鹿島アントラーズのモデルケースになるかもしれないRBライプツィヒを見てみませんかというお話
昨今の情勢でサッカー界でも世界中で長らくリーグ戦などの中断が続く中、主要リーグでいち早くドイツ・ブンデスリーガの再開が決定した。選手やスタッフなどブンデスリーガ関係者にもCOVID-19感染者が確認される中での再開は決して手放しで喜ぶべきことではないが、一方で我々の日常にサッカーが戻ってくる一歩になっているのも間違いない。
そんな中でこの記事を書いている理由はタイトルの通りである。Jリーグが再開されるまでの間、ブンデスリーガ見てみませんか?どうせ見るなら鹿島アントラーズと似たことやってるRBライプツィヒってチーム見てみませんか?というお話である。
RBライプツィヒってどんなチーム?
RBライプツィヒのチーム誕生は今から11年前の2009年。かなりの新興クラブと言える。親会社は翼を授けるでおなじみ、世界的飲料メーカーのレッドブル。レッドブルの資金力をバックにチームは急成長を遂げ、チーム発足からわずか7年でブンデスリーガ1部へと昇格。1部昇格後も初年度から2位という好成績を残し、昇格4季目となる今季は残り9試合時点で3位。首位のバイエルン・ミュンヘンとは勝点差5で、初の優勝が十分に見える位置につけている。また、UEFAチャンピオンズリーグでも初のベスト8進出を決めており、欧州でも確実に立ち位置を確立しつつある。
なぜ鹿島のモデルケースになるかもしれないのか?
①レッドブルライン
RBライプツィヒの親会社がレッドブルだということは先述した通りだ。レッドブルはRBライプツィヒだけでなく、オーストリアに南野拓実も所属していたFCレッドブル・ザルツブルク、アメリカにニューヨーク・レッドブルズなど世界各地に複数のサッカーチームを保有しており、レッドブルグループという一大勢力になっている。
レッドブルグループでは目指すサッカーのスタイルが一貫している。これを定めたのはラルフ・ラングニック。かつてシャルケで内田篤人と共に戦ったこともあるこのドイツ人が定めたのは、素早い攻守の切り替えを軸にしたスタイル。高い位置からプレスを掛けてボールを奪いにかかり、奪ったら縦に速い攻撃でゴールを狙う、ボールを失うことがあればすぐさま奪い返しにかかる。このレッドブルスタイルとも呼ばれるスタイルが、レッドブルグループではどのクラブにも根底に根付いているのだ。
鹿島アントラーズに話題を移そう。このレッドブルスタイルと鹿島に一体何の関係があるのか。なにを隠そう、現在鹿島を率いるザーゴ監督もこのレッドブルスタイルの下で戦ったことのある指導者なのだ。ザーゴが鹿島の監督に就任する前、ブラジルで率いていたのはレッドブル・ブラジルとレッドブル・ブラガンチーノ(※当時はCAブラガンチーノ)の2チームだが、その2チームとも名前の通りレッドブルグループに属するチームなのである。後者でブラジル全国選手権でセリエA昇格を果たした功績を評価されて鹿島にやってきた一面もあるザーゴにとって、レッドブルスタイルは自身の志向するスタイルに少なからず影響を与えている。
そんなザーゴ率いる鹿島が今季どういったスタイルを目指そうとしているのかは、以下のリンク先で詳しく記したので是非読んでいただければ。先述したレッドブルスタイルに当てはまる部分も多いはずだ。
②ビルドアップへのこだわり
レッドブルスタイルでは本来、ボールを保持することにはあまりこだわらない。ラングニックはむやみに横パスを繋ぐことを「ポゼッション・フェチ」と嫌うくらいだ。チームにおいて優先すべきなのは早い段階で縦にボールを送り、相手ゴールの近くでプレーするように仕向けること。その過程でのボールロストはある程度許容されており、失ったボールは豊富な運動量をベースにして奪い返せばいいという考えだ。
だが、今季からRBライプツィヒを率いるユリアン・ナーゲルスマン監督はこれまでのレッドブルスタイルと一線を画しており、繋ぎの部分、特にビルドアップに力を入れている。その理由をナーゲルスマンは次のように語っている。
「なぜ私がボール保持にこだわるのか? 3つ理由がある。1つ目は、シュートの確率を高められること。2つ目は、ゲーゲンプレッシングをかける態勢を整えられること。そして3つ目は、相手に“カウンターができる”と勘違いさせられることだ。実際はこちらがしっかり奪い返す準備をしているから、相手はカウンターに転じられないんだがね」
ボール保持と聞くと攻撃の印象が強いが、ナーゲルスマンからすると「ゲーゲンプレッシングの準備」なのだ。「過密日程になったらボールを保持することで試合中に休みを作り、それがプレッシングの強度を高めることにもなる。つまりボール保持とRB(※注:ライプツィヒのこと)のDNAは矛盾しないんだ。選手には疑問を持ったらいつでも質問してくれと伝えている」
