東南アジア・南アジアにおける糖尿病事情
私は国際糖尿病支援基金で、東南アジア・南アジアにおける糖尿病関連記事を翻訳している。
01.01.株式会社 創新社.“2014年モルディブ共和国の青少年糖尿病キャンプについて(IFLからのレポート)”.糖尿病ネットワーク トップページ.国際糖尿病支援基金.2015年06月.https://dm-net.co.jp/idaf/act/update/2014ifl.php,(参照2023年11月29日).
インスリン・フォー・ライフ(IFL、オーストラリア)からの「2014年ディアブ モルディブズ国際青少年キャンプ」(モルディブ共和国)に関するレポートの翻訳記事で、糖尿病に関する初の拙翻訳記事である。
01.02.株式会社 創新社.“2019年ドリーム・トラスト(インド)の活動報告”.糖尿病ネットワーク トップページ.国際糖尿病支援基金.2020年02月.https://dm-net.co.jp/idaf/act/update/2019-1.php,(参照2023年11月29日).
「2019年ドリーム・トラストの世界糖尿病デー」と「ドリーム・トラストが支援する1型糖尿病患者の近況」を紹介している。
01.03.株式会社 創新社.“2023年ドリーム・トラスト(インド)からの近況報告”.糖尿病ネットワーク トップページ.国際糖尿病支援基金.2023年12月.https://dm-net.co.jp/idaf/act/update/2023-1.php,(参照2023年12月20日).
「ドリーム・トラスト・チームとアンナ・ウーリッヒ(以下敬称略)達によるドリーム・トラストに登録されている1型糖尿病の子どもたちの家庭訪問」と「インドでの11月14日の世界糖尿病デー」を紹介している。
01.04.株式会社 創新社.“2024年インスリン・フォー・ライフ(IFL)オーストラリアの近況報告”.糖尿病ネットワーク トップページ.国際糖尿病支援基金.更新情報.2024年08月19日.https://dm-net.co.jp/idaf/act/update/2024ifl.php,(参照2024年08月19日).
インスリン・フォー・ライフ(IFL)オーストラリアのニール・ドナランによる近況報告で、フィリピン共和国・ドゥマゲテ市でのドゥマゲテ市刑務所の受刑者と刑務官に対する無料の血液検査プログラムが紹介されている。また、ドゥマゲテ市地域検診プログラムやシキホール市刑務所での無料の血液検査プログラムも紹介されている。
01.05.株式会社 創新社.“2024年フィリピン・セブ市の支援活動について(IFLレポート)”.糖尿病ネットワーク トップページ.国際糖尿病支援基金.更新情報.2024年09月16日.https://dm-net.co.jp/idaf/act/update/2024ifl-1.php,(参照2024年09月30日).
インスリン・フォー・ライフ(IFL)オーストラリアのスタッフであるジュビー・ホラスカによる近況報告で、フィリピン共和国・セブ市でのIFL主催の糖尿病の血液検査とインスリン配布プログラムが紹介されている。
この拙翻訳を介して、私は東南アジア・南アジアにおける糖尿病事情を知ったが、こうした関連記事を紹介する。
02.01.株式会社 創新社.“発足の経緯 ドリーム・トラストの誕生のきっかけとなった2つのショッキングな出来事”.糖尿病ネットワーク トップページ.国際糖尿病支援基金.DreamTrust(インド)の活動.https://dm-net.co.jp/idaf/support/dt/,(参照2020年11月29日).
