2025シーズンにおける、鹿島アントラーズのファンクラブやシーズンチケットの変更点をまとめてみた
チケットについて
2024シーズンの席割
2025シーズンの席割
雑感
大きな変化としては、カテゴリー1とカテゴリー2を細分化したことだろう。中央にある跳ね上げ席(座るまで座面が折り畳まれているやつ)のみをカテゴリー1・2として、固定席の部分はそれぞれカテゴリー3・4として、値下げすることになった。
実際、カテゴリー1・2は今季より400円値上げ、カテゴリー5・6は200円値上げしているのに対し、カテゴリー3・カテゴリー4のエリアはカテゴリー1・2時代に比べて200円値下げされることになった。昨今の社会情勢を考えれば値上げは致し方ないかなと思う一方で、その折衷案としてカテゴリーを細分化して価格を下げたことは、ユーザーにとっては種類が増えて違いが分かりづらくなることをリスクに含みつつも、トータルとしてはプラスに捉えたいところだ。
ファンクラブについて
2024シーズンの価格と特典
フリークス
ジュニア
2025シーズンの価格と特典
レギュラー
ジュニア
雑感
これまでファンクラブとして受けられる特典で、支払った金額の約7割を担っていたのが月刊「FREAKS」だった。今はファンクラブ限定の非売品の会報誌になっているが、以前一般で発売していた時は1部300円であり、単純計算で×12すると3,600円、つまり5,000円の会費のうち3,600円がこの「FREAKS」による価値提供だったわけである。もっと言えば、そこに1,000円分のクーポンも付けて、さらにユニフォーム購入時の割引価格が1,690円ということも付け足せば、年会費の5,000円を超える5,290円分が「FREAKS」とクーポンなどの選べる特典、ユニフォームの割引代に充てられていたといえるだろう。
そのうち、(後述するが)「FREAKS」と1,000円分の選べる特典を廃止して、今回の目玉は限定のリュックサックとした、ということは大体3,000円〜4,000円の部分がこのリュックサックに充てられていることが窺えるし、言うならばそのリュックサックにそれだけの価値があるのか?、というのが一つの判断ポイントになるだろう。
他の特典を見てみると、ファンクラブ限定のイベントの表記がなくなった代わりに、(元々あったが)ユニフォームの優先&割引購入権が全面的に打ち出されている。オフラインはOBによるトークショー、選手のトークショーは専らオンラインのみだった中でこの変更は、プライスレスな価値提供よりも実利的なメリットを訴えていく方策だと言える。
また、クーポン系の配布が一切なくなったことを考えるに、鹿島のファンクラブは他クラブのような入った瞬間に招待券が付いてきて、「シーズンで◯回行く人は入った方がお得!」という謳い文句でリピーターになってくれるように宣伝するよりも、どちらかと言うと元々アントラーズのことが好きな人向け、すでにリピーターになった人向けの特典をメインとしているのだろう。これは良い悪いではなく、そういうスタンスなのだと理解しておきたいところだ。
一方で、ジュニアの特典は変わりなく、大人向けのプランで18歳以下にプレゼントしていたナップサックを廃止して、ジュニア限定だったエスコートキッズへの抽選参加権を新たに追加していることを踏まえるに、小学生無料施策によるこの年代の来場がかなり増えており、彼らがリピーターになってくれそうな可能性が高いことが読み取れるだけに、あの施策が一定以上の成果を生んでいることはおそらく確かだろう。
シーズンチケットについて
2024シーズンの価格と特典
・シーズンチケット+ユニフォーム割引購入=26,500円+18,000円=44,500円
・フリークス年会費+会員価格で19試合分購入+ユニフォーム割引購入=5,000円+2,600円×19+18,000円=72,400円
・チケットとユニフォームを全て定価で購入=3,100円×19+19,690円=78,590円
2025シーズンの価格と特典
・シーズンチケット=53,900円
・レギュラー年会費+会員価格で19試合分購入+ユニフォーム割引購入=5,000円+2,600円×19+19,100円=73,500円
・チケットとユニフォームを全て定価で購入=3,100円×19+20,790円=79,690円
雑感
シーズンチケットについては主軸となるサービスの内容に大きく変化はない。ただ、今までオプション購入だったユニフォームがデフォルトで付いてくるようになり、その価格分が上乗せされた価格になっている。
だが、今季からユニフォームの定価が1,100円値上げされるとはいえ、それを差し引いても単純比較で8,300円値上げされていることになり、いくら試合ごとにチケットを買うよりお得とはいえ、これだけ見ると改悪?という風にも捉えられてしまう。ファンクラブと同等のサービスを受けられる状態なので、ファンクラブの年会費も上がっているのならそこのサービスが上がったが故の値上げとも言えるが、ファンクラブの年会費は据え置きなので、シーズンチケットを買う人がかなり割を食うことになってしまっている。
