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【MTGプレイヤー視点で読む『すべそれ』】はじめと慧美の初対戦の模様をチェック!

はじめに

やあみんな、武えのきだ。

今回は、カードゲーム『Magic: The Gathering』を題材とした青春マンガ『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』通称『すべそれ』から、主人公・神納はじめとヒロイン・沢渡慧美の初対戦の模様を、プレイヤー目線でチェックしてみたい。

作中の時代設定が1998年5月とまだまだマジック黎明期ということで、現代の目から見るとクリーチャーの質がやや低かったり、逆に色対策カードがむやみに凶悪だったりする。そういうところに注目すると面白い。

ネタバレというほどがっつりストーリーには触れないつもりだけど、勝敗の結果やゲームの流れについては触れるので、気になる人はブラウザバックして頂ければと思う。そして、もし気が向いたら、『すべそれ』1巻を読んだ後にこの記事に戻ってきてもらえればとても嬉しい。

それでは始めていこう。

本文

初めてマジック専門店『しぶやま』を訪れたはじめは、店内で10連勝して無双している人物が、中学校の同級生・慧美であることに気が付く。

日頃から慧美にやり込められ苦い思いをしているはじめはリベンジのチャンスとばかりに、キャップを深く被ることで自らの正体を隠し、慧美に対戦を申し込む。その程度の変装じゃばれるに決まってるだろ同級生だぞ、という読者の想いに反して慧美ははじめの正体に一切気付くことなく、対戦の誘いを快諾する。展開の都合で仕方が無いとはいえ、慧美の認知能力に対してかすかな不安が残る一幕だね。

第1ゲームは慧美の先手で始まる。まず《コーの遊牧民》をプレイしてエンドした慧美に対し、はじめは《暗黒の儀式》でマナ加速し《ダウスィーの殺害者》を召喚。さらに《邪悪なる力》を《ダウスィーの殺害者》にエンチャントして強化する。それを見て「おお!」「この少年…速いぞ!」と沸き立つオーディエンス。褒め方が短距離走のホープに対するそれなのよ。

《ダウスィーの殺害者》
2マナ2/2でシャドーと強制アタック
《邪悪なる力》
クリーチャーに+2/+1修正を与えるオーラ

1枚の除去で計3枚分のカードアドバンデージを失うリスクがあるとはいえ、1ターン目から4点クロックが戦場に出るのはなかなか強力だ。前のめりで一本気な、はじめの性格が良く表れたプレイングだね。

その後も《恐怖》で慧美のブロッカーを除去しつつクリーチャーで殴り続け、第1ゲームははじめの快勝で終わった。

天敵とも言うべき慧美に快勝した嬉しさのあまり「ふっ これぞ俺がソルジャークラス1stたる所以よ…!」とかわけのわからないことを言ってにわかに勢いづくはじめ。それに動じることなく「うん」「だいたいわかった」と言い放ち、不敵な笑みを浮かべて「やろっか」「二戦目!」と強気に促す慧美。青春マンガの主人公たちはやっぱりこうでなくちゃ!

第2ゲームもはじめの勢いは止まらない。《暗黒の儀式》から《隠された恐怖》をプレイして慧美にプレッシャーをかける。

《隠された恐怖》
3マナ4/4だが、相応のデメリットもある(本文参照)

《隠された恐怖》は3マナ4/4という良好なマナレシオを持つクリーチャーなんだけど、戦場に出た際にクリーチャーカードを1枚捨てなければ《隠された恐怖》を生け贄に捧げなければならないというデメリットを持つ。《暗黒の儀式》と合わせれば、実質3枚分のカードを使って1体のクリーチャーをプレイしているわけだね。普通はこういうリスクのあるプレイは怖いんだけど、物語開始時のはじめは猪突猛進なのでそんなリスクなど頭に無いんだろう。

その後も果敢に攻め続けて勝ちを意識し始めたはじめに対し、慧美は冷静に《日中の光》をプレイしてはじめの攻めを止めることに成功する。

《日中の光》
風景の穏やかさが個人的に好きなイラスト
効果については本文参照

《日中の光》は黒のクリーチャーのアタックとブロックを禁じる凶悪な色対策エンチャントだ。どう見ても4マナのエンチャントが持っていい効果じゃない。しかも当時の黒はエンチャントに触る手段を持たないから、黒単がこれを貼られるとクリーチャーがおおむね無駄牌になってしまう。さすがに強すぎると判断されたのか、基本セット第6版を最後に再録されていない。当然だと思う。

クリーチャーによる戦闘を封じられたはじめは逆転の一手を待つんだけど、《浄火の鎧》をエンチャントした《白騎士》のアタックにより、あと1ターンでリーサルというところまで追いつめられる。勝利を目前にして「まさかこれで終わり?」「ソルジャー・クラス1stってのは嘘だったのかな?」とここぞとばかりに煽り散らかす慧美。相手の発言内容を利用して煽るあたりが本当に意地が悪くて最高です。

どうしても慧美に負けたくなくて《精神歪曲》の顔でもだえるはじめは、うっかりダイスをテーブル下に落としてしまう。

《精神歪曲》
主人公にさせて良い顔じゃ無くない?

それを拾いあげる際にはじめのキャップが脱げてしまい、慧美は対戦相手の正体がはじめであることに気がつく。中学校ではMTGを「子供っぽい」「校則違反」と揶揄していた自分が実はMTGをプレイしていることを、よりによってはじめに知られてしまった事実に動揺した慧美は、言葉も発さず、デッキも回収せず、逃げるように『しぶやま』から出ていってしまう。こうして二人の初対戦はうやむやのままサスペンドとなった。

おわりに

ということで、今回は『すべそれ』の主人公たち、神納はじめと沢渡慧美の初対戦の模様をプレイヤー目線でチェックしてみたよ。後にこの対戦には決着がつくんだけど、全部書くと文章が長くなりすぎるから、決着の模様については別途記事にしたいと思う。

はじめが第2ゲームで負けそうなときに精神歪曲と同じ顔をしているのは、この記事を書くために細かく読み返してみて初めて気が付いた。こういう小ネタがあるマンガは良いよね。気が付く限り拾っていきたいと思う。

それじゃあ、また。

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