手術〜ICU 闘病備忘録1
朝9時に手術室に入り目が覚めたのが23時だった。最初に妻の顔が見えてその次に妹、そして執刀医の先生の顔が見えた。みんな微笑んでいたのでとりあえず手術は成功したんだなと思った。14時間もの間執刀してくれた先生にはもちろん感謝の気持ちしかないけれど、それ以上に無事を祈りながら待ってくれていた妻、郷里から5時間余りの道のりを運転して駆けつけてくれた妹が、どんな気持ちで待っていてくれたかと考えると頭の下がる思いだった。が、手術が終わったばかりのICUでの面会は長い時間が許されるはずもなく、僕は体のあちらこちらに管をつけられて寝返りもうてない状態で長い一夜を迎えようとしていた。
その夜は幻聴がひどくベッドの下に発電機でも置いてあるのかと思うほど賑やかな一夜だった。するとある時突然「ことっ」という音がお腹の中で感じられた。手術で肝臓を3分の1と胆管、胆嚢を切除して胆管を小腸へ繋ぐという説明を受けていたのだが、この時まさに流れるべき液体が流れる場所を見つけて新たな生命の営みを始めたようなそんな気持ちになって少し涙が溢れた。不思議なことにこの間だけ例のベッドの下の発電機のような幻聴は聞こえず、静まり返ったICUの一角で計器の電子音のみが聴こえているような気がした。実際にはこの時補聴器を外していたはずなので音は何も聴こえないはずだったが、このときのことは鮮明に僕の記憶の中にきざまれている。
この文章はあるブログを書いていたときに闘病の備忘録として記したもので、結局そのブログは広告が煩くてほったらかしにしたままである。なのでこの続きがないままだ。
肝内胆管癌の切除手術を受けたのが3年9ヶ月前…。そこから僕の人生は大きな路線変更を余儀なくされた。この先どうなるかわからないが身体と頭がいうことを聞くうちに少しずつ書き加えていこうかなと思っている。