ここまで来てカギになるのは20,000円を追加で払って手に入れられるオプション特典の満足度だろう。今季まではSOCIO会員のみの特典だった選手と直接触れ合えるファンサービス系のイベントを目当てにどのくらいの人が追加でお金を払ってくれるのか、その払った人たちがその価値があると思える追加特典なのか。これのリアクションが良ければ、多少値上げしても「SOCIOと同じ追加の金額負担で、SOCIOと同等のサービスが受けられる」ということで、その値上げが受け入れられる可能性はあるだろう。
SOCIOについて
2024シーズンの価格と特典
※法人向けがメインであるSOCIOロイヤルとSOCIOプレミアムは割愛
単純計算ゾーン
価値が金額化できる特典
合計
2025シーズンの価格と特典
※法人向けがメインであるSOCIOロイヤルとSOCIOプレミアムは割愛
単純計算ゾーン
雑感
分かりやすい変化としては、やはり値段が大幅に下がったことと、選択肢が格段に増えたことだろう。特典の抜本的な見直しと行った結果、特典がスリムアップされたのに併せて価格が下がり、またこれまでカテゴリー1とカテゴリー2のみだったのがカテゴリー1〜カテゴリー6、車椅子席まで選べるようになり、一桁万円代の年間指定席というのが鹿島の選択肢に復活するようになった。
特典が減ったことで今季よりも金額を可視化できる特典だけを考えたとしても、単純計算でお得感は減ったように見えるが、例えばサポーターズシート(自由席)20枚分はどう考えても使い勝手が悪かったし、その他にも特典をフルで使いこなしている人の方がおそらく少ない現状を考えると、単純な金額計算だけでおおよそ8,000円台の元が取れている計算になっている今の方が、SOCIO単体としては良いのではないかという気はしている。
ただ、追加料金を払うオプションは必ずしもプラスとは言えないだろう。駐車券は今季なら10,000円分のクーポンと同等だったし、B駐車場は今季1試合1,000円で停められるので、それが一気に2〜3倍の価格にはね上がることになる。スタジアムに必ずしもものすごく近いとは言えない立地や渋滞状況、さらには付近に充実し過ぎているほどある民間駐車場の存在や価格帯を考えると、オプション価格を払ってまで手に入れたい追加特典とは言い難い付加価値になってしまっている。
また、これまでのファンサービス特典の一部を切り離して+20,000円で売る、というのも判断の分かれるところだ。これまでは元値+10,000円でSOCIOフェスタに参加できていてその上で抽選があるイベントもあるということだったが、今後は元値+20,000円で回数こそ限られるが確実に受け取れる可能性の高い特典、ということになる。これはどっちが良いかは個人の判断によるだろう。ただ、SOCIOの価格帯を下げ、種類を増やしたこと、シーズンチケット購入者にも同様の追加特典を同価格で用意していることから、イベントに参加する分母は間違いなく増えている。これまで「高いお金を払っているからこそ、特別な体験ができる」というのが少なからずウリになっていたところで、その敷居は良くも悪くも下がったことになる。これが既存のSOCIO会員がどう受け止めるか、は判断のしどころだろう。
「FREAKS」について
2024シーズンの内容
2025シーズンの内容
雑感
個人的には大きな変化だと感じるポイントだ。これまで25年以上の歴史を持つ会報誌を終了して、今後は動画や写真メインの有料コンテンツをサービスさせることになる。
まず思うのは、クラブはおそらく動画や写真といったコンテンツはお金をとれるだけの価値があると考えているのだろう、ということ。シーズンチケットやSOCIOの追加特典でもそうだったが、「特別な」「限定の」という付加価値をつけてそうしたコンテンツを売り出していくことが、収益に繋がるポテンシャルを秘めているのだというのが窺える施策である。
ただ、一方で会報誌を終了してしまうということは、選手がオンザピッチについてしっかりと語ってくれたり、ピッチ上の現象や結果、補強戦略について定期的に振り返ってクラブとしての見解を示すテキストコンテンツを失ってしまう、ということにもなる。もちろん、他に伝えるメディアがないわけではないし、今後も伝える場は用意していくつもりなのかもしれないが、「FREAKS」のような一定の視点から長文で語る場所を自らで持たなくなるということは、個人的には決して好ましいとは言えないと思っている。
クラブとしてそうしたコンテンツを重要視していない部分もありそうだし、またそうしたコンテンツは番記者さんなどの既存メディアに担ってもらう思惑があるのかもしれない。ただ、既存メディアも厳しい環境の中で取材してもらっているわけで、いつそうした存在が消えるかもわからないし、彼らが定期的にコンテンツを届けられる保証はクラブとしては当然できない。また、そうしたメディアは当然クラブの中にいない人が書くわけで、そこにはクラブの思惑とは違う記事が世の中に届けられることも覚悟する必要がある。
テキストコンテンツや会報誌みたいなものがもうウケない世の中になってしまっていることは認めざるを得ないが、それを踏まえても上記の懸念はそうしたコンテンツを受け取る我々としても覚悟しておく必要があるだろう。
