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ガンバ大阪戦の雑感


ガンバの誤算と鹿島のバロメーター

相手のプレスなどを研究して、チャヴリッチ選手があそこ(右サイド)のポジションで来ると思ったんですが、(先発で)来なかった。でも、前から4枚がプレッシャーを掛けてくるライン間をしっかりと狙いたかったという意図がありました。

https://www.jleague.jp/match/j1/2024/042805/live#coach

試合後のポヤトス監督のコメントである。ここでガンバにとって誤算だったのは、鹿島のサイドハーフが思ったよりも追ってこなかったことと、位置取りが思ったより中央を切ってくるものだったということだろう。

ガンバはハーフスペースを使うことで、鹿島を押し込もうという狙いがあった。鹿島がサイドハーフを前に出して追ってきてくれれば、その分だけ中にはスペースが生まれるし、追ってこないにしてもサイドバックのケアに回ってくれれば、中央に人数を掛けることによって、やはりハーフスペースからの押し込みが目論めるからだ。

ただ、鹿島の前線の守備はボランチとセンターバックの4枚で組み立てるガンバに対して、基本的に優磨と名古の2人だけで制限をかけるようにし、ボールを持たせることは許容する形を取っており(奪いにいく時は、知念を加えていた)、サイドハーフはその後ろでハーフスペースを埋めていた。ガンバの使いたいスペースを消していたのだ。これにより、ガンバは前線の山田や宇佐美が下がって組み立てに参加せざるを得ず、前線に人数を掛けることができなくなって、ウェルトンの個の突破に依存するようになっていった。

鹿島がこの守り方を可能にしたのはボランチ2人の存在が大きい。そこまでハイプレスの強度を高めない中で、それでもなるべく高い位置でボールを奪ってカウンターに繋げる回数を増やすことを狙っている鹿島は、ボランチの位置でボールを奪うことを前提に守備を設計している感がある。そうなると、ボランチがそれぞれボール奪取力を持っていることはもちろん、多少前からの制限が雑でも、個の力でそれをカバーすることが求められるようになる。鳥栖戦では連戦の影響もあり、プレーエリアが狭まっていたボランチコンビだが、1週間空いた今節ではエンジン全開。たとえ、1人目で獲りきれなくても、2人目が寄せにいって獲りきるシーンは何度も見られており、貢献度は非常に高かった。

今や鹿島が上手いこと戦うには佐野と知念の2人が健康体であることがある程度不可欠になってきている。これはもちろん、佐野と知念がすごい!という話ではあるのだが、一方で彼ら以外に彼らほどの運動量とプレーエリアの広さ、ボール奪取力を持っている選手が今のスカッドにいるのか?という部分での疑問は否めない。彼ら以外の選手も組み込む時は、今のチームが機能する屋台骨を動かすことになるために、その部分でのゲームモデルの修正は避けられない。今後そこは問われていくことになるだろう。

修正したボール保持

今節、鹿島はボール保持の部分での修正が見られた。具体的には、個々の特性に合わせた配置になり、集中とアイソを意識していたことだ。右サイドは濃野、左サイドは仲間が大外に張るようになり、彼らは逆サイドにボールがある時は中央に入り込むが、ハーフスペースにまで逆サイドからボールが入ってくると、必ず大外に張ることを徹底するようになる。それ以外の選手たちはボール周辺に人数を集め、局面での数的優位を作り出す。これによって、ボール保持を安定させるだけでなく、相手をボール周辺に集めたところから一気にアイソで待っているサイドに展開することで、局面を変えてチャンスを作りやすくなった。

推進力があり、身体の無理が効き、外でも中に入り込んでもプレーできる仲間と濃野を大外に置いたことで、チームの機能性は増したし、事実彼らがゴールを奪った。右サイドに樋口を入れたことで数的優位は作りやすくなったし、また(特に左)サイドに展開した時に必ず並行のポジションに入り込んで、受け手として顔を出していた名古の存在も見逃せない。ここに途中出場だった師岡やチャヴリッチがチームの機能性を落とさずに絡めるようになると、彼らは個で仕掛けてゴールも奪えるだけに、一気に攻撃の破壊力は増してくる期待値もある。

先制点を生んだ「運ぶ」プレー

先制点のシーンにも触れておきたい。ガンバがあまり前からプレッシャーを掛けずに構えていたことによって、ボールを持つことはできていた鹿島。だが、そこから守備ブロックを動かしてチャンスを作ることができていなかった状況だった。

そこに変化をもたらしたのがセンターバックの運ぶプレーだった。センターバックにプレッシャーが来ないのなら、彼らがボールを持ち運ぶことで状況を動かし、相手に次なる対応を強いて、そこで生まれたズレを活用する。練習でポポヴィッチから「可能ならセンターバックだけで相手の1列目の守備を越えるんだ!」と言われていたことを、体現できつつあるのだ。

先制点は安西が一個飛ばしのパスで植田につけ、植田が持ち運んだことにより相手が中途半端に引いたことで、結果知念がノープレッシャーでロングパスを送ることができ、相手の裏を取った仲間とドンピシャでタイミングが合ったことにより生まれたものだった。ボールを動かして相手のスキを作り出し、そこを素早く突いていく。ポポヴィッチ体制で狙っている形が結果に現れつつある。

大きな勝利で、さらに先へ

今節落とすとなると、勝点の獲得ペースとしても、チームのムードとしてもしんどい状況になるのは避けられなかったために、今節3ポイントを掴んだのは大きい。今季好調のG大阪にアウェイで勝ったというのもプラス材料だ。ボール保持を特長とするチームに連敗するというのは苦手意識も生まれかねない。それを避けることもできたし、チーム力で競った相手に勝つという体験もできた。色んな意味で大きな勝利と言えるだろう。

欲を言えば、3点目を取って試合を決定付けることができれば文句なしだった。3枚代えで投入された選手たちのミッションはそこだっただろうし、事実そうしたチャンスはあった。そこを決めきれないことは今節では影響しなかったが、今後致命傷になりかねない。フィニッシュにパワーを注げる時間帯では、確実に仕留めたい。

さて、今季の鹿島にとって問題はここからだ。中4日で湘南戦、さらに中2日で柏戦という連戦になる。主力を固定して戦っている今季の鹿島は、連戦の影響をモロに受けることが多く、そこで勝点を落としてしまっている。上述したボランチのプレーエリアの問題も、連戦では大きく影響してくる。ただ、これで勝点を落としているようだと、ここから上へは進めない。チームとして乗り越えるべき時だ。

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タケゴラ
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