スイス旅行に行ってきた③ グリンデルワルト後編
前回の「スイス旅行に行ってきた グリンデルワルト前編」の続きです。
前回の簡単なあらすじ。
ルツェルンからグリンデルワルトへ来た我々。グリンデルワルト一日目はフィルストへ、二日目は念願のユングフラウヨッホへ来ました。
ユングフラウヨッホで目いっぱい楽しんだ後、アイガーグレッチャーまで下りてきて、お楽しみその2・ハイキングが始まる──。
我々に待つものは一体──。
ルートはアイガーグレッチャー→クライネ・シャイデック→アルピグレン→グリンデルワルト・グルント。我々のコースタイムは休憩などを除いて約4時間というところでした。
4日目午後 グリンデルワルト・アイガーグレッチャーからハイキング
ハイキングスタートです。ハイキングコースはしっかりと標識があり、かつ整備された道なので、道迷いやケガの心配は少ないです。スイスの山はどこも標識がしっかりとあり、コースタイムも表記されています。
山歩きに慣れていない方でも結構安心して歩けると思います。ただちゃんとコースの予習をし、簡単でもいいので山用の装備はしておいた方が安心だと思います。観光地とはいえ山は山です。大自然の中にいます。リスクはあるものです。
とにかく景色が素晴らしいコース。我々はクライネ・シャイデックへと向かうコース「アイガー・ウォーク」をとりましたが、もう一つ、「アイガー・トレイル」というアイガー北壁そばを通るコースもあります。そちらは少し難易度があるそうなのですが、またここに来られたら行ってみたいですね。
アイガー・メンヒ・ユングフラウ。
この三つの山のことをベルナーオーバーラント三山といいます。あの、前の記事で車両に描かれていた、三つの△ですね。
そんな三山から力強い風景を浴び続け、写真を撮り続け、コース通り歩いていると。
小さな山小屋が現れました。あれは旧ミッテルレギ小屋(ヒュッテ)です。
これは元々アイガー北東山稜(ミッテルレギ)ルートにあった山小屋を、ここに移築したものです。
なんとこの山小屋、日本と縁がありまして。
その縁とは、日本の登山家、槇有恒(まき ゆうこう)が寄付してできたというものです。まだ誰も登攀(登頂)できていなかったミッテルレギルートを、彼のパーティが初登攀したことでできた縁。
初登攀記念で、寄付して、思い出のルートに山小屋建てるとは。
(小屋全額分ではないらしいのですが、それでもすごいことです)
元々あった場所には、新しいミッテルレギ小屋が建っています。
中に入ることはできませんが、中をのぞくことはできます。どんな感じかというと、それは行ってみて、お確かめください(写真を撮っていない、いいわけです)。
ミッテルレギ小屋を過ぎ、下の方を見るとまた新たな景色が現れます。
アイガー・メンヒ・ユングフラウの、人を寄せ付けない、厳しさを感じさせる風景。しかし下ればこうしたなんだか気軽に受け入れてくれそうな、やさしい風景が広がっています。
厳しさとやさしさ、それがとてもすぐ近くに並んでいる景色が心を揺さぶるので、ここに多くの人が集まるのかもしれませんね。
しかし見事な草原です。歩いているだけで気持ちがはずみます。
ファルボーデン湖へもちろん寄っていきます。遠くから見てもすごくコバルトブルーなのがわかります。
すっごい色!!
遠くからでもきれいでしたが、近づいてみるとさらにきれいです。青のグラデーションが、水の清浄さを表しているようです。
ここでは快晴かつ風がなければ、水面に逆さ山々が写るようです。
この時のコンディションは風があったので、その写真はありませんが、その風のおかげで水面が揺らぎ、それがまた太陽の光であちこちきらめきます。これもまた僕にとって最高のファルボーデン湖です。
クライネ・シャイデックに到着しました(アイガーグレッチャーから休憩時間を除き約1時間)。
ここからグリンデルワルト行きの電車、ラウターブルンネン行きの電車が出ています。二つの路線の合流地点というわけですね。
さらにここからメンリッヒェンという山へ向かうハイキングコースも始まっています。メンリッヒェンもめちゃくちゃきれいとのことで、これもまた次回行ってみたいところです。
さて写真をご覧になって、おわかりでしょうか。自転車が多く止まっていることに。自転車でここまで登ってくる人が多いんです。自転車で登ってくれば、電車代はなくて済みますからね(お値段のお話は記事の最後に)。
それはともかく、やっぱり欧州は自転車が好きな方が多いようです。
クライネ・シャイデックには山岳ホテル、カフェレストラン、お土産屋さんが狭い範囲に建っています。ですがぎゅうぎゅうとした窮屈さはなく、ゆったりとした雰囲気を全体で作っています。
ここで我々は遅めですが、お昼ごはんです。ガイド本を見て、ここで食べる予定を立てていました。
「レストラン アイガーノルドバンド」です。