つまりボールを保持することで、より自分たちの攻撃の時間を長くすること、さらにプレッシングを効果的に発揮できるよう小休止の時間を作り出すこと、この2つを目的にしてボール保持にこだわっているのだ。
RBライプツィヒの試合を見ていると、繋ぎにこだわっているシーンは多々見られる。むやみやたらにロングボールを蹴ることはせず、最終ラインから、時にはゴールキーパーも混ぜながら、縦パスを入れて組み立てることでチャンスを作り出そうと試みているのだ。
ただ、RBライプツィヒの組み立ての質は向上しつつあるが、決してトップレベルとは言えない。元々、組み立てが得意なメンバーを集めている訳ではないのもあって、組み立てで詰まってしまいロングボールに逃げるシーンや、ミスでボールを失いピンチを招くシーンが、1試合に1度は見られる。ウインターブレイク明けの試合は大体チェックしたが、このミスが原因で喫した失点もいくつかあるほどだ。
これまでに述べたことは鹿島においても同じことが言えるだろう。上記に貼ったリンク先でも述べているが、今季の鹿島はビルドアップにも力を入れているし、ここまでの試合を見ているとそれが中々上手くいってないのも、さらにその部分のミスで失点しているのもお分かりいただけるだろう。それだけに、RBライプツィヒがどのように選手の立ち位置を動かし、どのような判断でボールを動かしているのか、その結果ビルドアップの質がどのように向上しているのか、学ぶ部分は多いはずだ。
まとめ
ここまでRBライプツィヒが鹿島のモデルケースになりそうな理由を述べていたが、では鹿島がそのままRBライプツィヒになれるかと問われれば、その答えはノーだ。
理由は複数ある。パッと挙げるなら、抱えている選手の違いだろう。RBライプツィヒは普段最終ラインにセンターバックもサイドバックもこなせる選手を2人起用しているが、その2人ともサイズは185cmを超えている。鹿島はおろか、日本サッカー界には残念ながらそのような選手は中々いないし、その状況でそのまま真似すれば空中戦で狙い撃ちにされるのは目に見えている。その他にもブンデスリーガとJリーグでは良くも悪くもサッカーのスタイルが全体的に異なるし、資金力なども違う。RBライプツィヒのスタイルをそのまま真似してもおそらく成功しないだろう。鹿島は鹿島なりのゲームモデルを作り上げていくべきだ。
ただ、日本の芸事には守破離という言葉があるように、まず師匠の型を守る(≒真似る)ことで学べることは決して少なくない。型を学ぶことで自らに合った型を知り、それを試すことで型を破り、それが身に付くことで既存の型から離れることが出来るようになるのだ。
と、ここまで長く書いたが、とりあえず久々にリアルタイムのサッカー見られる機会が出来そうなので、見てみませんか?というお話です。その中で自分の推しチームと共通点のありそうなチーム見て、そこで学びが得られればなおよしじゃないですか?というお話です。おまけに、簡単な選手名鑑みたいなものも書いてみたので、よければ。
おまけ 選手名鑑
基本フォーメーション
ナーゲルスマン監督のベースは3-1-4-2のシステムだ。ただ、シーズン開幕直後にセンターバックにケガ人が続出して、一時4バックにシフト。しかし、ウインターブレイク明けからは再び3バックに戻している。
メンバーは連戦や出場停止などで入れ替えることもあるが、基本的に直近の試合は上記の11人でほぼ固定されていた。試合中にポジションを入れ替えることも多く、システムも試合ごとに微妙に変化させている。
GK No.1 ペーテル・グラーチ
ハンガリー代表
29歳
192cm
最後尾からチームを支える守護神。長い手足を活かしたシュートストップでチームのピンチを何度も救ってきた。足元の技術も高く、ビルドアップへの参加も苦にしない。スタメン組の中では最年長。生え際が怪しい。
DF No.3 アンヘリーニョ
スペイン
23歳
175cm
今冬のマーケットにマンチェスター・シティからレンタルでやってきた左サイドのスペシャリスト。守備の軽さは気になるが、的確なポジショニングと精度の高い左足で、すぐさまレギュラーを確保した。
DF No.5 ダヨ・ウパメカノ
フランス
21歳
186cm
RBライプツィヒのブエノ。とにかくデカく、パワー満点のタックルで相手の攻撃を潰すセンターバック。大柄ながら足も速く、ピンチの時には超速で戻ってカバーリングする超人。時たま、よく分かんないまま持ち上がってとんでもないパスミスをやらかす。たぶん数年で移籍しちゃう。
