カレーとシンセサイザーの店「サルタナ」に行ってきました
「カレーとシンセサイザー」というニッチすぎるコンセプトの店「サルタナ」が期間限定で開業したと聞きつけ、これはおもしろそうだぞと直感したのでさっそく行ってきました。
場所は門前仲町駅のほど近く。
コロナ禍で営業を休止しているBAR「BIGHORN」のフロアを間借りして営業されています。
キーボーディスト仲間のぴょんぴょこさんと現地で待ち合わせし、一緒に入店しました。
お店に入ると、トップ画像の 「おしゃべりシンセ」Speak & Spell がロボットボイスで出迎えてくれます。人感センサーを設置し、人が来たときに動く仕組みになっているそうです。
店内には各席に1台シンセが置かれており、さながら博物館のような光景が広がっています。空いている席から、触りたいシンセのある席を選んで座ることができます。
スピーカーは付いていないので、イヤホンやヘッドホンを持参する必要があります。
入り口にシンセのラインナップの説明があり、これを見て気になるシンセを選ぶことができます。往年の銘機(の復刻版)から、比較的新しいモデルまで、多彩な顔ぶれが取り揃えてあります。
私は「教科書で見た!」的な「銘機」に触れてみたかったので、まずは Behringer PRO-1 (Prophet-5の廉価版復刻品)と、KORG ARP-ODYSSEYの置いてある席を選びました。
まずはカレーを楽しむ
「カレーとシンセサイザーの店」なので、カレーを楽しむことを忘れてはいけません。食べ物メニューはシンプルに「(今日作った)そこそこのチキンカレー」と「一晩寝かせたチキンカレー」の2品です。今回は前者を選びました。
カレーはスパイスの刺激は控えめに、トマトの風味がよく効いた、家庭料理のような優しい味わいに仕上がっていました。毎日食べても飽きない味です。「そこそこの」と謙遜してありますが、しっかり美味しいカレーでしたよ。ボリュームも十分です。
よくあるインドカレー屋のような、濃くて刺激的な「非日常の」味わいではないので、その手のカレーを期待すると物足りないと感じる方もいるかもしれません。
しかし、店主はこのような「肩肘張らないカレー」を作ることにこだわりを持って営業されているようです。店主もnoteに投稿されているので、チェックしてみてください。
モクテルを楽しむ
「サルタナ」には「カレーとシンセサイザー」に加えてもう一つのウリがあります。「モクテル」です。
「モクテル」とは、"mock(似せた)" と "cocktail(カクテル)" を組み合わせた、ノンアルコールカクテルの新しい呼び方。フルーティーでおしゃれなモクテルが今、ロンドンで流行しているそうです。
私は、お酒の味は好きなものが多いですが、飲める量は少ないし、酒に酔っても辛いだけで、楽しいという感覚がないです。そのため、ノンアルコールドリンクの選択肢を広げようという活動に以前から注目しています。
こうした経緯もあり、モクテルにはかなり期待していました。
頼んでみたのはこちらのモクテル「ベリーニ」。
ノンアルコールスパーリングワインに、「桃のジュース」「ざくろのシロップ」をブレンドしたモクテルです。
酸味と甘味のバランスが絶妙で、フルーティでありながら、ジュースにはない醸造による深みがしっかりと感じられ、満足できる味でした。
お酒を飲めない人でも、お酒と同じように多彩で深みのある味わいを楽しめるモクテル。コロナ禍であっても、モクテルなら全く問題なく提供できます。今後、こうしたドリンクがどんどん広がっていくことに期待したいですね。
シンセサイザーを楽しむ!
さて、前置きが長くなりました。
カレーを食べ終わったら、いよいよシンセで音作りして遊びます!
目の前には大量のつまみやスイッチのついたマシーン。初めて触れる人は尻込みしてしまいそうですが、テキトーにあちこち回しても壊れることはないです。
臆せず目に入ったつまみをいじっては鍵盤を叩き、音の変化を楽しむだけでもそこそこ楽しめるでしょう。
シンセサイザーは機種によってつまみの配置は違いますが、ベースとなる仕組みはどれも同じです。意外とシンプルな仕組みで理解するのは難しくないし、ひとたび理解すればどんなシンセにも応用できるんですよ。
こんな、見ただけで逃げ出したくなるようなシンセにも…です!!
