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かえる


バーン! バーン! バーン!

 青空に打ち上げられた空砲が鳴り響きます。
 いつもは何もない森の野原に大きなテントがはられ、やきそばやあんず飴の屋台が出ています。ひとが沢山集まりとても賑やかです。 そこにモール(まる顔の男の子)とニョ(三つ編みの女の子)がやってきました。「わー! すごいねぇ!!」とニョが声を上げました。「うん」とモールはうなずきました。

「すごいよすごいよ~~」テントの入口に立っている男がそう言い続けてひとをを呼び込んでいます。
「入ってみようか」とモールが言いました。「うん」とニョはうなずきました。

 モールとニョがテントに入るといくつかの舞台や売店のようなものが目に入りました。上下の階に続く階段もあるようです。 

 モールとニョはまず売店のようなところへ行ってみました。そこには光る石が並べてありました。店員のような人物が「きれいでしょ~きれいでしょ~」と言ってきました。ニョは少し見惚れているようでした。

 次にモールとニョは舞台に行ってみることにしました。歩いていると何かがバサバサッと飛び出してきました。それは首の3つある大きな鳥…かと思いきや、首輪と鎖でまとめられた3羽の大きめの鳥でした。鳥たちは何度も何度も羽ばたきましたが飛び立つことはできませんでした。モールとニョが通り過ぎてからも、バサバサッという羽の音とガチャガチャッという鎖の音が響いていました。

 舞台では曲芸のようなものが行われていて、舞台上のひとたちが剣を飲みこんだり、火を吹いたりしていました。 何か芸が行われると、まばらにいる観客が「おー」と言って軽くパチパチと拍手しました。

 モールとニョはまた移動しようと、そこを去りました。
 歩きながらモールは『何がすごいのかよくわからないな…』と思いました。

 モールとニョは階段の柵の前で立ち止まり、下の階を覗き込みました。
「あそこにひとが沢山集まってるねぇ」ニョが言いました。
「うん」
「行ってみようか」
「うん」

 モールとニョは階段で下の階に降りて行きました。

 

 ガヤガヤとした人だかりの先に行くと、そこには信じられないくらい大きなかえるがいました。巨大かえるは従業員らしき男に抱きかかえられてダランとしていました。

「大きいねぇ」「すごく大きいねぇ」モールとニョが驚きながら言い合っていると、かえるを抱えた従業員がこちらに顔を向けて何も見ていないような目で見てきました。

 
 そして……ブワンッと抱えていた巨大かえをこちらに向かって放り投げました。
「ひぃぃいいい!!!」「うわぁ!!」モールとニョは叫びました。

 ビッッタ~~~~~~ン!!!!!!
 巨大かえるが床に叩きつけられました。

 仰向けになった巨大かえるは天上を見上げながらフーッフーッフーッと荒い息を吐いていますが、身体を起こしません。
『手足の腱が切られているのか…』
 モールは引きつった顔で巨大かえるを見つめていました。

 モールとニョはテントから出てきました。「大丈夫…?」顔色を悪くしたモールの腕をつかみ、ニョが声をかけます。

 モールはいろいろと考えた様子でますます顔色が悪くなっていきました。

 テントから少し離れるとモールの顔色はよくなってきました。するとモールとニョはそこで井戸を見つけました。「古い井戸だねぇ」ニョが言いました。 モールとニョは井戸の中を覗き込みました。

 するとそこにはまだ尻尾の残っている子供のかえるが大量に貼りついていました。

「たくさんいるねぇ、飼われてるのかな」ニョが言いました。」

  モールはじぃーっと井戸の中を見ていました。

 そしておもむろに手を伸ばし、一匹のかえるをむんずと摑み、井戸の中から取り出しました。

「あ! そんなことしたらたいへんなことになるよ!!」ニョは咄嗟に叫びました。


 モールはかまわず摑んだかえるをポイッと地面に放ちました。

 かえるは ぴょん ぴょん ぴょーん とどこかへ跳ねていきました。
 モールとニョは黙ってその様子を見ていました。


 かえるが見えなくなるとモールはかえるを摑んだ手が気になり手のひらをジッと見ました。

そしてモールとニョは協力しあって側にあったポンプで水を出して、手を洗いました。

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