上田綺世の海外移籍についてのQ&A
なぜこのタイミングでの移籍なのか?
チームが優勝争いをしている状況は考慮せずとも、自身はリーグ戦で得点ランキングトップと好調、さらにW杯イヤーということを考えれば、この時点での海外移籍はリスクがあるように思える。
だが、これは代表での立場も考えてのものだろう。正直、上田の代表での立ち位置はメンバーに入れるかどうかの当落線上といったところ。6月の4連戦でもアピール出来たとは言えず、このままだとほぼメンバーが固まりつつある今となっては、鹿島で結果を残し続けても確実にW杯でピッチに立てる保証はない。ならば、自身の目標だった海外へこの時点で移籍しても、W杯出場の可能性に大きく影響することはないだろうし、むしろシーズン開幕前の相手側から求められている今の方が、自身の今後にとってはプラスになる、という判断なのだろう。
なぜベルギーリーグなのか?
上田綺世が移籍するサークル・ブルージュはベルギーリーグで10位のチーム。決して強豪というわけではなく、4大リーグというわけでもない。もっとチームを選べたのではないか?という疑問があるだろう。ただ、世界的に見ても以前より日本人選手に対する評価は決して高くない。世界中にある市場の中からわざわざ極東のマーケットにフォーカスして、当たるかも分からない選手を連れてくるのは、ギャンブル的要素があるということを、こちらとしても考える必要があるだろう。
また、年齢面でもそうだ。上田の23歳という年齢は海外の基準で見れば若い年齢ではない。もうこの年代は青田買いというより、即戦力の年齢なのだ。そう考えると、海外初挑戦の日本人を獲ってくるというのはかなりリスキーな判断になる。むしろ、移籍金を満額払って1トップで使う意向のあるサークル・ブルージュからはかなり高い評価を受けていることを、プラスに考えていくべきではないだろうか。
移籍金の金額をもっと上げられないのか?
今回の移籍金は推定で1億円から2億円程度と言われている。鹿島からしてみればチームのエースを引っこ抜かれるのだから、もっと高いお金を支払ってほしいというのが本音だろう。
移籍金には2パターンある。選手の市場価値に基づいて設定するものと、法外な金額を設定するものだ。市場価値は選手の活躍度合いや年俸によって決められており、今回の上田もこのパターンで設定されたものだろう。対して、法外な金額というのはバルセロナがメッシに一時期2億5,000万ユーロというような額を設定したように、クラブにとっての看板選手で絶対に出さないという意味合いで設定しているものだ。
では、上田にも法外な額を設定すればいいのではと思うかもしれないが、そうはいかない。上田は元々海外思考が強い状態で鹿島に入ってきた。そこで絶対出せないような移籍金を設定してしまっては、上田のクラブに対する信頼は無くなるだろうし、契約が切れた段階で出ていくことも考えられる。そうなれば、クラブには1円も入らないことになってしまうのだ。
では、現実的な範囲で移籍金を上げるのはどうか。これに関しては、まず上田の年俸を上げることが必要になる。ただ、それだけでいいわけではない。チームのバランスを考えれば、上田の年俸を上げるのに合わせて他のチームメイトの年俸も上げてあげなければ、不満が残りかねないからだ。チームの財政状態を考えると、それは必ずしも現実的なことではないのは確かである。クラブの収入を高めて、それを選手たちの給与に繋げて、それで移籍金を上げる。この流れが最もスマートであろう。
上田綺世はなぜあんなにゴールが奪えるのか?
この質問に対する答えとしては、自分の型を増やして、それに持ち込めるようになった、というところだろう。
元々、上田は自分の得意なシュートパターンに持ち込んだ時の決定率はプロ入り当時から高かった。ただ、それは裏抜けがキレイに決まった時だったり、ピンポイントクロスが上がった時だったりと、場面が限られており、またそうしたチャンスが訪れる機会を待ち続ける節があった。
だが、フィジカルを強化し、プレーエリアも広がった今となっては、ある程度ラフなクロスでも強引に叩き込めるようになったし、またPA外からでも強烈なミドルを打てるようになった。また、動き出しの回数自体が増え、自分がシュートを打てる機会を自ら作り出せるようになっている。ゴールパターンが増えた上に、シュートチャンスを自ら増やせるようになれば、ゴールが増えてくるのもさもありなん、といったところだろう。
上田綺世の穴をどうやって埋めるのか?
どういう形であれ、この問題を解決出来ない限り今季の鹿島にタイトルはないだろう。とはいえ、すでに2ケタゴールを記録して、前線で絶大な存在感を放っていたエースの穴を埋めるのは簡単ではない。
一つはチームの攻め方を変える方法だ。今季の鹿島はこれまで押し込んでからのクロスと、中盤で手数をかけない中央突破でゴールを奪ってきた。これを成り立たせていたのは、最前線で高い決定力と強靭なフィジカルを併せ持っていた上田の存在あってこそという部分は大きい。その上田がいなくなったのだから、別の方法で得点を奪ってくることを仕込んでいった方がいいのでは、ということである。ただ、今のスタイルに慣れつつある現状で、シーズン途中の今になって別の方法を仕込むのは、上手くいくかどうかという点で懸念は拭い切れない。
もう一つは、誰かが上田の役割をこなしてくれればいいという考え方だ。前線で起点となり、ゴールを奪ってくれるフォワードがいれば、今のやり方をそのまま続けることが出来る。これに最も相応しいのは鈴木優磨なのだが、彼は現状でもチャンスメイクや攻撃の組み立てでかなり広いプレーエリアをカバーしており、負担は大きい。彼をフィニッシャーに専念させるためには、彼の代わりにボールを前線に運んで、チャンスメイクする方法なり人材なりが必要になってくる。
また、エヴェラウドや染野唯月といった現有戦力の奮起にも期待したい。彼らもポテンシャル的には上田の穴を埋められるだけのものは持っている。特にエヴェラウドのフィジカルはJリーグの守備陣にとってそう簡単に止められるものではない。2020シーズンで見せた理不尽っぷりをまた見せてもらいたいものだ。
補強は必要か?
これに関しては微妙なところだ。上述したように鈴木優磨、エヴェラウド、染野唯月と現状でもフォワードの駒がないわけでないし、彼らの素質も充分だ。ただ、3枚だけというのが心もとないというのも確かである。優先度は高くないが、穴埋めのための補強はしてもいいだろう。
ただ、候補は限られてくる。決定力が高く、前線で起点になれるフィジカルを持ったフォワードはそうそういない。さらに、今の鹿島には外国籍選手が7人いる。これ以上増やすわけには…、という事情もある。条件を満たしてくれる選手がいないのなら、このまま現有戦力で戦い続けるという判断もアリではないだろうか。
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