「次世代スマート ホスピタル202X 治療」 テルモ編:日本医学会総会2023東京 博覧会 次世代スマート ホスピタル202X 02-03
2023年04月22日、私は東京国際フォーラムを訪れ、一般客として、日本医学会総会 2023 東京 博覧会(以下2023博覧会)に参加した([1])。
「次世代スマート ホスピタル202X」は人生100年時代における次世代のスマート ホスピタルの姿を紹介するものである(1)。
スマート ホスピタルの解説は既に、「展示物から「次世代スマート ホスピタル202X 診察」を振り返る:日本医学会総会2023東京 博覧会 次世代スマート ホスピタル202X 01」で実施済みである。
本記事では主に、2023博覧会におけるテルモ株式会社(以下同社)の展示物を紹介する([2])。
2023博覧会で、同社は主に企業ブースで、血管内治療、糖尿病治療、心筋シート術、新型コロナウイルス感染症、および、輸血医療の5つのカテゴリーに焦点を当てた展示を行った。また、各カテゴリーにまつわるエピソードと共に、カテーテル製品、インスリン ポンプ、心不全治療用の骨格筋芽細胞シート、体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)、および、血液製剤向けの病原体低減化システムなどの提供を通じた同社の貢献について紹介した([3])。
01.血管内治療
企業ブースで、同社は血管内治療を紹介した(図02-03.01.01,[4],[5])。
血管内治療はカテーテルという特殊な細い管を血管内に挿入し、各種の疾患を外科的手術のかわりに低侵襲的に治療する特殊な手技である。主な対象疾患は、血管病変(例.末梢動脈閉塞性疾患、動脈瘤、四肢・顔面動静脈奇形、動静脈瘻、胃静脈瘤、静脈血栓塞栓症)と腫瘍(肝がん、その他の腫瘍)である([6])。
そして、「次世代スマート ホスピタル202X 治療」で、血管内治療(血管内カテーテル治療,図02-03.01.02)を紹介するだけでなく、イントロデューサー シース キット(図02-03.01.03)、ガイド ワイヤー(図02-03.01.04)、末梢血管用ステント(図02-03.01.05)、および、薬剤溶出型冠動脈ステント(図02-03.01.06)を展示した。なお、血管内治療は、バスキュラー インターベンション(冠動脈および下肢動脈のカテーテル治療)とインターベンショナル オンコロジー(カテーテルを介するがん化学療法)を含む(5)。
02.糖尿病治療
企業ブースで、同社は糖尿病治療を紹介した(図02-03.02.01,[7],[8])。
同社は、糖尿病関連商品として、メディセーフ™針(穿刺針,[9])、メディセーフ フィットスマイル™(血糖測定器,[10])、メディセーフ フィット™(血糖測定器,[11])、メディセーフ™ ファインタッチ™ ディスポ(穿刺具・穿刺針,[12])、および、メディセーフ™ ファインタッチ™II(穿刺具,11)を展示した。(図02-03.02.02)。
また、Dexcom G6(持続血糖測定システム(Continuous Glucose Monitoring:CGM),図02-03.02.03,[13])、MEDISAFE WITH(インスリン ポンプ,図02-03.02.04,[14])、ならびに、NANOPASS™ Jr 34G 3 mmとNANOPASS™ 34G 4 mm(インスリン用注射針,図02-03.02.05,[15])も展示した。
いずれも、糖尿病患者にとっては必須な器具類である。
03.心筋シート術
企業ブースで、同社は心筋シート術(細胞移植による心筋再生術)を紹介した(図02-03.03.01,[16],[17])。
同社は、骨格筋芽細胞シート(レプリカ)を展示した。なお、この細胞シートは、標準治療で効果不十分な虚血性心疾患による重症心不全患者に適用される(図02-03.03.02,[18])。
04.新型コロナウイルス感染症
企業ブースで、同社は新型コロナウイルスに対するテルモの取り組みを紹介した([19],[20])。また、同社は体外式膜型人工肺(ECMO)を展示した(図02-03.04.01)。
05.輸血医療
企業ブースで、同社は世界各国、特にアフリカ諸国での献血活動の支援を紹介した(図02-03.05.01,[21],[22])。
06.健康未来EXPO 2019(以下EXPO 2019)での展示物
2019年04月05日、私は健康未来EXPO 2019(以下EXPO 2019,[23])に一般客として参加したが、そこで、同社の歴史を学んだ([24])。
EXPO 2019で、同社は化学療法薬投与システムとして、DewX Eterna®(植込み型薬液注入システム,図02-03.06.01,[25])とケモセーフロック™システム(図02-03.06.02,[26])を展示した。
マイホームぴこ®(自動腹膜透析システム,図02-03.06.03,[27])を展示した。
そして、同社は脳動脈瘤の治療機器として、脳動脈瘤塞栓用コイル(図02-03.06.04,[28])を展示した。同社はニューロバスキュラー事業([29])を展開しているだけでなく、くも膜下出血を防ぐための情報サイトも運営している([30])。
私は同社の展示物などから、同社の最新鋭技術、取り組み、および、歴史を知ることができた。
