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自分の可能性を広げる「自己拡張」~花束みたいなプロダクトは作れるか?~

今回は『自己拡張(Augmentation)とは何なのか?』について考えてみます。一言で言うと、タイトルの通り、自分の可能性を広げることだと思っています。すなわち、自己拡張技術とは、物理的な能力としての拡張もあれば、精神的な状態の拡張もありますが、自分がしたいこと、なりたい状態になるための技術です。今現在の思考を整理してみたいと思います。

自己拡張って何だっけ?

初めてのnoteで自動化(Automation)と対になる考えとして、自己拡張(Augmentation)という考え方を書きました。ここでは効率化、生産性向上を追求する「自動化」に対して、自分のしたいことをするための「自己拡張」という考え方を説明しました。

誰もが楽しく、幸せに生きたいと思っているはずです。もちろん、人は一人では生きられず、関係性の中で存在する動物ですので、自分がしたいことをしても、他者や社会から存在を感謝・承認されないような状態では幸せとは感じないでしょう。というか、辛いでしょう。『Well-being(身体的、精神的、社会的に良好な状態)』で暮らしたい、そのために存在するテクノロジーが自己拡張技術です。

また、上記の投稿の中では、力やスピードなどを物理的に増大させるものと、感情など精神的な拡張をもたらすものがあることにも触れました。ここでは、物理的な拡張を『量的拡張(Enlarge)』、そして『感情など精神面での拡張を質的拡張(Enrich)』と名付け、それぞれについて考えてみたいと思います。

量的拡張 Enlargeとは

こちらは物理的に機能・能力を拡張することで比較的わかりやすいです。例えば、メガネ。これは衰えた視力を回復するものです。同じように補聴器も聴力を増強させるもの。他にも義手や義足なども該当するでしょう。

別にEnlargeは高齢者、障碍者だけのものではありません。モノを持ち上げたりするのを補助してくれるパワーアシストスーツも、もちろんEnlarge。

既存の機能を増強するだけではなく、新しい機能を増やす、そんなEnlargeもあるでしょう。例えば、それまで2人必要だった作業が1人で出来るようになる「第三の腕」

質的拡張 Enrichとは

精神的な状態を拡張するというのは、例えばもっと楽しく、もっと興奮するように、もっと集中できる、もっと心安らかに、ということです。それ自身があっても直接的に生産性が上がるとかには関係ないけれども、心理的には良い状態に動く。そういうものがEnrich。

一番アナログなものとしては、自然。南国ビーチや焚火など自然が持つEnrich powerは非常に大きい。もう少し人手が関与するものとしては『花』。部屋に花が飾ってあることに対して、嫌な気分になる人はほとんどいないでしょう。

また、『エモい』と言われるようなものは、多くがEnrichなモノでしょう。感性に訴えかけ、心を豊かにするものです。

デジタル側では、Walkmanは当時はめちゃくちゃEnrichされたはずです。家でしか聞けなかった音楽が、歩きながら聞ける。こんなに『ココロオドル体験』はなかったはずです。

ロボットでもEnrichなプロダクトがないわけではありません。例えば、SONYの『Aibo』GROOVE Xの『LOVOT』は感性的な価値が高くなるように開発されています。

EnlargeとEnrichの関係

では、EnlargeとEnrichというのは、どういう関係なのでしょうか?

下図に示すように『Enlargeとは自分の入出力に関する増減』、そして『Enrichというのは自分の状態の変化』を表しているのではないかと思っています。
(制御的に考えると、赤い線がEnlarge、緑の線がEnrich)

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このように考えると、EnlargeとEnrichは決してキレイに分離されるようなものではなく、EnlargeによってEnrichがもたらされることは十分に考えられます。むしろ、Well-beingという観点で考えると、Enrichされ、自分自身が楽しく、幸せに感じることが最も重要な目的になるのではないかと。

逆に言えば、Enlargeしているにもかかわらず、Enrichに繋がらないものは、しない方が良く、それこそ自動化(Automation)するべきものとなります。

例えば、「量的拡張 Enlargeとは」のところで紹介した「第3の腕」の場合、その作業をしていて楽しい、やりがいがあると感じる作業でないならば、それは自動化した方が良いはずです。

もちろん、技術的な障壁があるので、実際に自動化できるかどうかは別です。現状の技術レベルでは、人間の方が知能や手先の器用さという観点で優秀なケースがまだまだ多く、完全自動化できないことは多々あります。

Augmentationのこれから

自己拡張に関しては、私自身まだまだ考え始めたばかりで、考えも纏まっていません。ご意見などのフィードバック頂ければ助かります。

一方で、AugmentationというのはWell-beingに必ず役に立てるとも信じています。自分のしたいことをし続けられる社会、そして自分のしたことで社会から感謝される社会、そんな社会ができたらなぁと。そのために、身体的にも精神的にも自分の内に秘めたモノ(技術・機能・想いなど)を引き出せるプロダクト・サービスを作っていきたいと思います。


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安藤 健/ロボット開発者
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