イラストレーターの皆様こんにちは。プロとしてイラストを企業などに「ライセンス」するときに、契約書があった方が安心です。著作権の取扱いや帰属についても明確になります。そこで、「契約書をつくってみよう!」 と思われた際に便利なひな形と解説を用意しました。
こんな時につかえるひな形です ・クライアントとの金銭トラブルや著作権トラブルを予防したい ・イラスト作品を企業の商品やパッケージ、広告などに利用するなどしたい(させたい)、その際の権利や料金を明確にしたい ・あとで揉めないように、きちんとした契約書を用意しておきたい
今回は、著作権契約のうち、イラストレーターと、作品をビジネス利用したい企業との間の契約である、イラストのライセンス契約(イラストの利用許諾契約)のひな形と解説です。企業がプロモーション等に利用するために、イラストをグッズにしたり、パッケージに載せたり、各種媒体にキャラクターとして利用する際に、このようなライセンス契約が必要となります。
目的別に選べる2つのタイプ この契約書ひな形は、イラストの利用許諾を目的としており、制作過程を含むかどうかで2つのタイプに分かれています。
概要 ①既存作品の利用許諾タイプ このタイプは、イラストレーターがすでに制作済みの作品(既存のポートフォリオなど)を利用許諾する場合に適しています。 新たに制作するのではなく、すでにある作品を許可範囲内でクライアントに利用してほしい場合に活用できます。
② 新規制作物の利用許諾タイプ このタイプは、依頼者の注文に基づき新たに制作するイラストの利用を許諾する場合に適しています。 制作プロセスを含む契約となっているため、デザイン内容、納品スケジュール、修正回数など、新規制作に伴う条件を詳細に取り決めることができます。 クライアントから特定のテーマや要件で新たなイラスト制作を依頼された場合、制作過程を丁寧に取り決め、その後利用許諾する場合に活用できます。
いずれにしても、このひな形では、作品の著作権はイラストレーター自身が保持することを前提としています。つまり、クライアントに許諾するのは作品の「利用権」のみであり、作品そのものの著作権は譲渡されません。 イラストの利用目的、範囲(地域、期間)、形式(デジタルデータ、印刷物など)、報酬条件、秘密保持条項などを明確に定め、依頼者とイラストレーター双方が安心して契約を進められる仕組みを提供します。
Overview This agreement is a Copyright Utilization Permission Agreement (License Agreement) used when an illustrator permits the use of their illustrations to a client. The agreement covers the following two use cases:
・Utilization Permission for Existing Works A contract in which the illustrator licenses existing works they own to the client for use.
・Utilization Permission for Custom-Made Works A contract in which the illustrator creates new works based on the client’s request and licenses their use.
In both cases, the copyright itself is not transferred and remains owned by the illustrator.
The agreement clearly defines the purpose, scope (region, duration), and format (digital data, printed materials, etc.) of the illustration's use, along with payment terms and confidentiality clauses. It provides a framework that ensures both the client and the illustrator can proceed with the contract securely and with mutual understanding.
