企画から商品化まで5年かかったロボティックモビリティ ”PiiMo” を振り返る。
2015年に立ち上げた1つのプロジェクトが、「追従型ロボティックモビリティPiiMo」の商品化という形で先日リリースされました。
追従型ロボティックモビリティ”PiiMo”
「5年も掛かってしまった。」というのが、個人として思うことだし、他の人から見ても思うことだろうと思います。一方で、アッという間だったとも思う。今回は、この5年間何をやっていたのかを、オープン情報のみにはなってしまいますが、振り返ってみたい。あまりにも当事者すぎる案件なので、現時点で詳しい話はお話しできない点はお許しください。
追従型ロボティックモビリティ”PiiMo”とは
”PiiMo”は、パーソナルモビリティで有名なWHILL社さんとのコラボレーションにより生まれたモビリティです。特徴は複数台が仮想的に隊列を作って動くことができることです。後ろのモビリティは前のモビリティを追いかけるので、追従型と呼んでいます。完全に無人で目的地まで行くものではなく、スタッフ1名が先頭を操作し、その後ろのモビリティが自動で付いていくことで、お客様とのサービス接点は残しながらも複数の方が一緒に移動できるようになっています。
おそらく人が乗り自動で動くモノを商品化したのは、パナソニックとしては初めてなのではないかと思います。
始まったのは2015年
もともと企画を考え始めたのは2015年。2011年秋に会社に入り、2015年から所謂マネージャと呼ばれる仕事を始めたので、事実上会社に所属し初めて自分で立案したプロジェクトです。
色々なパターンを検討する中でモビリティ自体はコラボしようと考えていた時に、たまたま自社のパラリンピックを担当している部門から紹介して貰ったのがWHILLさん。モビリティのカッコよさ、性能の良さも凄かったし、個人的にも創業者の方々が同世代だったことや話してみると共通の知人がいたりして、一緒にさせて頂きたいという強い想いが生まれました。
コラボがオープンになったのが2016年2月でした。実際に実機を触り始めて、確か2,3カ月くらい。Wonder Japan Solutionという展示会でお披露目になりました。この時のことは結構鮮明に覚えていて、メインステージで招待したVIPの方々の前で動かさないと行けなかったのに、前日までうまく動かず、、、この頃はまだまだプレイングマネージャで半泣きになりながら、直前まで調整やバックアップ方法を考えていました。
このときにはまだモビリティも現行のModel Cではなく、Model Aを使っていますね。
繰り返された実証、一歩ずつ商品へ。
2016年からは本格的に開発作業が始まっていきました。当時の開発の様子なんかは、以下などで双方のエンジニアに語ってもらっています。文中でも書かれていますが、お互いにかなり情報をオープンにして開発を進められました。本当に感謝感謝です。
そして、2017年2月には再度Wonder Japan Solution展で自動走行、隊列走行、カート連携などのコンセプトデモ発信がされるとともに、一般の皆様の目に触れる形で2017年8月には羽田空港でお披露目という形になりました。まだ車体はModel Aですね。
これを機に多くの場所で実証実験を行っていくことになりました。国内外のお客様をWHILLさんと一緒に訪問することもありました。効果が出る使い方はどのようなものなのか?、どれくらいの効果が出るのか?、そもそもどれくらいの技術レベルが現場で求められているのか?、本当のお困りごとは何なのか?、どんどん確認、更新していく作業が続きました。
公開されている実証実験としては、2019年に成田空港でのANA様、2020年に高輪ゲートウェイ駅でのJR東日本様との長期的な実証がありました。すべてのオペレーションをユーザ様自身で実施頂くことで、細かい点も現場で実際に使えるものに徹底的に鍛え上げて頂きました。この頃には機体もModel AからModel Cに変わっていますね。
また、並行して商品にするための準備も進められていきました。特に、人を乗せて自動で動くものにおいて、求められる「安全」とはどんなものなのかというのは非常に大きな問題でした。決して致命的な事故を起こさないために技術としてはどこまで担保すべきなのか。前例のない中で、専門の社外機関にも協力いただきながら、多くの試験も実施されました。「もし人が急に飛び出してきたら、、、」「もしモビリティ側が暴走したら、、、」「もしセンサが壊れたら、、、」など多くの懸念を潰していく作業が続きました。
2019年12月には、「安全」の担保ということに対して、技術的には「機能安全」という技術で答えを出すことができました。複数のセンサを組み合わせることで、日本品質保証機能(JQA)様よりIEC 62061に基づく「安全制御ユニットの適合証明」を頂くことができました。
そのほか、本当に多くの試験、評価、審査を行い、商品化に向けて一歩ずつ進んでいくことになります。プロジェクトメンバーだけでなく、前例となるパナソニック商品がない中で、多くの社内メンバーに多大なるご尽力を頂きました。感謝感謝。
商品リリース
そして、2020年10月27日。WHILL社様とパーソナルモビリティの供給などに関する契約締結に合意し、追従型のロボティックモビリティを商品名”PiiMo”として11月より販売を開始することになります。
あいも変わらず、プロジェクトリーダである私の段取りの悪さもあり、直前までドタバタで、多くの皆さまにご迷惑をお掛けしましたが、無事にメディアの皆さまへの説明も実施することができました。
多くの新聞、Web媒体に掲載頂くことができております。
Impress、cnet、fabcross、newswitch、ASCII、ligare、Techable、イザ!などなど。
商品化までたどり着きましたが、いよいよ、これから本番です!
コロナの影響も大いに受ける事業領域ではありますが、1つでも多くの施設様や1人でも多くのエンドユーザ様に、新しい移動価値、新しい移動体験を提供できるように頑張っていきたいと思います。
アカデミア出身の私が故に、ビジネス視点が足りず、関係者の皆様にご迷惑をお掛けしたこと、もっと良いやり方があったと反省すべきことも多々ありますが、WHILL様はじめ多くの社外の皆様や社内の関係者の皆さんに本当に丁寧にご支援を頂き、お詫びと感謝の言葉しかありません。また、私の無茶振りにいつも応えてくれた開発メンバーには頭が上がりません。
本当にありがとうございます。
今後とも、「1人でも多くの人が、1回でも多く、笑顔になる社会」に向けて、ロボット技術を使って少しでも貢献できるようにしていきたいと思います。
では、また来週~。
安藤健@takecando
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