2020年のロボット大賞#2:介護、農業、インフラ
先週に引き続き、優れたロボットを表彰する「第9回ロボット大賞」に選ばれたロボットを見てみます!
前回は、ファナックの「協働ロボット」、GROOVE Xの「LOVOT」、JAXAの「はやぶさ2」を紹介しました。今回は、介護、農業、インフラの分野から選ばれた3つのロボットを紹介します。
●厚生労働大臣賞:移乗サポートロボットHUG T1-02[FUJI]
介護現場で、ベッドから車椅子の間などの移乗や、衣服を脱ぐ際の立位保持などの場面で使用されるロボット。立った姿勢を維持できるためズボンの脱着がしやすい、小型軽量でトイレ内での取り回しに優れるなどが評価がされているようです。
厳しい意見を書かれている記事もありますが、ワンボタンで動作が可能など使いやすさにこだわったというのがポイントです。
販売数は月100台ペースで、1台98万円という価格帯。介護保険の適用がされており、エンドユーザは月額30,000~33,000円くらいにレンタルができるようです。【テクノエイド協会資料】
介護領域において腰痛の原因となる移乗(トランスファ)に対するロボットの研究開発の歴史は結構古く、1990年代に日立で開発された歩行支援機など、多くの企業が挑戦してきた領域です。その中で、月100台というのは、最も市場投入されているでしょう。
その背景としては、冒頭書いたように現場での利用にこだわり、使いやすさにも拘ったという点があるのはもちろんのこと、国プロ「ロボット介護機器開発・導入促進事業」も活用されて行われており、日本における介護ロボットに必要な環境、ガイドラインなどが整ってきた成果とも言えるかもしれません。
●農林水産大臣賞:自動野菜収穫ロボット[inaho]
アスパラガスなどの自動野菜収穫ロボットを開発し、ロボットをタダで配る代わりに、収穫量の15%を対価として回収するという、文字通りの重量課金モデルを展開しています。
米のように一括で収穫できる作物と異なり、1つ1つ選択的に収穫していくロボットとしては日本初の商品化かと思います(たぶん)。
非常にユニークなビジネスモデルで、このNoteでも以前に紹介させて頂きました。わりと丁寧に纏めたつもりですので、良ければ読んでください。笑
前回紹介したのが約1年前の2020年5月。そこから関連ニュースを調べてみると、3つの国プロに採択されたというリリースが出されていました。農水省関係やものづくりベンチャー支援の国プロを獲得し、研究開発、事業開発をブラッシュアップしていっているようです。
最近は、アルパラガス以外にも、トマトの収穫も行っているようです。相変わらず、シンプルでステキな構成です。動画の再生速度はわかりませんが、早送りをしていなければ、認識から収穫までのスピードは結構早いっ!!
今後は、収穫対象をアスパラ、トマトに加えて、きゅうり、イチゴ、ナス、ピーマンなどへ拡げていくと共に、防除や葉かき、運搬といった農作業の全般の自動化や軽労化を進めていくとのことです。
RaaS×農業というおそらくベンチャーの財務的には優しくないアプローチな気もしますが、顧客側にとってはメリットがある、かつ、社会課題的にもインパクトのある取り組みなので、是非成功して欲しいなぁと思います。
●国土交通大臣賞:トンネル覆工コンクリート自動施工ロボットシステム[NEXCO西日本、清水建設、岐阜工業]
トンネルの施工を自動で行うロボットシステム。それまで人手で行っていたコンクリート投入配管の盛替作業を、マニピュレータ方式を持つロボットにより自動化。さらに、スライド型枠の検査窓から投入していた生コンクリートを、全ての高さにおいて、中流動コンクリートの特性を最大限活用した吹上げ打込み方式とする新しいシステムとなっています。
(引用:第9回ロボット大賞説明資料)
全く専門ではないので、詳細はよくわからないところがありますが、山岳トンネル覆工コンクリートの打込みから締固め、打止め、脱型枠という一連の作業の自動化するもの。
従来は5名で行っていた覆工コンクリ-トの施工が2名で実施できるということで省人化に繋がるだけでなく、これまで熟練技能労働者の経験と勘に依存し、「施工品質の確保」が課題であったところに、各種データでの数値化により安定した品質が可能になっていて、2020年末までに湯浅御坊道路の川辺第二トンネルなどの3つの現場で活用されています。
https://www.kozobutsu-hozen-journal.net/walks/13888/
そして、もうひとつ気になったのは、NEXCO、清水建設とともに表彰されている「岐阜工業」という会社。全然存じ上げなかったのですが、トンネル用型枠の国内シェア約70%ということでトンネル工事でキーとなる会社っぽいですね。清水建設以外でも鹿島とも一緒に開発もされています。
今回のロボット大賞では、インフラ領域から他にも、鹿島の「建設機械の自動運転を核とした次世代建設生産システムACSEL(クワッドアクセル)」、東大とNEXCO中日本の「高速道路のトンネル覆工コンクリートにおける時速100㎞走行での4K高解像度変状検出システム」が優秀賞として選ばれています。
今回紹介したロボットは、前回のLOVOTやはやぶさ2のように日常のニュースで出くわすことはほぼ無いと思います。ただし、介護、農業、インフラといずれも無くてはならない領域です。そんな領域でさりげなくロボットが活用され始めているということも、少しでも知って頂ければ嬉しいです。
来週は、中小企業庁長官賞、日本機械工業連合会会長賞、日本機械工業連合会会長賞に選ばれたロボット達を見ていきます。
では、また来週〜。
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安藤健(@takecando)
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