【ライプツィヒ観察記】ブンデスリーガ 第28節 RBライプツィヒ-ヘルタ・ベルリン レビュー
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戦前
前節、アウェイでマインツに5-0と大勝し、リーグ再開後初勝利を挙げたRBライプツィヒ。今節はそのマインツ戦から中2日でのホームゲームとなる。
今節対戦するのは11位ヘルタ・ベルリン。中断明けからホッフェンハイムに3-0、前節はウニオン・ベルリンとのベルリンダービーを4-0で制し、無失点で連勝中と好調。前節から中4日で今節を迎える。
スタメン
ライプツィヒは前節から2人変更。4-4-2の布陣は変わらず、前節負傷したポウルセンが外れ、シックが2トップの一角に入り、また右サイドバックにアダムスが起用され、ライマーがボランチに回っている。
一方のヘルタ・ベルリンは前節と同じ11人で臨む。
最初のターンを活かしたヘルタ・ベルリン
試合はヘルタ・ベルリンのキックオフでスタートされた。そして、そのままヘルタ・ベルリンが立ち上がりのボール保持に成功した。
ヘルタ・ベルリンは2センターバック2ボランチの立ち位置を崩さず、GKも加えながら組み立てを行う。これに対して、ライプツィヒはシックが1人でセンターバック2人を見て、ヴェルナーが相手ボランチの一角シェルブレットを塞ぐ形を取り、積極的にプレスを掛けることはしなかった。
ライプツィヒがキックオフからプレスを掛けなかった理由としては、連戦でコンディションを考慮したという部分があるのだろう。また、ヴェルナーがシェルブレットにマンマークのように付いていき、グルイッチをある程度フリーにさせたのは、おそらく組み立ての上ではシェルブレットにボールが渡るほうが脅威になるとライプツィヒが考えていたからであるはずだ。
とはいえ、センターバックの段階で数的優位を作ることが出来ているヘルタ・ベルリンは、そこからボールを前進させることが出来ていた。さらに、シェルブレットが塞がれているならば、とグルイッチにボールを託して、そこから相手陣内に侵入することも出来ていた。こうして、相手を押し込んでいくヘルタ・ベルリン。この自分たちのターンのうちに先制に成功する。9分、左サイドからのコーナーキックにグルイッチがフリーで合わせた。
このゴールシーン、ライプツィヒにとっては押し込まれた中での失点という側面以上に、セットプレーからの失点というのが問題視されるべきだろう。中断明けからのライプツィヒの失点はVARで取り消されたものも含めて、全てセットプレーからのものである。コーナーキックの時にはゾーンで守っているが、このゴールシーンでも中央の一番ケアすべきゾーンを守っていたウパメカノが相手に目の前にあっさりと入られ、先にボールを触られている。
個々を活かすライプツィヒの選手配置
先制したヘルタ・ベルリンだが、ここでアクシデント。左サイドバックのプラッテンハルトが空中戦での接触で脳震盪を起こし、プレー続行不可能に。代わって、ミッテルシュテットが投入された。
12分~
先制されたことでゆったり構えている訳にはいかなくなったライプツィヒ。失点後のキックオフからボールを握り返して、自分たちのターンを迎えることになる。
ライプツィヒのボール保持時
この日のライプツィヒの組み立ての形は片上げの3バック。4-5-1で隙あらばボールを奪おうとプレスを掛けてくるヘルタ・ベルリンに対して、センターバックの2枚とサポートに入る左サイドバックのハルステンベルクで常に数的優位を形成。大外に位置取るのは右サイドはサイドバックのアダムス、左サイドはサイドハーフのエンクンクと決められていた。
これは選手個々の特性を活かすためという理由が大きいだろう。逆サイドに展開した時に、フリーかつスペースのある状態で大外にいるのは1対1で仕掛けられる選手がいい、と考えるライプツィヒ。そうなった時に、右サイドは中央でプレーしたがるダニ・オルモより、スピードのあるアダムスの方が良いし、左サイドはセンターバックとしてもプレーするハルステンベルクより、ドリブラーのエンクンクの方が良い、と考えこのような左右非対称の形を採用することになった訳である。