テラス席からは三山を見えます。そんな素晴らしい席で、気さくな店員さんに注文し、料理を待ちます。
カトラリーがやってきたということは、もう少しでやってくるというのがわかってしまうのです。
僕のスイスでの初山ごはんはレシュティです。ここではチーズと目玉焼きが乗っている、結構なボリューム感ある一皿。お値段も量とクオリティからするとお安いです(はっきりとした値段は忘れましたけれど)。
山での料理の方が基本的に高いイメージですが、意外にそんなことはないスイスです。気軽に食べることができますね(金銭感覚がスイスに適応してきました)。
さて、妻ちゃんのチョイスは「ケーゼシュニッテ」でした。
これは白ワインに漬け込んだバケットを、ハムやトマト、チーズを乗せて焼いたものです。
味見させていただきましたが、まあこれが絶品。なかなか知らない味でした。白ワインに漬けるだけでここまでおいしくなるのかと。
また食べたくなる味。めちゃくちゃおなか一杯になるけれども。
家でも作ってみたくなる味。まずは白ワインを常備しなければ始まらないけれども。
お昼ごはんが終わればハイキング再開です。実はテラス席からずっと「あの音」が聞こえてきていてて、かつその「音の主」を妻ちゃんはすぐ下で見つけていたので、再開をすごく楽しみにしていました。
出会いはすぐそこに。
「あの音」はカウベル、「音の主」は牛です。放牧された牛たちが、草原で群れを作り、草をむしゃむしゃしていました。
首につけたカウベルは、草を食べる、そんな小さな動きでもからんからんと草原いっぱいに音を響かせています。すごく大きな音なんですけれど、うるさいだとか、そんな気持ちにはなりません。
それは長く長くここで営まれてきたものが、すっかりここでの欠かすことのできない一部になっているからなのかもしれません。
牛たちと会うことができた妻ちゃんはテンションがめちゃくちゃ上がっていました。今日ここまでで一番テンションが高かった気がします。
牛たちと別れ、ただひたすらに下っていきます。下っていると、徒歩で登ってくる人、自転車で登ってくる人と出会います。挨拶をすると気持ちよく返事を返してくれます。
親子、それもまだ赤ちゃんと呼べるような子も多かったです。赤ちゃんはご両親が背負っている、背負子なイスで楽しんでいました(ドイツに近いからなのか、ドイターがほとんどでしたね。僕もメインのバックパックはドイターなので、なんだか仲間意識)。
気づいたのは、お母さんがおらず、お父さんと子供という組み合わせが目立つことです。
そういえば、ルツェルンでの遊覧船で出会い、少しやり取りした親子がいたのですが、そこもお父さんと息子さん二人で行動されてました。たまたまなのかもしれませんけれどね。
僕もいつか、子供がやってきてくれたら、あんな風にドイターの背負子なイスを背負って山歩きしてみたいですね。山だけでなく、色々なところへも。
大草原から木々のある道へと入ってきました。森林限界が終わって、入りなり森の中という道ではなく、このようにぽつぽつと伸びています。
ですので、このエリアでも眺望はなかなかいいものです。
この道の左側が上の写真のようになっていまして、右側は、
アイガー北壁(高さ1800m)がずっとそびえています。写真ではすっぽり隠れておりますが、それでもわかる、ここを登ろうとすることのすさまじさ。
アイガー北壁は日本の登山隊が開拓した、日本直登ルートというのもあります。それがこれです。
なにこれ。
いやあとんでもないところを登っています。なしてこんなところを。
日本直登ルートに関しての記事はこちらからどうぞ。
黄色の1番のヘックマイヤールートが一番スタンダードらしいんですが、まあもちろん、登れる気はしません。けれどどの分野も、こういうチャレンジが積み重なっていくことで、全体の技術というのは伸びていくものですね。
(ちなみに現在北壁の最短登攀記録は2時間22分50秒、2015年ウーリー・ステック(ソロ)のものだそうです。なにがなんだかわかりません)
北壁を見つつ、まだまだのんびり下山を続けていきます。
アルピグレンに到着しました(クライネ・シャイデックから休憩を除き約1時間半)。ここには駅とレストランがありまして、レストランのテラス席ではお酒とごはんでみなさんのんびりされていました。
我々は席に着くことはなかったのですが、アイスを買いまして、それを少し食べて休憩としました。長く歩いてきての、アイス。沁みます。
あと写真はないのですが、ここでキツネを見ました。びっくりしていたらあっという間に草原へ消えていきましたが。
アルピグレンから下はすっかり森の中へと入っていきます。
車通りも増えてきて、下界という感じになってきます。川の流れる音、鳥の鳴き声、風でざわめく木々といった道がグリンデルワルト・グルントまで続いていました。
さすがに木々に阻まれるので、遠くの景色というのは見えなくなりました。
