやらそれもルイボスティーのようで、
肌荒れにもルイボスティーが効くんだって。
どうやら肌荒れってのは活性酸素って言うのが余分に出ている状態らしい。
ルイボスティーはそれを押さえてくれる効果があるんだって。
そうなのか。肌荒れってのは活性酸素って言うのが余分に出ている状態で、ルイボスティーはそれを押さえてくれる効果があるのか。
町田は何でも知っている。本当に凄いなぁ。
僕は馬鹿だから町田みたいな奴本当凄いと思うんだ。
そういえば今思い出したんだけど、治療費を振り込むのを忘れてしまった。
母さんの治療費を今日中に振り込まないといけないんだった。
最近はどうもいけない。すぐに物忘れをしてしまう。
町田は僕にまたルイボスティーを渡してきた。
どうやら物忘れにもルイボスティーが良いらしい。
町田が言うには物忘れは老化が原因らしく、
ルイボスティーには老化を押さえてくれる効果があるらしいんだって。
そうなのか。
物忘れは、老化が原因らしく、
ルイボスティーには、老化を、押さえてくれる、効果があるんだ。
凄いなぁ、町田は。何でも知ってて。
友達だろって、僕の方が、言いたいよ。
あ、携帯が鳴っている。電話みたいだ。
もしもし。…え!?どうして!?もしもし…!?もしもし!?
電話は彼女からで、突然別れたいってことだった。
彼女は理由も教えてくれずすぐに電話を切った。
どうしてだ。僕には分からない。いつからすれ違ったんだろう。
僕は町田にそのことを伝えると、町田はルイボスティー不足に原因があると言った。
正直僕もそうなんじゃないかと思ってたんだ。
町田が言うには恋愛が上手く行かないカップルの約8割は
ルイボスティー不足に原因があるらしい。
そうなのか。恋愛が上手く行かないカップルの約8割は
ルイボスティー不足に原因があるのか。恋愛が上手く行かないカップルの約8割はルイボスティー不足に原因があるらしいなら僕らも別れても仕方ない。
そう考えると僕のバイト先が潰れるのもきっとルイボスティーが原因なんだろうなって町田に言ってみたらやっぱりそうだった。
ああ、もう僕はルイボスティーが無い生活なんて考えられないよ。
早く家に帰ってこのルイボスティーを飲みたい。
小袋越しに匂いを嗅いでいるだけで身体の奥の方が熱くなってくる。
ああ、もっとだ。もっと濃いのが欲しい。
なあ町田。もっと濃いのはあるかい?
町田はポケットから見たことの無い柄の小袋を出した。
どうやらそれが濃いルイボスティーらしい。
僕は財布からお金を出し町田に支払い小袋を受け取り、
大きく鼻から匂いを吸った。
これだ。この香りだ。
僕は体の中から満たされていくのを感じた。
少しなら。
僕はルイボスティーを指に少量取り口に入れてみた。
ああ。僕はもう戻れないところまで来てしまったのだろうか。
僕は母親の為に使うはずだった治療費を町田に渡し、
ルイボスティーを貰った。
こんなに良いモノ、母親も喜んでくれるに違いない。
え、最後の一つ?
町田は最後の一つだと言うルイボスティーを僕に見せた。
でも僕はもうお金を持っていない。
気持ちだ。気持ちで町田の心を動かすしかない。
僕は町田に土下座をし、ルイボスティーを譲ってくれと頼んだ。
町田は断った。
町田はしっかりした人間だから、僕が簡単に物を貰ってしまうとダメな人間になってしまうという優しさからきっと断ったんだと思う。
そうだ。町田はそんな優しい奴なんだ。
でももう駄目だった。
その時の僕にはそんな事を考える余裕なんてなかった。
僕は護身用に持っているナイフを手に取り町田に向けた。
そこからはもう覚えていない。
気付けば町田は血を流して倒れていたし、
僕は手に入れたルイボスティーを水に溶かしながら警察の問答を交わしていたけど、
会話にならないと警察の人は怒っていた。
こんないいものを教えてくれた町田には感謝しても足りないよ。
ありがとう町田。
ルイボスティー、良い紅茶です。
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