こうして、相手のプレスをかわしてボールを前進させていくライプツィヒ。相手がボールを持った際のプレスも発動させて、相手を押し込んでいく。その中で24分に右サイドからエンクンクが蹴ったコーナーキックをニアサイドでクロスターマンがすらして、ゴール。早い段階で追いついたライプツィヒだった。
ヘルタ・ベルリンの牽制
同点に追いついた後もペースは依然としてライプツィヒ。ただ、ヘルタ・ベルリンも黙って劣勢を受け入れている訳ではなかった。
ライプツィヒがプレスを仕掛けるようになって、ボール保持に安心感のなくなってきたヘルタ・ベルリン。ヘルタ・ベルリンはそこで無理に繋ぐことはせず、ある程度詰まったらサイドの裏にロングボールを送り、アタッカーを走らせるようにしたのだった。
これはある程度ロングボールでアタッカーの質だけでライプツィヒ守備陣と勝負させてもそこそこ可能性があると考えた以上に、ライプツィヒを間延びさせたい意図があったのではないだろうか。相手にとってライプツィヒの一番の脅威は即時奪回だ。ボールを奪っても、すぐさま猛然と奪い返しに来て、すぐにボールを失ってしまい波状攻撃を仕掛けられる。こうなると、相手はサンドバッグ状態待ったなしだ。
ただ、ロングボールで相手の裏にボールを送れば、その攻撃自体の成功確率は高くないものの、相手の攻撃はもう一回組み立ての部分からやり直しになる。そこに撤退守備が準備できていれば、相手の攻撃の脅威の度合いは随分と削ることが出来る。それこそがヘルタ・ベルリンがこの策を使った最大の理由だろう。
実際、ライプツィヒは攻めてはヘルタ・ベルリン守備陣に防がれ、もう一度組み立てからやり直しになるシーンが増えていった。即時奪回で波状攻撃を仕掛けたいはずが、相手にすぐにロングボールで回避されるし、連戦の影響からかそこまで運動量を上げられない。ライプツィヒはペースこそ握っているものの、どうにも攻めあぐねていたのだ。
そんな中で、ライプツィヒ守備陣にアクシデントが起きる。ヘルタ・ベルリンのアタッカーのスピードに手を焼いていた守備陣の1人、左サイドバックのハルステンベルクが63分に2枚目のイエローカードを貰って退場。ライプツィヒは10人での戦いを強いられることになる。
幸運を活かせず
10人になったライプツィヒ。すぐさまアンヘリーニョを左サイドバックに投入。システムも4-3-1-1に変えた。
66分~
苦しくなると思われたライプツィヒだったが、その直後に逆転する。68分、中央でのパス交換からボールがシックに渡り、強烈な左足シュートをシックが放つと、これをGKがセーブしたものの、その後にファンブル。これがゴールに入ってしまい、ライプツィヒがある種ラッキーな形で2点目を手にしたのだった。
1人少ないながらも1点リードの状況になったライプツィヒ。ここからはある程度ボールを保持する姿勢を見せながら、アタッカーを走らせるカウンタースタイルに移行して、守り倒すスタイルだったのだろう。
ユリアン・ナーゲルスマン監督の采配にもそれが表れている。80分に後半3回目の選手交代。ヴェルナーとシックという前線2枚に代え、ヴォルフとセンターバックのオルバンを投入。5-3-1で守備固めに出たのだった。
80分~のライプツィヒ
だが、これが裏目に出る。交代から2分後。ペナルティエリア内で仕掛けたマテウス・クーニャをルックマンが倒してしまい、PK献上。これを途中出場のピョンテクに決められ、同点に追いつかれてしまう。
本当ならここからもう一度反撃に出たいライプツィヒだったが、連戦の上で10人で足は止まってしまっていた。さらに、交代枠は4枠しか使っておらず、5枠に増えた今のブンデスリーガなら1枚余っていたのだが、規定で後半に交代をしていいのは3回までと決まっており、すでに後半3回選手交代を終えていたライプツィヒは最後の交代枠を使うことが許されなかったのだ。こうして、反撃の機会を失ったライプツィヒ。このまま試合は終わり、2-2のドローとなった。
まとめ
10人になりながらもラッキーな形から一時はリードを奪うなど、勝つチャンスはあったライプツィヒだが、守備固めが裏目に出て勝点1に終わってしまった。他の上位陣が勝点を積み上げ損ねていたためチャンスでもあったのだが、この結果で3位のまま変わらず。残り6試合で首位バイエルン・ミュンヘンとの勝点差は10と、優勝は絶望的な状況になってしまった。
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