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中国ロボットの報道で感じた、課題解決先進国としての日本という言葉の逆転。

日本のことを「課題先進国」とか「課題解決先進国」という枕詞を付けて説明するのは、さまざまな講演やセミナーとかでよく聞く。私も10年くらい前に大学で働いていたときの講演資料を見返すと、

「課題先進国から課題解決先進国になるために、ロボットを活用した社会を日本で実現し、グローバルに展開していく必要がある!!」

みたいなプレゼンをしていました。

NHKが紹介した中国ロボット開発の背景

ところが、ふとSNSで流れていたニュースを見ていると、課題解決先進国という言葉は、全くもって日本の専売特許ではないんだなぁと改めて認識したというか、いつの間にか逆にグローバルに展開されている立場になっていたのか!!と思いました。

そのニュースはNHKのおはBizです。

リンク先から動画が確認できますが、中国の企業の紹介をしていますが、前半は下請けメーカーが自社ブランド製品で反転攻勢という日本でもよく聞く話。後半は、ロボットの取り組みとして、配送ロボットなどの中国大手Keenonの紹介です。一気に量産までもっていき、すでに年間5万台(1台130万円としても年間650億円分)の生産能力をさらに倍に引き上げるそうです。時価総額も1300億円。

日本の中にいると、以前記事にもしたようにすかいらーくの3000台の件もあり、Puduの配膳ロボットの方がよく見ますが、IDCが発表した中国の外食産業でのロボットのシェアを見ると、Keenonが49%、Puduが26%となっているようです。(ほかの調査ソースだと違う数字かもしれません)


話を元に戻すと、このような中国ロボットの勢いはもちろん理解していたので特に驚きがなかったのですが、このようなロボットが人口減少とか労働力不足とかそのような文脈の中で紹介されることに少し驚いたわけです。もちろん、中国の高齢化が今後急加速することや労働賃金が上がっていることも理解はしていたのですが、そのようなことと中国のロボット開発が一般向けのメディアで結び付けられることはあまり記憶になかったのです。
※これまでの報道は、どちらかといえば、中国の技術レベルが上がっているとか、イノベーションがどんどん起きているというような「科学技術立国」的な文脈が多かったような気がします。

そもそも課題解決先進国って?

日本では労働賃金上昇という文脈はほぼないにせよ、「人口減少社会」とか「高齢化」「少子化」による労働力不足みたいな文脈は、日本のお家芸だったと思うのです。

そもそも課題解決先進国という言葉を誰が言い始めたのでしょうか。ChatGPTに聞いてみたら、2005年6月28日衆議院本会議で小泉純一郎総理が初めて言ったと返答してきましたが、国会の議事録検索システムで検索してもその発言はヒットしなかったので、よくわかりません。

例えば、このホームページでは、2006年に横山禎徳氏が「アメリカと比べない日本――世界初の『先進課題』を自力解決する」が初めて「課題解決先進国」という言葉を使ったと書かれているし、翌年の2007年には東大総長の小宮山先生が『「課題先進国」日本』というダイレクトな本を出版されています。

最初に誰が言った議論は置いておき、要は2005、06、07年あたりに、日本において「課題先進国」とか「課題解決先進国」というワードが社会に浸透していったものと思われます。この頃の日本はというと、ちょうど2007年が世界で初めて65歳以上の人口が全体の21%を超える「超高齢社会」に突入した年で、おそらくそのような社会に向けて、どのように経済や社会の活動を維持していくのかというのが議論に注目が集まっていたのではないかと思われます。

もちろん、高齢化の進行に伴い発生する労働力・医療・介護などの課題だけではなく、地球温暖化・エネルギーなどの環境に関する課題などなど日本が直面していたさまざまな課題を総称して課題先進国、さらにはそれを解決して課題解決先進国になろう!!と言われています。そして、これらを解決することが、人口動態上、何年後かに続く世界各国の課題を解決することになるというストーリーだったはずです。

中国の詳しい人口動態はよくわからないというのが専門家の方の意見のようですが、JETROの資料では2021年には65歳以上の人口が全体の14%を超える「高齢社会」となっているようで、日本の1995年くらいと同じような高齢化率ですし、国連の発表では、23年には人口減少に向かうかもしれないという感じのようです。

人口動態上の高齢化は日本の方が先行し、「課題出し」という意味では先行したにもかかわらず、ロボット、特にサービスロボットの状況を見ると、課題解決に先んじているのは中国という状況なんだなぁというのを、改めて今回のNHKの報道で突きつけられてしまいましたね。。

さぁ、どうする、我々!?

という状況です。

私自身も答えは持っていないところではあるのですが、「課題解決先進国」というキーワードは最近使われているのかなと思い、ネットを調べてみると、昨年末の22年12月に発表されている「2025 年大阪・関西万博アクションプラン Ver.3」のはじめにこんなことが書かれていました。

日本は、「課題解決先進国」として、人間一人一人がそれぞれの可能性を最大限発揮できる持続可能な社会を、国際社会と共に創る

2025 年大阪・関西万博アクションプラン Ver.3

まだまだ「課題解決先進国」という言葉は現役だな!と思う一方、「国際社会と共に創る」という言葉が繋がれていました。

この言葉を作ったときには、おそらく日本で先に創って、パッケージソリューションにして世界に展開するぜぃ!というトーンだった気がしますが、一緒に創りましょう!!という内容になっています。

もちろん、文字通り万国博覧会という特性上、使われた言葉かもしれませんが、一緒に創ろう!というトーンに切り替えるというのは、ヒントなのかもしれません。そのときには、相手方にも一緒に創りたい!と思わせる必要があるわけですが、それは何なのか、国レベル、企業レベル、個人レベルでもしっかり考えていかなといけないですね。


では、また来週~!!
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安藤健(@takecando)
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安藤 健/ロボット開発者
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