08．疫学研究に触れてみよう！：超ECO祭2024 訪問記 08
同志社大学 商学部 瓜生原葉子（以下敬称略）研究室（以下瓜生原ゼミ）は、2024年11月09、10日にイオンモールKYOTOで「超ECO祭2024」を催した。なお、私は10日に参加した（[1]）。
疫学とは、「明確に規定された人間集団の中で出現する健康関連のいろいろな事象の頻度と分布およびそれらに影響を与える要因を明らかにして、健康関連の諸問題に対する有効な対策樹立に役立てるための科学」と定義される（[2]）。
「超ECO祭2024」のブースの1つである「疫学研究に触れてみよう！」で、京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻（以下同専攻）は、最新の研究成果などを紹介した（図08．01，[3]，[4]）。
1．2024年07月10日、片岡祥子 医学研究科客員研究員、三品浩基 同客員研究員、片岡裕貴 同客員研究員、高橋由光 同准教授、中山健夫 同教授、野澤祥子 東京大学准教授らは、内閣府が公開した2017年から2021年の日本全国の認可保育施設のデータ等を使用したシリアル クロス セクショナル スタディと中断時系列分析研究を行ったことを発表した。その結果、日本の認可保育施設における子供の重傷の発生率が2017年から2021年にかけて2.0倍になっていることが明らかになった。なお、COVID-19によるパンデミックの影響は明らかではなかった。本研究の結果は、認可保育施設における子供の重傷の現状を明らかにし、具体的な対策を講じるための基礎資料となる。しかし、認可外保育施設については検証できなかった。今後は、認可外保育施設も含めた継続的なモニタリングや安全性向上に向けた取り組みが求められる（[5]，[6]，[7]）。
2．胸骨圧迫のみの蘇生法でも、人工呼吸を行う心肺蘇生と同等あるいはそれ以上の効果があることが、日本をはじめ、いくつかの大規模臨床研究で報告されている（[8]）。
この結果に基づいて、京都大学では、2015年度より、医学研究科 人間健康科学系専攻が中心となり、国際高等教育院所掌のもと、医学研究科の予防医療学分野と初期診療・救急医学分野および人間・環境学研究科と連携を図り、新入生を対象とした、胸骨圧迫と自動体外式除細動器（automated external defibrillator：AED）の使い方を学ぶ救命救急講習を行っている（[9]）。
3．健康情報なっとくん（[10]）：健康の読み解き方に関する非医療者向け学習ツールである。ヘルス リテラシーを高めるためには、お勧めである。
4．楽しく学ぶ医療統計入門 宇宙怪人しまりす シリーズ 第1話4月：あっちの星から来ました 「率と比と割合」（[11]）など：岩波科学ライブラリー114「宇宙怪人しまりす 医療統計を学ぶ」（発行 株式会社岩波書店）の動画版である。
同専攻や「疫学研究に触れてみよう！」から、公衆衛生・疫学、ならびに、それらに関する研究は非常で地味な学問や研究である一方、人々、社会、教育、および、文化を守り、国家の強さと豊かさを守るために存在することを痛感した。
参考文献
[1] 学校法人 同志社 同志社大学 商学部 瓜生原葉子研究室 医療のエコ活動研究会．“超ECO祭2024”．同志社大学 商学部 瓜生原葉子研究室 医療のエコ活動 ホームページ．https://www.medieco.net/%E8%B6%85eco%E7%A5%AD2024，（参照2025年01月01日）．
[2] 一般社団法人 日本疫学会．“疫学（えきがく）”．疫学用語の基礎知識 トップページ．索引．https://jeaweb.jp/glossary/glossary001.html，（参照2025年01月01日）．
[3] 学校法人 同志社 同志社大学 商学部 瓜生原葉子研究室 医療のエコ活動研究会．“ブース紹介”．同志社大学 商学部 瓜生原葉子研究室 医療のエコ活動 ホームページ．超ECO祭2024．https://www.medieco.net/s-projects-side-by-side，（参照2025年01月01日）．
[4] 国立大学法人 京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻．“京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 ホームページ”．https://sph.med.kyoto-u.ac.jp/，（参照2025年01月01日）．
[5] 国立大学法人 京都大学．“日本の認可保育施設の子供の重傷発生率は増加傾向”．京都大学 ホームページ．最新の研究成果を知る．2024年07月10日．https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2024-07-10-0，（参照2025年01月01日）．
[6] こども家庭庁．“令和5年（令和5年1月1日～令和5年12月31日）（PDF／554KB）”．こども家庭庁 ホームページ．政策．こどもの安全．教育・保育施設等における重大事故を防ぐための政府の取組．教育・保育施設等における事故報告集計．https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/68cc3ca7-8946-43e9-939c-5ec2113f1512/832f7db8/20240801_policies_child-safety_effort_shukei_09.pdf，（参照2025年01月01日）．
[7] 株式会社 読売新聞グループ本社．“保育施設の重大事故2772件、8年連続で過去最多を更新…骨折が8割・死亡は9件”．読売新聞オンライン トップページ．社会．2024年08月03日．https://www.yomiuri.co.jp/national/20240802-OYT1T50298/，（参照2025年01月01日）．
[8] 一般社団法人 日本循環器学会．“コール&プッシュ 誰でもできる胸骨圧迫＋AEDの蘇生法 ホームページ”． https://www.j-circ.or.jp/cpr/index.html，（参照2025年01月01日）．
[9] 国立大学法人 京都大学．“2024年度 新入生向け救命救急講習を実施しました”．京都大学 ホームページ．NEWS．2024年04月26日．https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2024-04-26，（参照2025年01月01日）．
[10] 健康情報なっとくん事務局（国立大学法人 京都大学 環境安全保健機構 産業厚生部門内）．“健康情報なっとくん ホームページ”．https://nattokun.jp/，（参照2025年01月01日）．
[11] 中外製薬株式会社．“楽しく学ぶ医療統計入門 宇宙怪人しまりす 第1話4月：あっちの星から来ました 「率と比と割合」”．中外製薬 Chugai Pharmaceutical ホームページ．動画．2022年02月07日．https://www.youtube.com/watch?v=ehxkYfXAIOA&list=PLMqq6ilm0jpefMY5T1OsI-2_YxzM3CI8v，（参照2025年01月01日）．