余談だが、私は「生活習慣病である2型糖尿病、虚血性心疾患、脳卒中、および、腎臓病に決して罹りたくないし、罹らないように節制する」ことを誓っているし、実際そうしている。
また、「がんが進行したら、腹をくくって、化学療法を受ける。しかし、それが効かなかったら、緩和医療を受ける」ことを決めている。
そして、新型コロナウイルス感染症に関しては、「罹ってしまったのなら、それはそれで仕方がない。しかし、極力感染しないように外出時はマスクを着け、帰宅後は手や顔を石鹸で洗浄し、そして、感染しても軽症で済むようワクチン接種を受ける」ことを続けている。
その意味では、私は同社に感謝している。
余談になるが、糖尿病性足病変には、血管障害と神経障害の2つの側面がある。血管障害は、主に動脈硬化による狭窄や閉塞のことである。糖尿病性神経障害には、知覚神経障害による感覚消失や運動神経障害による足部内在筋の萎縮など様々な側面がある。半数以上の糖尿病患者が、やがて下肢の動脈硬化を合併していく。下肢の血行の評価は、皮膚の毛細血管の血流のSPP(Skin Perfusion Pressure:皮膚灌流圧)を測定して評価する方法と造影CTや血管造影などによって下肢の血管の狭窄部位を画像的に評価する方法を組み合わせて行う。一般的に、SPPが40mmHgより大きいと皮膚の傷(潰瘍)は塗り薬で治るが、30mmHgより小さい場合は、血管バイパス術や血管内治療などで血流を回復させる手術が必要と考えられる。また、知覚神経障害があると火傷が重症化したり、細菌感染がおこっても重症化するまで気が付かないで手遅れになったり、運動神経障害による筋の萎縮が起こり、足が変形し、靴擦れや魚の目が治りにくくなったりする。
その治療法は、血管内治療、血管バイパス術、および、歩行用装具の作成である。
重症の糖尿病性足病変に対しては入院での血糖管理を行いながら、感染部位の切開・排膿、壊死部位のデブリードメント、血管内治療などによる血行改善、陰圧閉鎖療法や植皮などの手術を行い、早期の社会復帰を目指す。一方、軽症の糖尿病性足病変に対しては歩行用装具作成や血行改善術を行いながら、重症化を防ぐ([31])。
参考文献
[1] 第31回日本医学会総会2023東京 展示事務局.“第31回日本医学会総会 博覧会 ホームページ”.https://tsunagu-iryo.jp/minna-expo/,(参照2023年07月21日).
[2] テルモ株式会社.“テルモ、日本医学会総会2023東京の博覧会に協賛 企業紹介ブースを出展し、心不全に関する市民公開講座も共催”.テルモ JAPAN ホームページ.ニュースリリース.2023年.2023年02月28日.https://www.terumo.co.jp/newsrelease/detail/20230228/9676,(参照2023年07月21日).
[3] テルモ株式会社.“日本医学会総会 2023東京”.テルモ JAPAN ホームページ.企業情報.https://www.terumo.co.jp/about/isokai2023,(参照2023年07月21日).
[4] テルモ株式会社.“血管内治療”.テルモ JAPAN ホームページ.企業情報.日本医学会総会 2023東京.https://www.terumo.co.jp/about/isokai2023/intervention,(参照2023年07月21日).
[5] テルモ株式会社.“TIS事業(Terumo Interventional Systems)”.テルモ JAPAN ホームページ.企業情報.事業紹介.https://www.terumo.co.jp/business/tis,(参照2023年07月21日).
[6] 認可法人 日本赤十字社 医療センター.“血管内治療センター”.日本赤十字社 医療センター ホームページ.病院について.診療科・部門紹介.センター.https://www.med.jrc.or.jp/hospital/clinic/tabid/251/Default.aspx,(参照2023年07月21日).
[7] テルモ株式会社.“糖尿病治療”.テルモ JAPAN ホームページ.企業情報.日本医学会総会 2023東京.https://www.terumo.co.jp/about/isokai2023/dm,(参照2023年07月21日).
[8] テルモ株式会社.“テルモ糖尿病ケアサイト ホームページ”.https://mds.terumo.co.jp/,(参照2023年07月21日).
[9] テルモ株式会社.“メディセーフ™ ファインタッチ™II・メディセーフ™針”.テルモ糖尿病ケアサイト ホームページ.製品情報.https://mds.terumo.co.jp/user/medisafe-finetouch2.html,(参照2023年07月21日).
[10] テルモ株式会社.“メディセーフ フィットスマイル™”.テルモ糖尿病ケアサイト ホームページ.製品情報.https://mds.terumo.co.jp/user/medisafefitsmile.html,(参照2023年07月21日).
[11] テルモ株式会社.“メディセーフ フィット™”.テルモ糖尿病ケアサイト ホームページ.製品情報.https://mds.terumo.co.jp/user/medisafefit.html,(参照2023年07月21日).
