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『君と遊ぶ条件』#3【短編小説】
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前回のあらすじ
佐藤広美(さとうひろみ)の「10万円あげますから、私と今日1日遊んでください!」というお願いに僕、天海拓馬(あまがいたくま)は返事に困っていた。そうしていると佐藤は、10万じゃ安いなら更に20万円でどうだと言い出す。何故そんなにお金をポンと出せるんだ?
すると、佐藤はきょとんとした顔をしながら言い出した。
「10万円って、高いですか? ……ごめんなさい。世間知らずで」
佐藤は頭を下げる。
「いやいや、10万円は高いよ。大人でも出すのを渋るぐらいなんだから」
「そうなんですか? 一か月分のお小遣いですよ?」
「一か月分?!」
僕は声を荒げてしまった。
「はい、お小遣いで月に10万円貰いますから……。それに、私って趣味が無いので、お小遣いの使い道としたら参考書を買うぐらいなので。だから貯まるしかなくて……」
下手したら自慢にしか聞こえないが、佐藤の自信無さげな声がそれを防いでいる。声だけ聞けば貧乏で困っている女子高生だ。
金に困っているのは、こちらだというのに。
こちとら生活するだけで精一杯なのだ。お小遣いなんて無いに等しい。いつもお母さんから貰うお金は、生きていく為のご飯代に消えていく。娯楽費なんてない。
今日も早く家に帰って、妹と古びたボードゲームで遊んでから、学校にバレないようにしているバイトに行こうと思っていたのだ。
それなのに佐藤は、お金が貯まるしかないなんて事をのたまっている。
きっと佐藤は、お小遣いをご飯に使うなんて考えた事も無いのだろう。
この格差は、一体なんなのだろうか。それだけで、勝手に怒りが沸々と湧いてきた。佐藤自身は悪くないが、この怒りの矛先は佐藤以外に見つからない。
「分かった。じゃあ一緒に遊ぼうか」
気付けばそう答えていた。先程の、周りからどう思われているかという心配は何処かへ行き、今はどうやってこのイモ女からお金を搾り取ろうという考えだけがめぐっている。
我ながら意地悪い。性格が悪い。だが仕方ないだろう。
僕は普通の生活を、母と妹に送らせてあげたいのだ。
佐藤の顔はパッと明るくなった。
「本当ですか?! やったぁ……ありがとうございます!」
佐藤の『やったぁ』が気持ち悪かったが、まぁガマンしよう。放課後にちょっと遊びに行くだけで10万円が手に入るならば儲けものだ。それに、今からのやりようであれば、10万円以上の利益が出る可能性もある。
「ごめんだけど、その10万円は」
「もちろん渡させていただきます!」
敬語の使い方間違ってないか?
佐藤はカバンから財布を取り出し、10万円キッチリ僕に渡してきた。
1万円札が10枚揃った所なんて……正直見た事が無かった。
「本当に、いいんだね?」
10万円の迫力に、ついそんな確認を取ってしまう。
「もちろんです! だって、天海くんと遊べるんですから……」
佐藤はうつむき、顔を赤らめた。
次回、11月6日に投稿予定。