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白馬村観光の"光"と"陰"〜2ヶ月のワーケーション滞在を経て〜

皆さんこんにちは、ご無沙汰しています。Takeです。

1月にアメリカから帰国して以来、滋賀県のポテンシャルある観光資源として『スキー・スノボツーリズム』を挙げていた中で「日本でも有名なインバウンド・スキーツーリズムの先端をいく観光地で学びながら滞在しよう」と長野県・白馬村にワーケーション滞在することに。1月下旬から3月下旬まで、約2ヶ月間の間、白馬村に滞在しました。

なので今回のnoteはウィンター スポーツのメッカと称され、スキーやスノーボード、ハイキングに適した山岳リゾート エリアが広がる長野県・白馬村のデスティネーション・マネジメント&マーケティング(観光地経営・マーケティング)について書き記します。

滞在中はフリアコ(週に何時間か働く代わりに対価として宿泊・水道光熱費を無料を得るサービス)を利用して村内のホテルで働きながら、地域住民や他の観光セクターの人々、そして村のDMOである白馬村観光局の方にインタビューし、白馬村の観光地経営に関するお話を伺いました。

その中で垣間見えることができたのは、白馬村の観光における"光""陰"でした。

白馬村の観光における"光"とは?これまでの変遷と、これからの白馬村観光の展望


まず、皆さんは「スキーリゾート」と聞くと何処を思い浮かべますか?

国内における人気スキーリゾートといえば、安比高原や軽井沢など甲信越、東北、北海道を中心に多く点在します。その中でもインバウンドに絞れば「ニセコ」「白馬村」はスキーリゾート地の2大巨頭と言えます。

そのひとつであり、日本アルプスの山間部に位置し1998 年冬季オリンピックの開催地となった白馬村は、意外にも昔からインバウンドに長けた観光地ではありませんでした。日本の人口減少にあわせるように、スキー・スノボ人口も減っていく中で国内旅客の集客に苦戦し、2005年までは不遇の時代を過ごしたそうです。

そこで日本政府観光局(JNTO)と連携してアメリカからのスキーツアー客の誘致したり、地元の有志たちが白馬村インバウンド推進協議会や白馬村ツーリズム連盟(白馬村観光局の前身)を設立したり、積極的に海外での見本市やプロモーション活動を行いました。

その結果、2010年代のインバウンドブームと重なったこともあって、ピークの2019年の外国人観光客延べ宿泊者数は前年比69.6%増の16万4377人。訪問者数では38万人を記録しました。今では北海道のニセコに並び、海外でも人気のスキーリゾートとなったわけです。まさに「ニセコは遠いけど白馬なら近い」という人をターゲットに西日本のニセコへと発展していきました。

この2年はコロナウィルスのパンデミックにより観光客が激減し、白馬村の観光にも少なからず影響を受けました。ただ去年2021年10月にはコロナ禍にも関わらず同時期における過去最高の入り込み客数を記録するなどコロナ後を見据えてのオールシーズン型のマウンテンリゾートに向けて着々と発展をしています。最近ではアウトドア・ブランドの「スノーピーク」が複合施設snow peak LANDSTATION HAKUBAをオープンするなどアウトドア・ブランドの投資進出が積極的に行われています。

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僕も1〜3月にかけて冬シーズンの2ヶ月間を白馬村のホテルで働いていたわけですが、毎連休に満室もしくは満室に近い稼働率を誇るなど白馬村の持つ観光パワーをひしひしと感じました。僕が働いていた勤務先では日系資本の古くから続く老舗ホテルにも関わらず、外国人雇用に積極的でホテルにはカメルーン人、ガーナ人、ロシア人、韓国人、カナダ人と国際色豊かなスタッフが集まるなどインバウンド対策はバッチリです。様々な国から来た観光客のニーズに答えるプロダクト・サービス(英語表記やヴィーガン料理、ハラルフレンドリーなど)もしっかりと整っています。

また、観光セクターの舵取り役として観光地全体のマーケティング・マネジメントを行うDMO(Destination Marketing Organization)である白馬村観光局も、日本では数少ない"きちんと"したDMOでした。僕は実際に白馬村観光局のスタッフの方にも白馬村の観光施策について色々とお話を伺ったのですが、最近のトレンドをいち早く認知し、やること・やらないことの意思決定も早い印象です。日本DMOといえば観光協会と区別のつかない名ばかりの組織というイメージがあったのですが、さすがは世界を代表するスキーリゾートでした。

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昔から観光業が盛んな白馬村(遡ると宿泊宿が多く出来始めたのは約100年前らしい!)では観光経済が地域の収入源としてどれだけ重要視なのか、観光セクターだけでなく1住民単位で広く、深く認識されています。また、ふるさと納税を村内の高校生留学の費用にしたり、インターナショナルスクールが今年開校したりと「未来の観光人材の育成」を目的に教育への投資を惜しまない政策も、観光業で経済が成り立つ白馬村ならではの施策です。

パンデミックや経済不況などの外部的影響を良くも悪くも受けやすいのが観光業の宿命ですが、白馬村はまさに村・住民が一体となって観光地を作り盛り上げている印象を受けました。

白馬村の観光における"陰"とは?


