ブドウ畑でワインを飲もう 前編
日本ワインの評価が近年上がっているらしい。といっても、「日本ワイン」なる名称が公式に使われるようになったのは、2018年の通称「ワイン法」施行以後の話である。それまでは、どんなものであれ日本産ワインでしかなく、評価の上りようもなかった。
世界でもトップの激ウマ果実の産地である日本で、果実であるブドウを用いるワインがそれほど評価されていなかったことがむしろ不可解でならない。140年前の明治時代からワイン造りが始まっていたのにも関わらず、である。
逆に言えば、日本のワインはまさにこれから、ではないだろうか。ジャパニーズウイスキーが2010年代に爆発的に評価が高まったように、2030年になると日本ワインが爆発的に評価されても不思議ではない。何しろ山崎25年は価格が10年で10倍以上値上がりしているという。ハイレベルな日本ワインといっても、2021年だと現在5000円そこそこで取引されているが、これが2030年には5万円になっていても全く不思議ではないのである。
そんな時代に青年会議所時代の仲間が新たにワイン造りの挑戦を始めたらしい。庭勝也氏である。彼は、私が会頭を務めた2019年に青年会議所の東北地区会長を務めていた、八戸の2019年に青年会議所の仲間5人で、「自分の会社じゃできない、まちづくりができる会社」を作ろうということで会社を始めたらしい。なのになぜか、ブドウ畑を作り、ワインを作っているらしい。私も常々いつかは畑を作りたいと思っていたのでうらやましいことこの上ない。しかし、ワイン造りとなると容易なことではない。どうしてなのだろうか。
とりあえず、幸運にも2本送っていただいたのでありがたく頂くことにした。
一本目は、スチューベンというブドウから作られた白ワイン。スチューベンは青森で良く作られている生食用のブドウである。何と青森が生産量の8割を占めるという。生だととにかくあまーい、すっぱーいという言葉が出てしまう個性のはっきりしたブドウである。ちょっと武骨と言ってもいい。これが、白ワインになるとどうなるかといえば、素敵な香りとうまみの、すごく上品なワインに仕上がっている。食事と一緒に食べるのにちょうど良く、スルスル入る。妻と一緒にあっという間に1本開けてしまった。
二本目は、キャンベル・アーリーというブドウから作られた赤ワイン。こちらは残念ながら私は生で食べた記憶はないのだが、1897年から日本で育てられている古い品種である。「やや小粒ですが、甘みと酸味が調和した深みのある味わいです」とのことである。グラスに注ぐと色がとても薄い。まるでロゼワインのようであるが、香りは赤ワインのそれである。口に含むとベリー系の味がして、不思議な、でも嫌いじゃない後味(この理由は後で分かる)がして、すっと消える。赤ワインらしくない、らしくないけど、飲み進めるとこれはこれでありなんじゃないかという気がしてくる。妻は赤ワインだという思い込みを外すと美味しい、と言う。確かに、ワインはかくあるべしという生半可な知ったかぶりをぶっ壊してくれるインパクトがある。
長くなったので後編に続く