中国などの世界の新興市場の中でも、インドは特に所得格差の拡大が目立つ。言い換えれば、インドの富裕層がますます多くの富を蓄える一方で、貧困層は一層貧しくなっている([1])。
また、医療費が家計の1割を占める人口は 8 億人で、基礎的保健サービスを受けられずにいる。ユニセフとWHOのデータによると、約2,000万人の小児が予防接種を受けられていない。予防接種を受けていない小児の大半は、最貧国に暮らしていて、紛争などの影響を受ける地域に偏っている。そのうち半数以上はアフガニスタン、中央アフリカ共和国、チャド、コンゴ民主共和国、エチオピア、ハイチ、イラク、マリ、ニジェール、ナイジェリア、パキスタン、ソマリア、南スーダン、スーダン、シリアおよびイエメンの16カ国で暮らしている。その小児が病気になった場合、救命処置や治療へのアクセスも見込めず、深刻な事態に陥る。ワクチンの多くは、冷蔵庫がないような途上国の環境に対応していないことも大きな問題である([2])。
こうした貧困層にとって、インスリンは非常に高価な医薬品である。
一方、インドでは、社会、文化、および、経済的事情の面で、女性や少女に対する差別が顕著なので、ドリーム・トラストは女性(特に女児)糖尿病(特に1型糖尿病)患者を最優先に支援している。
02.02.特定非営利活動法人 わぴねす.“インドは肥満体国?!その理由に迫る! わたなべ(インドインターン日記 vol.149)”.わぴねす ホームページ.Blog.2019年12月05日.https://wappiness.org/2019/12/05/intern149/,(参照2023年11月29日).
インドに肥満者や糖尿病患者が多い理由は、炭水化物や油脂を多量に含む食事、食事の頻度(朝食、昼食、および、夕食に加えて、毎日2回のティータイム)、食事の時間(夕食の時間は、夜9~10時)、近年のグローバル化によるファーストフードの流通、および、運動をするという習慣があまりないことに由来する。
世の中には「インド料理=健康的」と誤認している人が結構多いが、本場のインド料理は炭水化物や油を多量に含むことをお忘れなく。
02.03.株式会社 創新社.“糖尿病はアジア全域に拡大 2030年に2億人弱に増加”.糖尿病ネットワーク トップページ.ニュース.2012年11月28日.https://dm-net.co.jp/calendar/2012/019385.php,(参照2023年11月29日).
記事の内容は少し古いが、日本を含む西太平洋地区の糖尿病人口は、2030年には1億8,790万人に増加すると予測されている。
糖尿病は、患者自身による自己管理が治療の95%を占める病気とされる。患者や家族は、糖尿病を管理するために適正な知識を知っておく必要があり、そのために糖尿病教育を受けられる機会を設けることが不可欠となる。
しかし現状は、糖尿病教育は西太平洋地区の90%を占める途上国で不足している。ほとんどの糖尿病患者が、さまざまな理由で糖尿病教育を受けられていない。その理由は、費用がかかる、距離が遠すぎる、適切なサービスがない、サービスがあっても知らない、そしておそらく糖尿病教育により得られるメリットも知らされていない、などという。
02.04.一般社団法人 日本スポーツ栄養協会.“南アジアで肥満と肥満関連疾患が急増、現地民の栄養状態、身体活動の状況、エネルギー代謝からわかったこと”.スポーツ栄養Web ホームページ.スポーツ栄養Web.2022年03月03日.https://sndj-web.jp/news/001703.php,(参照2023年11月29日).
南アジア(インド亜大陸)における肥満および肥満関連疾患の有病率は、アジア人の間で最も高いと報告されている。インドでは成人の2型糖尿病患者が毎年180万人ずつ増加しており、このような現象は先住民か移民か、都市部か農村部かにかかわらず認められる。またメタボリックシンドロームは、インドの大都市の人口の約3分の1にみられる。
南アジア人は単に糖尿病にかかりやすいだけでなく、他の民族よりも発症が早く、心血管疾患合併症の罹患率が高い。南アジア人の心血管疾患リスクが高いことは、中性脂肪の上昇とHDL-Cの低下、およびLDL-Cの上昇に関連していることが明らかになっている。
02.05.国立研究開発法人 科学技術振興機構 アジア・太平洋総合研究センター.“貧困層で糖尿病の自覚が弱く、治療が不十分 インド”.Science Portal India ホームページ.インド科学技術ニュース.2023年04月07日.https://spap.jst.go.jp/india/news/230401/topic_ni_07.html,(参照2023年11月29日).