[12] テルモ株式会社.“メディセーフ™ ファインタッチ™ ディスポ”.テルモ糖尿病ケアサイト ホームページ.製品情報.https://mds.terumo.co.jp/user/medisafe-finetouch-dispo.html,(参照2023年07月21日).
[13] テルモ株式会社.“Dexcom G6”.テルモ糖尿病ケアサイト ホームページ.製品情報.https://mds.terumo.co.jp/user/dexcom-g6.html,(参照2023年07月21日).
[14] テルモ株式会社.“MEDISAFE WITH”.テルモ糖尿病ケアサイト ホームページ.製品情報.https://mds.terumo.co.jp/user/medisafewith.html,(参照2023年07月21日).
[15] テルモ株式会社.“NANOPASS™ 34G 4 mm・NANOPASS™ Jr 34G 3 mm”.テルモ糖尿病ケアサイト ホームページ.製品情報.https://mds.terumo.co.jp/user/nanopass.html,(参照2023年07月21日).
[16] テルモ株式会社.“心筋シート術”.テルモ JAPAN ホームページ.企業情報.日本医学会総会 2023東京.https://www.terumo.co.jp/about/isokai2023/sheet,(参照2023年07月21日).
[17] テルモ株式会社.“細胞移植による心筋再生術 心筋シート術 ホームページ”.https://shinkinsheet.terumo.co.jp/,(参照2023年07月21日).
[18] テルモ株式会社.“心筋シート術とは”.細胞移植による心筋再生術 心筋シート術 ホームページ.https://shinkinsheet.terumo.co.jp/heartsheet_treatment.html,(参照2023年07月21日).
[19] テルモ株式会社.“新型コロナウイルス感染症”.テルモ JAPAN ホームページ.企業情報.日本医学会総会 2023東京.https://www.terumo.co.jp/about/isokai2023/covid19,(参照2023年07月21日).
[20] テルモ株式会社.“新型コロナウイルスに対するテルモの取り組み”.テルモ JAPAN ホームページ.企業情報.https://www.terumo.co.jp/covid-19,(参照2023年07月21日).
[21] テルモ株式会社.“輸血医療”.テルモ JAPAN ホームページ.企業情報.日本医学会総会 2023東京.https://www.terumo.co.jp/about/isokai2023/blood-transfusion,(参照2023年07月21日).
[22] テルモ株式会社.“地域社会への貢献”.テルモ JAPAN ホームページ.企業情報.サステナビリティ.https://www.terumo.co.jp/sustainability/society,(参照2023年07月21日).
[23] 日本コンベンションサービス(JCS)株式会社.“4年に一度開催される「健康未来EXPO 2019」は、大盛況の中でフィナーレを迎えました”.JCS トップページ.ニュース.イベント&講演.2019年05月16日.https://www.convention.co.jp/news/detail/contents_type=15&id=541,(参照2023年07月21日).
[24] テルモ株式会社.“テルモ100年の年表”.テルモ JAPAN ホームページ.企業情報.沿革.https://www.terumo.co.jp/about/history/100th/history,(参照2023年07月21日).
[25] テルモ株式会社.“DewX Eterna”.テルモ JAPAN ホームページ.医療関係の皆様.医療関係の皆様向け情報.医療機器製品情報.https://www.terumo.co.jp/medical/equipment/me352.html,(参照2023年07月21日).
[26] テルモ株式会社.“ケモセーフロック”.テルモ JAPAN ホームページ.医療関係の皆様.医療関係の皆様向け情報.ケモセーフロック.https://www.terumo.co.jp/medical/promotion/chemosafelock/top.html,(参照2023年07月21日).
[27] テルモ株式会社.“マイホームぴこ”.テルモ JAPAN ホームページ.医療関係の皆様.医療関係の皆様向け情報.医療機器製品情報.https://www.terumo.co.jp/medical/equipment/me144.html,(参照2023年07月21日).
[28] テルモ株式会社.“医療の挑戦者たち 7 脳動脈瘤の電気血栓法 時計のヒゲゼンマイを、脳動脈瘤(りゅう)に詰めて固める。瘤の破裂を防ぐ奇抜な着想。 ショーン・ムラン”.テルモ JAPAN ホームページ.企業情報.企業広告.医療の挑戦者たち.https://www.terumo.co.jp/story/ad/challengers/07,(参照2023年07月21日).
[29] テルモ株式会社.“ニューロバスキュラー事業(MicroVention)”.テルモ JAPAN ホームページ.企業情報.事業紹介.https://www.terumo.co.jp/business/neurovascular,(参照2023年07月21日).
[30] テルモ株式会社.“くも膜下出血を防ぐための情報サイト ホームページ”.https://www.terumo-kumomakka.jp/,(参照2023年07月21日).
[31] 認可法人 日本赤十字社 医療センター.“糖尿病性足病変”.日本赤十字社 医療センター ホームページ. 当センターで実施している難治性疾患治療.https://www.med.jrc.or.jp/tabid/808/Default.aspx,(参照2023年07月21日).