その「ベースとなる仕組み」についての丁寧な解説が全席に用意されており、初めての人でも理解して触れられるよう工夫されています。
下に映っている腕は同行者のぴょんぴょこさんです。私がPRO-1を触っている間、ARP-ODYSSEYに触っています。
ちなみに私のアナログシンセへの理解度について説明すると、基本的な仕組みは理解していますが、実戦レベルでは使ったことがありません。
デジタルシンセしか持っておらず、PCM音源(生楽器などを録音したもの)を重ねたりエディットしたり…はできますが、アナログシンセで0からピアノの音を作るような芸当はできないです。
そんな私にも、PRO-1はつまみの配置などがとてもオーソドックスで、理解しやすく、触っていて楽しかったです。
ピアノの音を作ろうとチャレンジしてみましたが、エンベロープをピアノと同じパターンにするのが精一杯で、音色までは近づけられませんでした。残念。
続いてぴょんさんと交代し、ARP-ODYSSEYにチャレンジしてみました。
PRO-1とはだいぶ異なり、私の知っている「オーソドックスな」配置とはずれていたため、理解するのに少し苦労しました。
エンベロープがADSRとARの2種類用意されていたり、波形の選択をするスイッチが「VCO1」「VCO2」のエリアではなく、ミキサーのところに用意されていたり…。
オリジナルの機種の発売は1972年。シンセサイザーの黎明期で、当時は配置が各社で統一されていなかったんでしょうね。
しかしベースとなる仕組みは同じなので、触っているうちに理解ができ、比較的思い通りに音がいじれるようになりました。
そうしているうちに他の席が空いてきたので、店主に他の席の機種も触ってよいか尋ねたところ、快諾してもらえました。ありがたい。
Moogの伝統を受け継ぐ Subsequent-25 や、モダンなアナログシンセであるKORG monologueに触れ、時間を忘れて楽しみました。
本当に時間を忘れていて、気がつくと1時間半以上が経過していました。このあたりでお暇することに。
脳の普段使っていない回路が刺激されているようで、とても楽しい時間を過ごすことができました。
感想まとめ
以前も話題にしたことがありますが、80 ~ 90年代のシンセブームを経験せずにキーボードを始めた人の多くは、デジタルシンセしか使ったことがないでしょう。私もその一人です。1台でほとんどのことをこなせて、お金も場所も取らず便利ですからね。
そんなデジタルシンセ時代でも、アナログシンセを愛好し続ける人が少なからずいることに以前から興味を持っていました。彼らがハマっている「沼」とはどんなものだろうと。
その沼の一端を今回感じることができたかというと…もちろん、YESです。
今までにもアナログシンセを模したソフトシンセで遊んでみたことはありますが、マウスクリックでポチポチとつまみを動かすのに比べて、本物のつまみを動かすほうが圧倒的に楽しいですね。試行錯誤のサイクルをより素早く回せるんです。
今回サルタナを訪ねて特によかったと感じたのは、こんなに長時間好きにシンセをいじらせてもらえる場所は他にないだろうということです。
アナログシンセは、つまみのいじり方によって無限に近いパターンの音を生み出せます。そして、自分の求める音を探し出すためには、まとまった時間を確保して試行錯誤する必要があります。
店頭やセミナーで少し触っただけでは、時間は限られており、少ないパターンしか試せません。一方でサルタナは、席が空いている限りは1時間以上シンセと向き合い続けることも歓迎してくれる雰囲気です。
アナログシンセの愛好者はもちろんのこと、これからアナログシンセに触れてみたい、と意気込むデジタルシンセユーザーや、特に音楽はやっていないが、知らない世界に触れてみたい、という人にとってもうってつけの場所なのではないでしょうか。
今回は2人で行きましたが、結局は各自で黙々とシンセをいじっており、1時間半以上いたわりには話した時間は少なかったです。
あまり複数人で行く意味はなさそうです。行くなら、ヘッドホンの分岐アダプタを持っていきたいですね。
サルタナの今後について
さてサルタナですが、緊急事態宣言が明けたことに伴うBIGHORNの営業再開により、10/10が最後の営業日になるそうです。なんと明日で最後です。
しかし諦めるのはまだ早い。
もともと高円寺で正式出店するつもりだったそうで、着々と準備を進められているようです。期待して待ちましょう。
私も今回は「沼の一端を感じる」というところで終わってしまい、「自分の求める音を追求する」というところまでは、力及ばずでした。
いつかのブラックフライデーに買ったシンセ学習ソフト「Syntorial」が積まれたままになっているので、これでシンセへの習熟度を上げて、高円寺で再チャレンジしたいです。
次はSyntorialのレビューを書くことになるのかも。期待せずにお待ち下さい!