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中編:2023年、国はどんなロボットに投資するのか?(農林水産省・厚生労働省編)
前回に続き、今回も、国はどのようなロボットの開発や活用に予算投入しようとしているのかを調べてみます!
前回の「経済産業省」編に続いて今回は、ロボットを使うユーザー側になる「農林水産省」や「厚生労働省」の施策を見てみましょう〜
情報ソースは省庁の予算関係のホームページに載っているオープン情報を勝手に拾って来ただけですので、抜け漏れがあるかもです。また、情報の正確性は責任を持ちません。漏れをご指摘頂ければ追加します。まだ各省庁が財務省に申請をした概算要求の段階で、まだまだ変わる可能性はあるかと思います。
農林水産省
文字通り、農林水産業という日本の一次産業全体を見ています。圧倒的な高齢化が進む産業の中で、農林水産業に関する「研究開発」と現場へのロボットなどの「導入促進」の両方がバランスよく取り組まれています。
今年度の概算要求の資料を見ていると、少し前は、生産性向上、人手不足というキーワードが多かったのに対して、もちろんそこはありつつも、「環境負荷低減」などグリーンというのも強く意識されているように感じます。
ロボティクス系の中核となる「スマート農林水産業の推進」に関しては、ロボットが絡みそうな内容としては以下の3つの柱かと思います。
① スマート農業の総合推進対策
ロボット、AI、IoT等先端技術の実装を加速するため、スマート農業技術の開発・改良・産地支援、地域での技術指導をサポートする取組の支援、農業教育機関の学生や農業者等に対する教育・研修等を推進
② ICTを活用した畜産経営体の生産性の向上
酪農・肉用牛経営の省力化・事故率低減等に資するロボット、AI、 IoT等の先端技術の導入、畜産関係団体やITベンダー等が連携し、 生産関連情報を集約し、活用する体制を整備する取組等を支援
③ 林業デジタル・イノベーション総合対策
林業機械の自動化・遠隔操作化や木質系新素材の開発・実証、森林資源情報のデジタル化、ICT等を活用した生産管理の効率化、地域一体となってデジタル技術をフル活用する戦略拠点の構築等を支援
「スマート農業の総合推進」では、特にロボットというだけではなく、必要な技術の開発やデータを活用した現場実証等が行われています。大々的に国プロになってから、5年?くらいは経って、収穫ロボットやドローンなど様々なテクノロジーの開発や有用性の検証が行われていて、知見もかなり溜まっているのではないでしょうか。
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また、同様?の内容が「みどりの食料システム戦略実現技術開発・実証事業」という文脈でも掲載されているので、生産性向上だけではなく、持続性、グリーン、サステナブルというような観点でも取り組みが行われることになるかもしれません。
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一方、スマート農業のPJの中で、ロボットというキーワードが出されているのが、「ロボット技術の安全性確保策の検討」。特に、遠隔監視による自動走行の安全技術の検証などが行われているようです。
遠隔で農業ロボットと言えば、北海道大学の野口先生が複数の会社のトラクターを5Gも使って遠隔から制御するという取り組みをされていました。(もしかすると内閣府の未来技術社会実装事業のテーマかもしれません)
配送ロボットでも遠隔監視というキーワードがよく聞かれますが、トラクターも移動するときには公道も横切ることもあるかと思いますので、共通的な議論も起きたりするのかも知れません。
研究開発だけではなく、導入サポートという観点では、「ICTを活用した畜産経営体の生産性の向上」というプロジェクトが実施されています。PR資料をそのまま引用すると、「酪農・肉用牛経営の省力化・事故率低減等に資するロボット・AI・IoT等の先端技術の導入や、それらの機器等により得られる生産情報等を畜産経営の改善のために集約し、活用するための体制整備等を支援」ということで、素晴らしい取り組みです。ロボットとIoTを上手く組み合わせて、省力化、収穫量増加、事故低減などの好循環を生み出すことができるのではないかと思います。
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搾乳ロボットの関連の記事としては、是非、以下も読んで頂けると嬉しいです。
また、搾乳ロボットなどの牛以外でも、ロボットなどの導入補助という観点では、中山間地の農業推進対策として、デジタル技術を使った優良事例創出に対する年間1000万円×5年の補助を出したり(PR資料では弊社の収穫ロボットを使って頂いています。笑)、集約的な農地活用に向けたロボット技術の活用などに対して3/10の補助が出たりするようです。
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農業だけでなく、林業もDX化に向けた取り組みが進んでいます。「林業イノベーション」ということで、林業用機械の自動化や遠隔操作化が進められるようです。令和7年までに自動化などの機能を持った高性能林業機械を8件実用化することが目標に掲げられています。
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そして、サプライチェーンの上流(作ったり、収穫したり)への支援だけではなく、流通に対しても、取り組みが進められています。
例えば、卸売市場の拠点整備として、物流機能を強化するために、場内の物流効率化として多段の移動台車や棚上搬送ロボットの導入補助が行われるようです。写真では、Autostoreが使われていますね。生鮮食品などがどのように流通しているのかは、十分理解していないところもありますが、このようなロボットが役立つ場面もあるかもしれません。
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さらには、食品製造業の労働生産性を3割向上させ、サステナブルな食品産業モデルを作り上げるために、AI、ロボット、IoTなどの高度技術の実装を支援する取り組みも行われています。
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厚生労働省
ロボットに限らず、本当に多くの医療、福祉、介護などに関する取り組みをしています。
特に介護ロボットに関しては、介護ロボットの開発・実証・普及のプラットフォームとして、相談窓口、リビングラボの設置が行われたり、生産性向上に関する効果測定が100カ所ほどで実施されるようです。特に在宅での技術検証が重点になるようです。
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介護の生産性向上に関しては、さまざまな支援をワンストップでできるように各都道府県に介護生産性向上総合相談センターができるようです。介護ロボットのモデル的取り組みに必要なロボット機器費用や相談窓口業務(機器の体験展示、試用貸出、専門相談員、研修費用等)、そして効果的な活用・普及に必要な経費(現場の課題に応じた導入支援、研修・伴走支援費用等)に対して、補助がでるようです。
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また、介護ロボットの導入支援に関しては、政府の定める重点分野(移乗支援、移動支援、排泄支援、見守り、入浴支援など)のおいて導入費用の補助がありそうです。移乗支援や入浴支援に関しては100万円、それ以外でも30万円。令和三年度は実績として2500件以上が導入件数となっています。どのような介護ロボットがあるのかなどは、これまでの開発実績なども含めて、経産省と連携した中でホームページも丁寧に情報が纏められています。
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また、障害福祉分野へのロボット導入と言うことで、前述の重点分野のロボットを障害者支援施設、グループホームなどに導入する際には、210万円~120万円の補助がされるようです。
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そして、完全に忘れていましたが、厚生労働省という名前の通り、介護や医療に限らず、広く「労働」に関してもロボットの取り組みがあります。
デジタル技術に対応した訓練用機械ということで、職業能力開発大学校や職業能力開発促進センターに協働ロボットシステムやドローンが導入されることです。現場を支える人材が増えることは良いことですね!
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今回は、ユーザーとなる農水省、厚労省の取り組みを調べてみました。開発はもちろんのこと、現場への導入促進、そして、現場での効果検証に関して重点的に行っているようにに感じます。特に、効果検証においては、どのような場合は効果があるのか(ないのか)という知見は非常に有用になるので、是非結果の開示も含めて、取り組みが進むと良いな~と思います。
次回、ラストとして、他の省庁を調べて見たいと思います。
では、また来週〜。
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安藤健(@takecando)
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