関川郁万、リベンジのとき
不満の残る開幕戦
京都との開幕戦、チームがシーズン前の懸念を払拭するような快勝を果たした中で、関川郁万のパフォーマンスは煮え切らないものだった。正確に言えば、試合終盤の関川郁万のパフォーマンスは煮え切らないものだった、である。
試合途中までは非常に安定していた。京都は鹿島の左サイドの裏にロングボールを蹴り込んでいたが、そこのカバーは問題なくしっかりこなしてピンチを作らせなかったし、中央を割られることもなかった。そもそもそこまで攻め立てられるシーンが少なかったと言えど、そう簡単に失点することはないと安心して見ていられたほどである。
だが、試合終盤になり、2点リードという状況に安心しきったのか、疲労で集中が切れてきたのか、緩慢なプレーが増えてくる。クリアしようとしたボールを相手に当てて入れ替わられてしまったり、クリアが中途半端になって相手にセカンドボールを拾われたり。どちらも失点には至らなかったが、下手したら流れが変わりかねない局面だったことを考えれば、あまりにも不必要なプレーだったし、ミスとしてはイージーなものと、言わざるを得ないだろう。
カギを握る今季
今季の関川は自身のキャリアの中で今後を左右する局面に立っている。昨季、紆余曲折ありながらもプロ4年目にして初めて年間通じてレギュラーで試合に出続け、経験を積んだ。これはかつての昌子源と同じような経過を辿っており、それを考えれば、今後も試合に出続けること、チームの勝利に貢献していくことで、昌子と同じく、さらに自身のキャリアアップに繋げられる展望が見えてきているのだ。
しかし、そんな中でチームにはその昌子と植田直通という、日本でもトップクラスのセンターバックが2人加わった。昌子が始動直後にケガで離脱してしまったため、現在は関川と植田でセンターバックは固まっているが、関川にしてみたら主力として経験を積んでさらに伸びようとしているところに、強力なライバルが2人も加わり、一気にポジションが危うくなってしまった格好になってしまっている。
チームとしては関川にまだ完全に信頼を寄せきれていない部分もあるのだろうし、関川が出場機会を失うことでのリスクを考えても、昌子と植田に対してそれだけの期待をしているというのもあるのだろう。だが、個人的には関川にそう簡単にレギュラーを渡さず、2人から完全にその座を奪い取ってほしい、と思っている。関川のポテンシャルも昌子や植田に負けず劣らずのモノがあるし、何よりここからさらに伸びていくことができれば、もっとプレーヤーとしての格を上げることができるからだ。そうすれば、それは必然的に鹿島というチームにとっても大きなプラスになる。それを期待しているからこそ、関川には今季も試合に出続けてほしいのだ。
環境を活かし、リベンジを
そうした中で、現状レギュラーの座を掴んでいる関川にとって、今は大きなチャンスと言える。チーム状態がいい時に後ろはいじらない、という鉄則を考えれば、このまま勝ち続けることができていれば、昌子が戻ってきたとしてもポジションを渡すことはないからだ。
さらに昨季と違って、相方は自分より経験豊富な植田が最終ラインを統率してくれているし、右サイドはその植田と常本佳吾がいればおそらくそう簡単に崩されることはないだろう。さらに、自分の前には早くもチームにフィットして、守備の安定に大きく貢献している佐野海舟がいる。そんな中で関川に求められているのは目の前のアタッカーに負けないことと、安西幸輝が高い位置を取る左サイドのカバーをすること。昨季よりやることは整理されているし、狙われている箇所が分かっているなら対応も容易い。より高いパフォーマンスを発揮しやすい環境にいることができているのである。
次節の相手は川崎フロンターレ。昨季もホーム開幕戦で対戦したが、その時は関川のパスミスを奪われ、開始2分で失点。開幕戦勝利で勢いに乗っていたチームに完全に水を差してしまう格好になり、その後も関川自身のパフォーマンスは上がることなく、チームも結果として完敗を喫してしまう悔しい結果になった。
だが、昨季と今とでは状況が違う。前述したように頼れる味方が増え守りやすい状況になったし、レギュラーとして試合に出続けるという経験も積んだ。そして、何より昨季自分のパスをかっさらってゴールを奪っていった相手FWは、今や強力な仲間になっている。これ以上心強い状態はないだろう。
8年ぶりのリーグ戦での勝利を目指すチームにとっても、昨季の苦い失敗を払拭して今後のさらなる飛躍に繋げたい関川郁万にとっても、次節の川崎F戦、リベンジの時だ。
遠征費とスタグル代に充てるので、恵んでください