食べられない〜闘病備忘録7
肝性脳症の話はひとまず置いておいて、この夏にご飯が食べられなくなった話をしようと思う。今年は久しぶりに体調も良く、バイクで出かけられるほどの筋力も戻ってきた。が、定期検査の腫瘍マーカーの値がじりじりと上がってきているのが気になり、消化管の内視鏡やPET-CTなどの検査を繰り返したが、画像上には何も変化が見つからない。そんなことを繰り返しているうちに夏頃から食が細くなってきた。いよいよ食べる量が少なくなり胃液が逆流したり、食べたものをすぐに吐いてしまうようになりしばらく入院絶食して様子を見たりしていたが腹水が溜まっていたのと胃の出口が浮腫んでいる以外に決め手となる原因が分からず、最初は内科医が診ていたのが、途中から外科医に担当が変わった。外科医は腫瘍マーカーの上昇と腹水の状態、そして食べられないという症状から小腸のバイパス手術をして、ついでにお腹の中の状態を見るという提案をしてきた。癌の再発、腹膜播種を疑っているとのこと…。手術は経験上、かなり痛くてしんどい目に遭うのでなるべく避けたかったが、説明で散々ネガティブなことを聞かされた後に「それで勝算はあるのか?」と聞いたら「ある」と答えが返ってきたので手術を受けることにした。腹腔鏡による3時間ほどの手術の予定だったらしいが結果的に前の手術による癒着がひどくて開腹6時間の大がかりなものになってしまった。が、予定通り胃の出口と小腸をバイパスして、保険のために腸瘻の管を設置してお腹の中には播種は見当たらず腹水の検査にも再発の兆候はなかったとのことでまずは一安心だった。後はバイパスがうまく機能して胃から小腸へ流れれば手術成功ということである。この時の僕の心理状態は「具のないすまし汁」という記事で書いているのでここでは割愛するが、後で聞いた妻の話を少し記しておこうと思う。
手術の前日に執刀医から確認の電話があったそうで、今回の手術のリスクとメリット、手術をしなかった場合の予後についてもう一度説明があったらしい。その話を要約すると僕の血小板が少ないことで術中に出血が止まらなくなる恐れがあるということ、リスクを避けて今手術をしなかった場合、食べられないことで今よりも栄養状態が悪化すれば、もう手術はできない。その場合、点滴による栄養補充しかないので持って1年くらいということ。とにかくリスクは大きいけど今が最後のチャンスだと言われたらしい。後で話を聞いて手術を受ける決断をしたときの彼女の気持ちを考えると涙が出そうになった。幸い、術後は合併症も出ず、今は人並みにご飯も食べられる。因みに術前に胃の中に溜まったものを鼻から管を入れて取り出したのだがヘドロのような半液体が1200ccほど吸い出されてきた。手術のときにも未消化のもやしが出てきたらしく、その話を聞いてからもやしは全然食べていない。