アメリカの現代アート:黒人奴隷へのオマージュ
1700年代に奴隷として売られるため船で連れて来られたアフリカ人達へのオマージュとして制作された、The Katastwóf Karavanについて解説します。この作品は、アーティストのKara WalkerとミュージシャンのJason Moranによるコラボレーションで、2018年に開催されたthe Prospect.4 triennial in New Orleansにて発表されました。ミシシッピ川沿いのアルジェ・ポイント(ルイジアナ州ニューオーリンズ)に設置され 、2月の3日間にわたりMoranによる演奏パフォーマンスが行われました。
▶️The Katastwóf Karavan
http://www.karawalkerstudio.com/2018
この作品の動機は、この地のアフリカ人奴隷のための新たな記念碑を作ことにあります。アルジェ・ポイントにはアフリカ人奴隷の記念碑が一つありますが、それは公園の一角にひっそりと設置されたものにすぎず、その場所に負の歴史があったことを思い起こすにはあまりにもささやかなものでした。
記念碑は一度設置されればずっとその場所に残るものである一方で、静的な存在であるため人々の記憶からも消えていってしまう。Walkerは従来の記念碑のあり方に疑問を呈します。そのため、The Katastwóf Karavanはパフォーマンスの要素を含んだものでなくてはなりませんでした。
Jason Moranが奏でる音楽は、Walkerがこの地を訪れた際に遠くから聞こえてきた音楽が元になっています。この音楽は、奴隷制の歴史を覆い隠す役割を果たしたものです。The Katastwóf Karavanは、「耳を傾けてください、目を背けないでください、奴隷制のことを忘れないでください」そのような強いメッセージを発しています。
▶️アルジェの歴史について
"Algiers is very much New Orleans; was often the soil where enslaved ancestors first stepped foot" Cierra Chenier, 2020
https://www.noirnnola.com/post/algiers-is-very-much-new-orleans-was-often-the-soil-where-enslaved-ancestors
▶️Kara Walker
人種、ジェンダー、セクシュアリティ、暴力、アイデンティティなどを題材にした作品で知られるアーティスト。黒い切り紙のシルエットを使ったインスタレーション作品で広く知られている。拠点はニューヨーク、カリフォルニア・ストックトン出身。
HP: http://www.karawalkerstudio.com