この契約書が必要な理由 イラスト等の作品には通常、著作権があるので、例えば企業がプロモーションに利用するためにはイラストレーター側から「使ってもいいよ」という許可を得る必要があります。そこで許可されたことの証拠や、具体的な条件(金額や、イラストの使われ方や期間など)をお互いに確認できるように、契約書が必要となります。
この契約書はこんな方におすすめです この契約書は、「イラストレーターのための著作物利用許諾契約書」として、イラストレーターの立場を尊重しつつ、クライアントとのスムーズな取引を実現するために作成されています。以下のような方に特におすすめです。
イラストレーター(利用許諾を与える側)、既存作品や新規制作物を利用許諾するフリーランスや事務所 ・自身のポートフォリオや既存のイラスト作品をクライアントに許諾する場合。 ・クライアントの要望に基づいてオーダーメイドでイラストを制作し、その利用を許諾する場合。 ・著作権を保持しつつ利用許諾を行いたい方
著作権の譲渡ではなく、利用範囲を限定した許諾(使用媒体、地域、期間など)を希望する方。 ・ 作品の権利を守りながら、適切な条件でクライアントに利用を許可したい方。
契約条件を明確にしてトラブルを防ぎたい方 ・許諾範囲や禁止事項を詳細に定め、誤解や不正利用を未然に防ぎたい方。 ・報酬や支払い条件を明確にして、金銭トラブルを避けたい方。 ・秘密保持や著作者人格権の取り扱いを契約で明確にしたい方。 ・柔軟に対応した契約を活用したい方 ・クライアントごとに異なる条件で契約をカスタマイズしたい方。
どのようにイラストが利用されるのかを決めておく この種の契約の場合、特に、イラストの利用のされ方をちゃんと決めることが重要です。たとえば、ホームページやリーフレットなどの「デザイン」としてや、グッズをつくるなど「製品化」する場合、そのまま「広告」に利用することもあります。使い方を決めるということは、勝手にそれ以外のことに使うことを防ぐ意味もあります。ここが曖昧だと、勝手な利用を許してしまうことになりかねず、トラブルのもとです。
今回のひな形は、イラストの著作権者(個人のイラストレーターや会社)が、イラストの利用を希望する会社へ許諾(著作権の利用を許諾)する場面を想定し、イラストの利用方法(どんな媒体で使うか、商品に用いる場合はその商品の詳細)について、詳しく書けるように「別紙」に記載して特定するかたちになっています。そして契約書本文にも禁止事項を規定することにより、たとえばみだりに改変されることを防げる内容になっています。具体的には、次のような条件を加えることで、イラストレーター側に配慮した内容です。
作品の著作権を「譲渡」する場合は別のひな形を イラストの著作権を譲渡する場合は、今回のライセンス契約とはひな形の種類が大きく異なります から、別途、以下の記事を参考にしてください。
イラストの利用料金(ライセンス料)を決める ライセンスの値段をいくらにするのかは、特に決まりがあるわけではないため自由に設定可能です。一般的なライセンス料設定方法としては「契約金」 のような形で一括で払ってもらうか、「デザイン料」 という形でイラストの制作点数などによって決めるか、あるいは「ロイヤリティ」 といわれる、販売に応じた料率を決める方法もあります。
紙契約にも電子契約にも対応 紙の契約書でも、電子契約でも締結できるよう、後文の文言を調整してあります。これにより、「今回は紙契約だけど、将来的に電子契約も使う」といった、どちらの場合にも使えるひな形になっています。
【免責事項】 当方が提供する契約書のひな形は一般的な形式や構成を示すものであり、特定の法的状況や個々の取引に適用されるべき内容を保証するものではありません。契約書のひな形はあくまでも参考資料であり、法的助言や専門的な意見を代替するものではありません。ひな形の利用による損害や損失については責任を負いません。利用条件を十分に理解し、ご自身の責任においてご判断ください。
【ひな形を使うメリット】 当方の契約書ひな形は、実際の業務で使用された生きた契約書を基に作成されたオリジナルのものです。同じひな形は他には存在しません。
一般的な内容ではなく、特定の場面を想定して作成された、そのシチュエーションに特化した内容となっています。ぜひ、あなたのビジネスにお役立てください。
