始まり〜偶然の発覚 闘病備忘録3
ここで少し話を戻して癌が見つかった時のことを書いておこうと思う。
2020年の夏、新型コロナが猛威を奮っていた頃、僕は腹部大動脈瘤の破裂予防の手術を受けた。その時は一週間程度の入院で済み、特別痛い思いをすることもなく、定期的に経過観察に通えばよいだけだった。そして半年後の経過観察で造影CTを撮ったとき、手術の経過は問題なかったのだが「肝臓の中の胆管が拡張しているので、念の為に明日内科を受診してください。」という言葉を頂いた。奇しくも12月24日、クリスマスイブの事だった。
翌日、不安な気持ちで内科を受診してもらった説明書には、肝内胆管癌の疑いと書かれてあり、年明けに入院して検査すると説明があった。そのときには病気が見つかったらどうしようと思うより先に楽しいはずの年末年始を暗い気持ちで過ごさなきゃいけないという現実に腹が立ったのを憶えている。
そして検査入院の結果、先生の予想通り病変が見つかり、以降、病変位置の特定、身体、特に肝機能が手術に耐え得るかの検査、転移の有無など様々なことを調べられた。その間に僕も病気の知識を得るためにいろんなことを調べてみた。この癌、調べれば調べるほどいいことは書いていない。5年生存率20%程度だとか、再発が多いだとか、効く抗がん剤が少ないとか…。
この頃にはようやく楽観的な僕にも事の重大さが分かってきた。でも半分信じきれてない自分がいるのもまた事実だった。だって自覚症状なんて全くないし、何よりここ最近では一番体調も良かったから…。
こんな経緯を経て、手術日は2021年の2月24日に決まった。今思えばこのタイミングで見つかったというのは幸運という他ない。きっと治ると信じて僕はその日を待った。
入院したその日に鼻から胆汁ドレナージの管を入れられて手術当日はその管が見える以外は健康そのものの姿で心配そうに見送る妻に手を振って、僕は手術室の扉をくぐった。