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暑さ寒さも彼岸まで

 ようやく暑い夏が終わって風が爽やかになる頃、ひと月ぶりにバイクのエンジンに火を入れた。たっぷりと朝寝を決め込んでいたので遠出をしている暇はない。幸い田舎暮らしなので少し走れば気持ちよく流せる道には事欠かない。

 最初の通過点を秋吉台のカルストロードと決めて田舎道を快走する。バイク乗りは目的地を点ではなく線で決定することが多い。どこへ行くか?よりもどの道を走るか?という事のほうが重要なのだ。道中行き交うバイク乗りたちはやっと暑さから開放されて気分が高揚しているのがよくわかる。すれ違うたびに手を振って挨拶を交わしながらしばらく走っていると見覚えのあるライディングフォームでかっ飛んでいくバイクとすれ違った。それほど遠くないところに住んでいるのに最近疎遠になっている学生時代のバイク仲間に違いない。後でSNSで呼びかけてみるとやっぱりそうだった。向こうも分かっていたようだ。学校を卒業してから40年、卒業後は数えるほどしか一緒に走っていないのにすれ違う一瞬の姿を見て誰か分かるというのもなかなか不思議なことだ。

 カルストロードを抜けたら日本海を見に行くことにした。昼飯を調達した道の駅には過ごしやすくなった気候に誘われて大勢の人出で賑わっていた。

 しばらく海を眺めて、バイクの写真を撮るために海沿いの道を走る。

 適当なところにバイクを停めて記念撮影をしたあと帰途につく。途中、ゲリラ豪雨の通り過ぎた後を追いかけるように濡れた道を走り、夕方、暗くなる前には家に着いた。瀬戸の海沿いを出発して2時間もかからないうちに日本海を眺められる、そんな場所に僕は住んでいる。

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