DF No.16 ルーカス・クロスターマン
ドイツ代表
23歳
189cm
本職は右サイドバックだが、現在3バックの一角を担う。大柄な上にスピードがあり、目立った穴のない選手。組み立ての質も高く、彼の持ち上がりや縦パスからチャンスが生まれることも。
DF No.22 ノルディ・ムキエレ
フランス
22歳
185cm
右ウィングバックを務める身体能力のお化け。速い、高い、強いの三拍子揃っており、自分の前に出たルーズボールはほとんど自分のものにして右サイドを制圧する。左サイドからのクロスに大外から飛び込むムキエレロールも得意。
DF No.23 マルツェル・ハルステンベルク
ドイツ
28歳
187cm
クロスターマンと同じく、本職はサイドバックだが現在は3バックの一角を担っているレフティー。堅実な守備が持ち味で、アンヘリーニョが下がって来ない時も一人で左サイドをケアしている。高さがあり、セットプレーで合わせるのも得意。
MF No.7 マルセル・ザビッツァー
オーストリア代表
26歳
177cm
ゲームキャプテンも務める中盤のダイナモ。ピッチ上のあらゆる所に顔を出し、攻守に貢献度が高い。前線への飛び出しなど攻撃参加も武器で、強烈かつ正確なミドルシュートで相手ゴールを狙う。ポニーテールをなびかせ走りまくっているので、遠目でも大体分かる。
MF No.8 アマドゥ・ハイダラ
マリ代表
22歳
175cm
中盤の底で汗をかき、相手の攻撃の芽を摘む仕事人タイプのボランチ。チームではリヴァプールに移籍していったナビ・ケイタの後継者として期待されており、虎視眈々とチャンスを窺っている。
MF No.18 クリストファー・エンクンク
フランス
22歳
175cm
パリ・サンジェルマンからやってきた若きアタッカー。スピードあるドリブルとキック精度の高さが武器。セットプレーのキッカーにも指名され、正確な右足からゴールを演出する。基本ドレッド頭だが、しょっちゅう髪型が変わる。
MF No.25 ダニ・オルモ
スペイン代表
22歳
179cm
冬のマーケットで加わったスペインの若き至宝。攻撃的なポジションならどこでもこなし、スペイン人らしい卓越したテクニックでチャンスを作り出すアタッカー。チームの攻撃の切り札的存在。
MF No.27 コンラート・ライマー
オーストリア代表
22歳
180cm
無尽蔵の運動量でピッチを駆け回り、相手のチャンスをことごとく封じる潰し屋タイプのボランチ。RBライプツィヒが前がかりでもなんとかなるのは、この人がいるからという部分が大きい。守備だけでなく、縦パスやミドルシュートなど攻撃面での貢献度も増している。
FW No.9 ユスフ・ポウルセン
デンマーク代表
25歳
193cm
チーム最古参のストライカー。チームが3部リーグ時代から所属している。長身と足元の技術の高さが武器で、昨季はキャリアハイのリーグ戦15ゴールを記録したが、今季はシックの台頭により出場機会が減少中。
FW No.10 エミル・フォルスベリ
スウェーデン代表
28歳
179cm
背番号10を背負うアタッカー。最前線で身体も張れば、中盤でチャンスメイクもこなす万能ぶりが持ち味で、決して出場機会は多くないが勝負どころで仕事をする。RBライプツィヒが欧州CLで初のベスト16を決めたのはこの人のゴールあってこそ。
FW No.11 ティモ・ヴェルナー
ドイツ代表
24歳
180cm
ブンデスリーガで今季21ゴールを記録し、レバンドフスキと得点王争いを繰り広げるエース。超人的なスピードと加速力、強烈なシュート力が武器で、左サイドに流れてペナルティエリアの角あたりから打って決めるのが得意パターン。リヴァプールなど興味を示すクラブも多く、今オフの争奪戦必至。
FW No.21 パトリック・シック
チェコ代表
24歳
186cm
ローマからレンタルでやってきた左利きのストライカー。長身を活かしてターゲットマン役やポストプレーをこなす献身性の高さが評価され、スタメン確保。足元の技術も高く、ここまでチーム内3位の7ゴールを奪っている。
監督 ユリアン・ナーゲルスマン
ドイツ
32歳
内田篤人と同学年、という青年監督。若くして選手を辞めて指導者の道を志し育成年代で結果を残すと、初めてトップチームを率いたホッフェンハイムでは残留争いに苦しんでいたチームを欧州CL出場権獲得するまでに飛躍させ、RBライプツィヒに迎え入れられた。最新技術を駆使し、戦術ボードで選手に指示を出すイケメン。
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