さよなら絵梨の感想と考察(追記あり)

新しい漫画をまた読むきっかけになったのはチェンソーマンだった。
強烈なキャラクターたち、豪快なストーリー回し、そして徹底的にドライで容赦ない描写。
色んな意味でこの作品からは一際ギラリと光るものを感じた。こんな気持ちになったのは戯言シリーズを読んだ時ぶりである。

ファイアパンチは現時点ではまだ読めていない。その代わりその後掲載されたルックバックと後述するさよなら絵梨は読んだ。
タコピーの原罪といい、ぷにるはかわいいスライムといい、このネット公開というものに見事に自分はハマってしまっている。おそらくこれからもこのスタイルを継続していくのだろうが、やはり紙の味わいというのも捨て難い。タコピーはまだだがルックバックはちゃんと手元に置いてある。

本題

https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496858728104

さよなら絵梨という漫画が公開されたのはつい先日のことである。
ルックバックで描いたものからどう変化したのか(もしくはしてないのか)と気になって読んでみたが、素朴ながらとんでもなく実験的な、漫画という表現の限界に挑むかのような内容に面食らってしまった。
そして同時に漫画の可能性そのものと映画に対する歪みかけの愛情に心揺さぶられたのであった。
ルックバックが表面の素直な表現なら、さよなら絵梨は裏面の愛憎混じりの軋んだ表現である。
僕という人間はそういう暗部に惹かれるような厨二病なのだと改めて思った。

(以下、fusetterにて書いた感想&考察文章、一部訂正あり)
賛否両論な内容だと思うけど僕としてはこの作品好きである。ルックバックも良かったけどそれ以上に本作を気に入った。 

なんで賛否両論なのかは明白で、単純に作品そのものが入れ箱構造でややこしく、そしてこの作品自体が一体誰に向けて作られているのかが明示されていないのが問題である。 

見てわかる通りこの作品はメタ的に作られていて、最後にあのオチになるのは作中で語られた通り「最後にファンタジーをひとつまみ」である。 
つまりこの漫画自体が一つの映画そのものなわけだが、では一体誰に向けたものなのか。 
作品内で完結させるとするならばまず間違いなく主人公自身に向けたものであり、最後にもう一度爆発させる事でフィクションの内と外の境界(つまりフィルムの中だけに留まっていた理想と外にある苦しい現実の壁)そのものを破壊して前向きに歩こうという一種の「儀式」と意思表示をしたのではないか。 

以上を踏まえての考察(上記の儀式について) 
この作品は全てカメラ越しのフィクションであるという前提で話を進める。 本作の要は作品内で描かれていることの外側にある。
作中主人公が自殺を宣言するシーンが2回入るが、1回目の学生の頃は自殺する気が全く無かったと思われる。 
初めに見た時は子供特有の軽はずみな行動かと思ったが、それに至るまでの見せ方にすっかり騙されていた。 
自殺を思い立ってから絵梨に出会うまでのシーンは全て彼女が亡くなるまでの映画の為に付け加えられたフィクションなのではないか。 
その前の映画の感想を聞くシーン、主人公が自殺の当てつけのために入れたように見えるが、先生から感想を聞きその上で怒らせる場面が隠し撮りをしてまで態々必要だったのか疑問に感じた。先生を怒らせたのは絵梨の指示だったのではないかと推測する。 
その上で2回目の大人になってからの自殺シーンだが、あれは自殺をすると宣言し、絵梨という吸血鬼に出会うという一連の流れの再現であり儀式である。 (最後の二人の邂逅は膨大なデータからの編集によって可能にしたものと捉えている)
何のための儀式かと言うと家族を過失ではなかったにせよ自分が運転していた車で失い、本気で自殺を考えたからこそ「さよなら絵梨」という作品を完成させる事で上記した通り作品の中だけの美しい部分と辛い現実の壁を破壊して前向きに進もうという意思表示を自分の中で完結させる為のものである。
作中「自分自身を客観視してしまう」と語っているが、つまりは作品を完成させるまでカメラ越しの現実=自分の理想しか見えてこなかったという事なのではないか。 
主人公の爆発という表現はこの物語の最後で完成したのだ。
(ここでfusetter文章終わり)


ここまで書いたが他の方の記事で最後の展開(絵梨が吸血鬼であるの部分)は元ネタになった映画と照らし合わせて事実である、と書いている方もいるので解釈は無限である。
僕は僕なりのポジティブな言い訳として上記の考察を書いた。(という言い訳)


追記

単行本版買いました。読み返してみると「絵梨は普段眼鏡をしていた」というあまりにも重要過ぎる要素を見逃している事に気付きました。
これによって、最後のシーンは演技の内の一つという事が確定しました。

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