アフターコロナにおけるインバウンド集客において明るい"光"を鮮明に見ることのできる一方で、"陰"の部分も等しく抱えています。

白馬村には「環境基本条例」という主に村の自然景観を保護する目的として制定された条例があります。それにより指定された高さ以上の建物の建設が制限され、外資系ホテルを中心とする大規模ホテルチェーンが参入しにくい形になりました。となると現在の白馬村のホテル・旅館は日本資本の昔ながらの家族・個人経営が多くを占めています。(白馬村には600を超える宿泊施設があるが、もっとも規模の大きな白馬東急ホテルでも102部屋であり、多くは15〜20部屋ほどの中小規模の宿泊施設が多い。)

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村古来から受け継がれてきた自然風景を守ることや、大規模ホテルチェーンの参入を防ぐことによりホテル・旅館を守り、村内の人々にお金がきちんと流れる仕組みといった面では条例は良い働きをしているのですが、一方で条例による代償も少なからずあります。


それが「ホテルの競争力低下による観光サービス質の低下」です。


条例により外資系ホテルを中心とする大規模ホテルチェーンが参入しにくい

自然的な観光資源(パウダースノーなど)を売りにしているので、マーケティング施策をしなくてもある程度の数の観光客が見込める

村内観光セクター(主にホテル・旅館など)による競争が無くプロダクト・サービスの向上のための努力が生まれない。

トレンド相対的なサービス低下や、市場支配により価格を高めに維持する価格寡占を起こす。小・中規模の個人投資家によるペンション進出が進む

観光客の費用対効果的なサービス・プロダクトの満足度が低下


上記のような旧ソ連の社会主義経済のデメリットのような影響を受ける恐れがあるだけでなく、アマンやリッツカールトンなど超高級ラグジュアリーホテルに泊まりたいと思う富裕層も部屋数の制限により集客できない恐れがあります。近年では2018年にマリオットホテルグループの進出を皮切りに海外企業・個人がペンションを立てる動きが活発化していますが、それはそれで村内にある昔ながらの日系資本の旅館・ホテルは競走に負け廃業に追い込まれる企業が出てくるでしょう。

1枚目:Courtyard by Marriott Hakuba
2枚目:PHOENIX CHALETS by Hakuba Hotel Group

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加えて白馬村には山や川、湖という自然的な観光資源を売りにしている観光地なので冬になればスキー・スノボ客が自然と来るし、夏になれば登山客が多くやって来ます。つまり自然的な観光資源があることにより、観光マーケティングをしなくても一定の観光客を見込むことができるのです。そうなるとホテル・旅館側もマーケティング施策を打つ努力を省くことができます。実際にいくつかのホテル・旅館のウェブサイトやSNS、SEO施策を見たのですが、お世辞にもデジタルマーケティング施策をきちんと行っている施設が多いとは言えませんでした。

どちらの施策もメリット・デメリットがある中で必ずしも正解がある訳ではないのですが、どちらの施策による弊害に対して対策は打っていくべきかと思います。

その他の"陰"の部分としては、

・雨の日に楽しめるプロダクトが多くないこと
・ホテル・旅館の従業員満足度が低いこと(これは日本の宿泊施設全体に言えることですが)
・ニセコのように新たに開拓できる土地が制限されているので移住需要の高まるが故に、白馬村の賃貸の価格が上昇していること (1R平均¥60,000 )

コロナ前のインバウンド入れ込み客数やコロナ禍でのグリーンシーズンにおける過去最高の入り込み客数の記録など、キラキラとした表面にフォーカスが当てられますが、裏では様々な課題を抱えているのが実情です。

以上から、上記の"陰"の部分に関しては観光地全体をマーケティング・マネジメントするDMOである白馬村観光局が中心となり、さらなる村内の観光セクターの底上げが必要かと考えます。

アフターコロナを見据えた白馬村の今後の観光ビジョン


「冬のリゾート地からの脱却」に向けて、グリーンシーズンにも力を入れ始めている白馬村ですが、今後のビジョンとしては「日本で初めてのオールシーズン楽しめるマウンテンリゾート」となることを目指しているそうです。

ベンチマークとしては、フランス、スイス、イタリアの国境に近い世界的に有名なリゾート地であるシャモニー=モン=ブランであり、ひいてはマウンテンリゾート版のハワイと白馬村観光局の方は話してくれました。

ハワイの人々が朝、仕事前にサーフィンをしてから仕事に行くように、冬は白馬村の朝のパウダースノーでひと滑りし、夏は爽やかな高原を散歩してかから仕事にでかけるような、そんなリゾート・ライフスタイルが想起できるような場所を白馬村は目指しているとのことです。

上手くいっている部分(光)もあれば、将来的に危惧される課題(陰)もありますが、これからはより一層、観光セクターの舵取り役として観光地全体のマーケティング・マネジメントを行う白馬村観光局が担う役割が重要になるのは間違いありません。

今回はウィンターシーズンのみの滞在でしたが、多くのことを学び・体験することができた実りある2ヶ月の白馬村滞在でした!

<記事執筆にあたる参考文献等>

◉白馬に高級ホテル19~22年めどに開業 by 信濃毎日新聞
https://www.hokurikushinkansen-navi.jp/pc/news/article.php?id=NEWS0000005728

◉白馬村における観光の現状と課題
https://www.vill.hakuba.lg.jp/material/files/group/2/03_73905883.pdf

◉白馬村観光局が描く「関係人口」の創出戦略、リモートワーク+イベント開催など、訪日客・スキー客の減少に立ち向かう打ち手を聞いてきた
https://www.travelvoice.jp/20200909-146872

◉長野県白馬、「リゾートでテレワーク」、加速する新たな取り組みを白馬観光開発の代表に聞いてきた
https://www.travelvoice.jp/20200819-146814

◉白馬のインバウンド誘客の取り組みとコロナ禍を踏まえた今後の観光ビジョン 白馬村観光局 福島洋次郎事務局長 インタビューレポート
https://centrip-japan.com/ja/article/1391.html



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