この契約書には以下の条項が含まれています パターン①:イラスト著作物利用許諾契約書 (保有するイラスト作品等のライセンス)第1条(目的) 乙が保有する著作物を甲に利用許諾する範囲を規定。第2条(引渡方法及び引渡期日) 著作物の引渡方法と期日を規定。第3条(検査及び通知) 引渡後の著作物の検査手続きと、不備通知の方法を定める。第4条(契約不適合責任) 契約不適合があった場合の対応と責任範囲を規定。第5条(著作物の利用許諾) 利用許諾の範囲(独占性、地域、期間、目的、形式)を明確化。第5条の2(ポートフォリオへの利用) 乙が著作物を自身のポートフォリオに利用できる権利を規定。第6条(利用許諾の対価) 利用許諾に対する報酬額、支払い方法、遅延損害金を規定。第7条(保証) 著作物の権利や第三者権利侵害がないことを保証。第8条(不可抗力) 不可抗力時の対応を規定。第9条(契約の解除) 契約解除の条件と手続きを規定。第10条(反社会的勢力の排除) 反社会的勢力との関係排除のための条項。第11条(紛争解決) 紛争解決方法と裁判管轄を定める。第12条(協議) 未定事項や解釈上の疑義に関する協議を規定。パターン②:オーダーメイドイラスト著作物利用許諾契約書 (イラスト制作の受注後、その作品をライセンスする場合) 第1条(目的) 甲の注文内容に基づき乙が制作したイラストの利用許諾を規定。第2条(注文内容) 制作目的、作品名、仕様、その他必要事項を記載。第3条(納入方法) 納入手段を規定。第4条(納入期日) 制作スケジュールと各段階の納期を明確化。第5条(修正回数及び範囲) 修正対応の回数や範囲を規定。第6条(検品及び通知) 納品物の検査手続きと通知方法を規定。第7条(契約不適合責任) 契約不適合があった場合の対応と責任範囲を規定。第8条(著作物の利用許諾) 利用許諾の範囲(独占性、地域、期間、目的、形式)を規定。第8条の2(ポートフォリオへの利用) 乙が著作物を自身のポートフォリオに利用できる権利を規定。第9条(報酬) 制作報酬および利用許諾対価の支払い方法を規定。第10条(保証) 著作物の権利や第三者権利侵害がないことを保証。第11条(不可抗力) 不可抗力時の対応を規定。第12条(契約の解除) 契約解除の条件と手続きを規定。第13条(反社会的勢力の排除) 反社会的勢力との関係排除のための条項。第14条(紛争解決) 紛争解決方法と裁判管轄を定める。第15条(協議) 未定事項や解釈上の疑義に関する協議を規定。 ・契約を成功させるためのワークツール(補足資料) 契約を成功させるためのワークツール1 イラストレーターのための「料金表サンプル」と「見積もりテンプレート」 ・ クライアントに提案する料金表の例と、簡単に見積もりを作成できるテンプレート。料金の透明性を確保し、スムーズな交渉をサポートします。契約を成功させるためのワークツール2 イラストレーターのためのプロジェクト管理シート ・ イラスト制作プロセスを進捗管理できるシート。納品スケジュールや修正履歴を記録し、効率的にプロジェクトを進められます。契約を成功させるためのワークツール3 イラストレーターのための権利関係確認シート ・ 著作権や第三者の権利侵害の確認を行うためのチェックリスト。権利関係のトラブルを未然に防ぎ、安心して契約を締結するための資料です。契約を成功させるためのワークツール4 イラストレーターのためのNDAサンプル ・ クライアントとの間で秘密保持契約を締結するためのひな形。契約前の機密情報共有を安全に進めるために活用できます。契約を成功させるためのワークツール5 あなたの作品価値を守る!著作権利用(ライセンス)料の決め方簡単ガイド ・ ライセンス料をどのように設定すればよいか、わかりやすく解説したガイド。適正価格での取引を実現し、イラストレーターとしての作品価値を最大化します。
イラスト利用許諾契約書ひな形 パターン① イラスト著作物利用許諾契約書 株式会社〇〇〇〇(以下、「甲」といいます。)と、〇〇〇〇(←イラストレーター名を書きます。原則本名ですがビジネスネーム等の併記も可です。)(以下、「乙」といいます。)とは、乙の保有する著作物の利用許諾に関し、本日以下のとおり契約を締結します。 第1条(目的) 乙は、甲に対し、乙の保有する以下のイラスト作品(以下「本件著作物」といいます。)を利用許諾するものとします。 (こちらへは、対象作品が特定できる程度に具体的に書いてください。以下は記載例です。補足としてサムネイル画像を貼り付ける等も有効です。) (1)作品名等(タイトル、〇〇のイメージ、○○のテーマ、簡単な作品の特徴等) (2)サイズや形態等の仕様(データ形式、ファイル名、画像の枚数、画像のサイズ等) (3)その他:(参考資料、仕様書、その他の定義がもしあれば) この項目の、具体的な記載例 (1)作品名 ・作品タイトル:「夢見る森の少女」 ・イメージ:ファンタジー風のイラストで、神秘的な森と少女が主題。 ・テーマ:自然と調和した未来の世界を描く。 ・特徴:柔らかな色使いで、幻想的な雰囲気を演出。動物や植物が細部まで描き込まれている。 (2)サイズや形態等の仕様 ・データ形式:JPEG形式(RGB)、高解像度 ・ファイル名:yumemiru_mori_no_shoujo_v3.jpg ・画像の枚数:1枚 ・画像サイズ:3000ピクセル × 2000ピクセル(300dpi) (3)その他 ・参考画像1点 第2条(引渡方法及び引渡期日) 本件著作物の引渡方法及び引渡期日は以下の通りとします。 【引渡方法】 (該当する方法にチェックを入れるか、または該当しないものを削除してください。) □ オンラインストレージ(Google Drive、Dropboxなど)にアップロードする方法 □ 甲の指定する電子メールアドレス(〇〇〇@sample.com)宛てに添付送信する方法 □ 甲の本社所在地(東京都〇〇区〇〇丁目〇〇番地)に記憶媒体を持参又は郵送する方法 □ その他の方法 (具体的に記載してください。) 【引渡期日】 令和〇年〇月〇日 第3条(検査及び通知) 甲は、前条の引渡を受けた後、直ちに本件著作物を検査して、引渡された本件著作物に間違い、数量過不足、あらかじめ合意した仕様に合致しない等の齟齬がある場合には、その旨直ちに乙に対して通知するものとします。 2 甲は、前項の検査の結果が本契約の条件に適合していると認めた場合、引渡日から起算して3営業日以内に、電子メールまたは書面により乙に対して検査完了の通知をするものとします。 3 甲が前項の期間内に通知を行わない場合、本件著作物は契約条件に適合しており、検査が完了したものとみなされます。 (通知期間は任意に変更してください。) 第4条(契約不適合責任) 甲は、前条の検査の結果、引渡された本件著作物に誤り、数量の過不足、またはあらかじめ合意した仕様に合致しない等の契約不適合がある場合、その旨を速やかに乙に通知するものとします。 2 乙が前項の通知を受領し、当該契約不適合が乙の責に帰すべき事由によると認められる場合、乙は、引渡日から起算して1か月以内に限り、乙の費用及び責任において、以下のいずれかの対応を行うものとします。 (1)本件著作物の修正 (2)その他甲と乙が合意した合理的な代替措置 3 前項の期間内に甲から契約不適合の通知がなされなかった場合、本件著作物は本契約の条件に適合しているものとみなします。 (イラストが別のものだった場合や、すぐには発見できないような間違いがあった場合などについて保証する期間です。期間は任意に変更してください。) 第5条(著作物の利用許諾) 乙は、引渡日以降、対価の完済をもって、甲に対し、本件著作物について以下のいずれかの形態で利用許諾します。 (該当する項目にチェックを入れるか、該当しない方を削除してください。) □ 独占的利用許諾(乙は第三者に本件著作物と同一の著作物の利用を許諾しない) □ 非独占的利用許諾(乙は第三者にも本件著作物と同一の著作物の利用を許諾できる) 2 乙は、甲に対し、以下の範囲で本件著作物の複製、頒布、公衆送信(送信可能可)、展示、上映、その他本契約に基づく目的での利用を許諾します。 (該当する項目にチェックを入れるか、該当しないものを削除してください。) 【地域】 □ 日本国内のみ □ アジア地域(日本含む) □ 全世界 □ その他の地域(具体的に記載してください:________) 【期間】 □ 本契約締結日から1年間 □ 本契約締結日から3年間 □ その他の期間(具体的に記載してください:________) 【目的】 □ 広告用素材(デジタル広告、SNS投稿、ポスターなど) □ 商品化(パッケージ、キャラクターグッズなど) □ 書籍・出版物の表紙や挿絵 □ その他の目的(具体的に記載してください:________) 【形式】 □ デジタルデータ(JPEG、PNG、AIなど) □ 印刷物 □ その他(具体的に記載してください:________) 【制限事項】 (もしあれば具体的に記載してください) (________) 3 甲は、本条に基づき許諾された範囲外で本件著作物を利用する場合、事前に乙の書面による承諾を得なければなりません。 4 本契約に基づく許諾は著作権の譲渡を意味するものではなく、著作権は引き続き乙が保有します。 (この条文は、利用許諾の範囲を表します。甲(利用者)が契約で定められた範囲を超えて著作物を利用する場合、事前に乙(著作権者)の同意を得る必要があることを示しています。許諾「範囲外」の利用とは、たとえば、 地域外の利用: 国内利用の許諾を受けている場合に海外で利用する。 期間外の利用: 契約期間を過ぎても利用を続ける。 目的外の利用: 広告用に許諾された著作物を商品パッケージに使用する。 などがあります。 双方に誤解がないように、許諾範囲は正確に記載する必要があります。) 。