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マスミ・ロスタード1月のマスタークラスを振り返る


今年1月にヴィオリストのマスミ・ロスタードさんが来日。「表参道クラシックスペース」にてマスタークラスを開催。音大生、プロ・アマチュアのヴィオラ奏者・指導者等が個人レッスンを受け、最終日には身体の使い方を見直すグループレッスンが実施されました。
2日間にわたる一連のレッスンを今一度、ロスタードさんに振り返っていただきました。

期間中に同会場で行われたコンサートにて共演したピアニストのマルコファティケンティ(右)と

プロフィール

Masumi Rostad(ヴィオラ奏者):2001〜2017年、パシフィカ・クァルテットのメンバーとして精力的に活動。2017年、ニューヨークの名門「ロチェスター大学イーストマン音楽学校」のヴィオラ科及び室内楽科の准教授に着任。これまでに、イリノイ大学、シカゴ大学、トロント大学、ノースウェスタン大学ビーネンオンが金に於いて教職を歴任。インディアナ大学にてヴィオラ科、室内楽科の教授も務めた。ジュリアード音楽院にて伝統的なヴィオラ奏者で教育者でもあるカレン・タトルに師事し、ティーチング。アシスタントにも任命された。アメリカで研鑽を積むクァルテット・インテグラにもマスタークラスにて指導。使用楽器は1619年クレモナ製「アマティ」。

https://www.youtube.com/@masumirostad

 

広い空間を意識した練習を


Q:日本でのレッスンはいかがでしたか?

ロスタード:日本のヴィオラ奏者の皆さんへの指導をとても楽しむことができました。

私が特にヴィオラという楽器について気に入っていることのひとつは、「これがヴィオラの音」という明確な定義がないことです。

ヴィオラはヴァイオリンのように楽器本体のサイズが定まっておらず、大きなサイズのヴィオラもあれば小さなサイズのヴィオラもある。その大きさによって音もかなり変わるのです! 1月の滞在期間中、レッスンを通じてさまざまなタイプのヴィオラの音を聴くことができたのも私にとってとても有意義でした。

レッスンのことを振り返り、今一度生徒さんたちへアドバイスするとすれば、そのとき置かれているさまざまな状況に強制されるのではなく、自分なりに想像力を働かせて、より広い空間での音作りの練習をすることです。つまりは、狭い部屋で練習していたとしても、広い空間にいるかのように弾く、ということです。

生徒さん方の演奏を聴いていると、狭い練習室が音の概念に影響を与えてしまっているように感じたのです。レッスンを受けてくださった生徒さん方に限らず、日本のヴィオラ奏者の皆さんは、日頃の練習において、もっとコンサートホールでの音作りをイメージして取り組む必要があるかもしれません。
 

 演奏は身体の芯(軸)を意識

Q:グループレッスンでは姿勢や演奏フォームのことを取り上げました。特に身体の軸について重点的に話されていましたね。

ロスタード:私たちはヴィオラを演奏するとき、全身を使って弾きます。弦楽器は、指や手首、手だけにテクニックが集中しがちですが、特に豊かで深みのある音色を出す必要があるヴィオラ奏者にとっては、身体の芯(軸)を意識し、演奏する方法について学ぶ必要があるのです。

受講生たちに筋の通った美しいフォームを示す

Q:レッスンの中で、「地に脚を据えて力・軸を感じる感覚はクロスカントリーで得た」というお話をされていました。「楽器演奏はスポーツである」とも。

ロスタード:屋内外での「スポーツ・トレーニング」とヴィオラ奏法の「課題の解決」とを並行して考えることは、私にとって効率性を高めるためにとても有効で重要なことなのです。

私のジュリアード音楽院時代の恩師であるカレン・タトルは、ヴィオラ奏者の感情や、演奏中の身体への注意の払い方、神経の使い方など、心と身体の作用に重きを置いていました。

そのような師のもとで学んだこともあり、私自身も演奏家としての人生において、自分の身体がどのように機能するかを理解し、それを効果的に使うことはとても重要なことだと考えています。そもそも、そうしたことに考えずに弾いていても、思うような音は出せないと思います。最悪の場合、身体を壊してしまうかもしれません。

【演奏会情報】

◎Chamber Music in Oklahoma (ミロ・クァルテットと共演)
10月27日 16:00
会場: Christ the King Catholic Church 8005 Dorset Drive
Oklahoma City, Oklahoma 7312
https://miroquartet.com/shows,Chamber Music in Oklahoma

◎キューバ・ハバナ CAYO String Week festival
10月14日〜 19日
キューバ・ハバナで米国とキューバ両国の弦楽器を学ぶ若い参加者の指導と演奏活動
キューバのストリングウィーク — CAYO (New) (cayomusic.org)
 
◎ミロ・クァルテットとのクインテット
10月28日19:30テキサス大学オースティン校バトラー音楽学校
https://butlerschoolofmusic.thundertix.com/events/232884
 
◎音楽祭  〈Le Piano Symphonique〉に出演
2025年1月13〜18日スイス・ルツェルン
エフゲニー・キーシン、コペルマン四重奏団(Kopelman Quartet)と共演
Le Piano Symphonique 2025 - Luzerner Sinfonieorchester
 
◎イーストマン音楽院コンサート
2025年2月 、イーストマン音楽院にてヴィオラ協奏曲が予定されている
 Eastman Concerts and Events Calendar – Eastman School of Music (rochester.edu)
 
◎アリゾナ州 ツーソン・ウィンターフェスティバル(Tucson Winter Festival)
2025年3月2〜9日
 Festival 2025 - Arizona Friends of Chamber Music (arizonachambermusic.org)
 
◎ニューハンプシャー州 Ashuelot Concerts (ピアノ四重奏)
2025年3月14日、16日 
Events from March 14, 2025 – June 8, 2025 – Ashuelot Concerts 

表参道クラシックスペース

会場となった「表参道クラシックスペース」の情報はこちらから。ヴィオラの他にも、ピアノ、ヴァイオリン、チェロなどのマスタークラスや、ソルフェージュ、楽典などの魅力的な講座が行われています!
https://omotesando-musicstudio.com/

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