所感
ここからは個人的な所感をつらつら書いていきます。
まず、今回の改変のターゲットは、徐々にコアなサポーターになりかけている(まだなってはいない)層に向けたものが多いな、という風に感じました。おそらく、すでにコアでこれからも外的要因がない限りアントラーズを応援してくれるであろう層やまだリピーターになっていない層よりは、リピーターになりつつある層に向けてもう一歩深く踏み込んでほしい、そのために越えなきゃいけないハードルの高さはできる限り下げる、そうした想いを感じます。SOCIOの敷居を下げたり、ファンサービスイベントの裾野を広げたりするのは、そうした部分が故でしょう。逆に言うと、まだアントラーズにハマる入口に立つ前ぐらいの人や、すでにどっぷりハマっている人にとっては、ちょっとこっちのこと見てないのでは?、と思う部分があるのも納得できるところではあります。
その部分で今回見えたのは、メリットをハッキリと表面化できるものに特典を絞っていく、ということです。まず、ファンサービスの部分。鹿島は練習を基本的にオープンにしており、誰でも無料で練習見学ができて、時にファンサが受けられる状態です。つまり、高いお金をクラブに払わなくても、クラブハウスまで行ける時間的&金銭的余裕があれば、会員特典で受けられるメリットと同等のものを享受できるという、お金を払っている側からすれば一種の不公平さを感じる現象が発生するリスクを抱えています。これで、お金を払っても、抽選で望み通りのサービスが受け入れられるとは限らない、となれば不満は余計に募っていくでしょう。なので、金額を上げ、回数を絞ることで、その限られた機会はサービスを確実に受けられるようにする、このメリットを表面化したのではないでしょうか。(上手くいくかはわからないけど)
メリットの表面化については、スタジアム問題も関わってきます。今の鹿島は施設的な部分で我慢のフェーズに入っていると言えます。基本的にチケットが完売にならず余ってしまっているキャパ、スタジアムと周辺施設含め改善施策の難しい時期と状況。新スタジアムができるまではこれらの問題と向き合い続ける必要があります。そうした中で、できる限りスタジアムを埋めて、リピーターを増やしていきたい。メリットの見えづらい特典を削り、SOCIOの価格を下げてたり、小学生の無料施策でスタジアムに来るという金銭的な敷居を低くする。削られた特典と新たに打ち出しているメリットを踏まえると、そうしたことが考えられます。(そう考えると、ファンクラブ特典にチケットクーポンとか付けて会員数増やして、観客動員に繋げた方がいいのでは?、と思う部分はあるし、SOCIOの駐車場料金は上げ過ぎだとは思う)
個人的には特にサインや写真撮影といったファンサービスを求めているわけではないし(SOCIOフェスタに1万円払って、締めにジーコの大説教で氷点下の空気で終わった時とか何しに来たんだっけ、って思ったし)、SOCIOの特典で使えていないものもあったので、要素をシンプルにして価格を下げてくれたことはポジティブに受け止めています。ただ、コンテンツの魅力をクラブや選手個々のブランドによるものである、動画や写真をメインとして、クラブとしてオンザピッチの現象を深掘りしていく機会を減らすように見えるのは、ちょっと残念だなと思っています。そうした部分が世間的には取っ付きづらいと思われているのもわかりますし、触れ方が難しい部分があるのもわかりますが、コアな人たちを増やそうとしているのだから、そうした部分に触れていってもいいのでは?、と思うのです。
入会特典のグッズを普段使いしやすいデザインのリュックサックにするあたりは、他クラブや他スポーツではどうなのかみたいな部分も考慮しながら、決定した感はあります。その一方で、クラブとしてある程度ターゲットを絞って、そこに向けたような働きかけをしているのを見ると、そこへのこだわりというのも感じることができます。
ただ正直な話、この辺のストーリーを作って、上手くステークホルダーに伝えていく、というのが今の鹿島はあらゆる面で決定的に下手だな、と思います。文脈を踏まえればわからないでもない部分もあるのに、その辺を伝えなくてもいいと思っているのか、伝えてもわからないと思っているのかはわかりませんが、この文脈を読み取る作業をあまりにユーザー側に託しすぎているので、打った施策について不必要に反発や困惑の声を生んでしまっているのは、ピッチ内においてもピッチ外においても否めないと思います。その辺が超もったいない。
個人的な意見ですが、別にサポーターはかっこいいところだけ見せてほしいわけではないと思います。もちろん、かっこいいところが見たいのは間違いないです。ただ、そのかっこいい姿を見せるために、時にはダサいところを見せてでも必死に足掻いている姿は、それはそれで共感性を高めてくれるのではないでしょうか。今の鹿島はダサいところを見せたら負け、のように振る舞っているのがダサいな、って思ってしまう部分があります。
苦言を呈してしまいましたが、今回の変更でクラブとしての思惑は個人的に感じることができました。それを上手くステークホルダーに伝えられるといいいな、と思っています。