ホテルのある、グリンデルワルト・グルントへと到着しました(アルピグレンから休憩を除き約1時間半)。約4時間、約12キロ、総下降約1317mのハイキング終了です。
ホテルへと帰ってきた我々でしたが、荷物を部屋に置いて着替え、すぐさま活動を再開しました。そう、昨日はほんの少ししか歩けなかったグリンデルワルトへ散歩しに行ったのです。
思い出して書いていますが、元気ですねえ。妻ちゃんもタフです。
のちのちわかるのですが、タフって言葉は妻ちゃんの為にあります。
晩ごはん、というところなのですが、お昼ごはんがまだ残っている感じがして、軽いものをということでふと目についたクレープ屋さんに入りました。
何を頼もうか二人で考えていたところ、なんと目の前にいた若い店員さんが日本語で話しかけてくれました。なんとお母さんが日本人とのことで、コロナ前はよくお母さんの実家の富山に行っていたそうです(ちなみに立山のあたりだそうです。立山からグリンデルワルトとは、高い山に惹かれているみたいですね)。
日本文化とラーメンが好きな、大学生の方でした。今は夏休み中とのことで、ご両親がやられているこのクレープ屋さんを手伝っているのだとか。
ここでクレープとエスプレッソを楽しみました。おいしかったです。異国で母国語を聞くとなんだか安心しますね。おいしい味とすてきな店と日本語でほっと一息。
そしてそんな彼から耳寄り情報が。なんと今日の夜、これからグリンデルワルトでお祭りがあるとのことで。なにやら準備をしていると思ったらそういうことだったんですね。
当然楽しんで帰ることにしました。
さあ自動車の侵入制限が置かれ、お祭りが始まりました。
街にグリンデルワルトの音楽が響き渡ります。お祭りの様子を写真でどうぞ。
ずっと見続けていました。楽器の演奏が終わればヨーデル、ヨーデルが終われば踊りと、何度も何度も繰り返されていました。すごくいいイベントに出会えたと、そんな感動がありました。
楽しんでいるとあっという間にここで一時間以上過ぎてしまい、そろそろホテルへ帰らなければならない時間になっていました。
ここでホテルを取っていれば……という気持ちになったのは書くまでもありません。ずっとここで楽しんでいたかったですね。また来られるならば、絶対にこのエリアで泊まりたいです。
グリンデルワルトへ旅行されることが決まったかたには、このお祭りと合わせて来られることをおすすめします。
と、帰るために駅の方向へ歩いていると、
めちゃくちゃ最近なパリピ空間が広がっていました。
さっきのエリアでのトラディショナルな雰囲気はどこへやら。道の坂道をローラー付きのソリで滑っているわ、がんがんロックが鳴り響いているわ、ライトがぴかぴかしているわで、全然違っていました。
これはこれで楽しい。
盆踊りとフェスを同じ会場でやってる感じ。
古い街ですが、こういった新しさを抵抗なく取り入れているようです。普通ならどちらかに傾きそうなものが、「両方やればええやん」精神というのか、そういうものがあるようです。懐深いなグリンデルワルト。
こうしてホテルへと帰り、スイス旅行4日目、グリンデルワルト滞在が終わりました。
本当に素晴らしい街と風景で、もう一度、いやもう二度、いや何度でも来たくなるエリアでした。スイス、どこもかしこも楽しくてすごいです。
観光立国の底力があふれています。
──最後ですが、記事の途中で予告していた、グリンデルワルトからユングフラウヨッホへの電車賃のお話を。
この電車、一人あたり往復で222スイスフランです。
日本円で約3万5千円です。
内訳は、グリンデルワルトからクライネ・シャイデックまでだと68スイスフラン。クライネ・シャイデックからユングフラウヨッホが156スイスフランです。スイストラベルパスだとここから25%オフです。
まあこれだけの景色とルート。維持費でもかなりお金がかかっていると思います。これくらいのお値段しても不思議ではありません。安くしてすごく混雑するのも嫌でしょうしね。
(と、かっこよさげなことを書いていますが、次グリンデルワルトへ来たとしても、乗るかどうか悩むと思いますこのお値段。いや乗れるなら乗りたいです。しかし今回は新婚旅行力(ぢから)でかなり奮発しています。みなさんも、もし乗ることが決まったら、しっかりとユングフラウ貯金をすることをおすすめします……それだけの価値はあります)
さて現実的なお話は忘れまして、翌日は本旅行最後の滞在地ツェルマットへの移動です。ですがその間にトゥーンという、インターラーケンに近い、トゥーン湖のほとりにある街へと遊びに行く予定を立てていました。
トゥーン、そしてツェルマット。この二つの街もまたどえらい魅力だらけの街でしたので、次の記事をお待ちください。
(追記2023.9.4 続き「スイス旅行に行ってきた トゥーン・ツェルマット編」公開しました。ぜひこちらもどうぞ)