国際人口科学研究所(インド・ムンバイ)の研究チームは、国内の貧困層や教育水準の低い世帯において糖尿病の自覚や治療、コントロールが低いとする調査結果を公表した。科学誌 nature india が03月08日に報告し、研究成果は学術誌 Scientific Reports に掲載された。
研究チームは、インドの36州に居住する年齢15歳以上の207万8,315人を対象にして、糖尿病の有病率や自覚、治療、および、コントロールに関する調査を行った。この調査により、インドの糖尿病患者は、所得の低い州より高い州で多く、また、女性は男性より糖尿病を自覚し、治療に取り組んでいることが判明した。調査の対象者は、2019年から2021年にかけて行われた第5回全国家族健康調査のデータベースに基づいて選ばれた。
02.06.グローリア セブ.“フィリピンの食生活と病気の深い関係”.グローリア セブ ホームページ.フィリピンの社会と文化.https://gloleacebu.com/meals_diseases/,(参照2024年08月19日).
フィリピンでの平均寿命は68歳である。
フィリピンでは、心臓病、糖尿病、および、動脈瘤など不健康な食事と運動不足が原因の非感染性疾患が死因の7割近くを占めている。その理由は、炭水化物、塩、および、油の摂取量が非常に多い一方で、高価な割に満腹感を得られない野菜はほとんど食べられないことに由来する。また、暑い気候ゆえ、フィリピン人は運動を好まないことにも由来する。
02.07.リンクタイズ株式会社.“義足のカスタム量産を実現 糖尿病患者が激増するフィリピンで”.Forbes Japan トップページ.ビジネス.2020年10月23日.https://forbesjapan.com/articles/detail/37597,(参照2024年08月19日).
インスタリム(CEO:徳島泰)は、フィリピンで義肢装具を製作・販売するスタートアップである。3D-CADと3DプリンティングにAIを掛け合わせることで、世界で初めて3Dプリント義足の製造・開発に成功した。
世界では、1億人以上の人が義肢装具を必要としているとされる。だが、実際に手に入れられるのはその10%程度で、およそ9000万人は義肢装具を購入できずにいる。
最大の理由は、価格の高さである。最適な義足の形は人によって異なるため、一般的に国家資格を持つ義肢装具士の手作業が必要になる。そのため量産が難しく、自ずと高額になってしまうのだ。
インスタリムは、テクノロジーをフル活用することで、販売価格を1本あたり4万2200円と従来の10分の1以下に抑えることに成功した。2021年度には製造原価を4000円程度にまで抑え、さらに手ごろな価格にする計画である。
02.08.国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST).“アジアンフードのGI値を知って糖尿病予防 シンガポールの研究者がリスト作成”.Science Portal ASEAN ホームページ.ASEAN科学技術ニュース.2021年05月27日.https://spap.jst.go.jp/asean/news/210504/topic_na_03.html,(参照2024年09月30日).
健康的な食生活を推進するため、シンガポールの研究者らが一般的なアジアンフードを血糖値への影響度順にランク付けした。
血糖値への影響度は、「シンガポール料理>フィリピン料理>インド料理>日本料理>中国料理」である。
参考文献
[1] リンクタイズ株式会社.“拡大するインドの所得格差、首相だけを責められない理由”.Forbes Japan ホームページ.CATEGORY.ビジネス.2018年02月20日.https://forbesjapan.com/articles/detail/19830,(参照2023年11月29日).
[2] gooddo株式会社.“世界の医療事情を比較しよう!国によってどれだけの格差がある?”.gooddo株式会社 ホームページ.健康福祉.2022年12月02日.https://gooddo.jp/magazine/health/3340/,(参照2023年11月29日).
[3] 株式会社 創新社.“日本は世界第6位の糖尿病大国 急増する糖尿病人口”.糖尿病ネットワーク トップページ.ニュース.過去のニュース一覧.2012年.2012年01月09日.https://dm-net.co.jp/calendar/2012/016536.php,(参照2023年11月29日).
[4] 経済産業省.“平成27年度医療技術・サービス拠点化促進事業(医療拠点化促進実証調査事業) インド国における日本式簡易検査サービス及び簡易検査機器のプロモーション拠点化事業報告書 平成28年2月 インド国への日本式予防医療拠点化コンソーシアム”.経済産業省 ホームページ.政策について.政策一覧.ものづくり/情報/流通・サービス.ヘルスケア産業.医療・介護の国際展開.日本の医療技術・サービスの国際展開支援(アウトバウンド).アウトバウンドに関する取組~インド~.https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/27fy_carepro.pdf,(参照2023年11月29日).