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1-1.太陽系大航海時代、原始地球と水の来歴:特別展「海 ―生命のみなもと―」見聞録 その01

2023年08月12日、私は国立科学博物館を訪れ、一般客として、特別展「海 ―生命のみなもと―」(以下同展)に参加した([1])。

同展「第1章 海と生命のはじまり 1-1 太陽系大航海時代~「はやぶさ2」探査と小惑星リュウグウ~」では、小惑星リュウグウのカケラが展示された([2]のp.18-19)。

2019年02月22日、小惑星探査機「はやぶさ2」は小惑星リュウグウへのタッチダウンを成功させ、リュウグウ表面の試料を採取した。04月05日、衝突装置によって小惑星に世界初の人工クレーターを生成し、07月11日には2回目のタッチダウンを行い、地下物質の試料を採取した。

2019年11月13日「はやぶさ2」はリュウグウを出発し、2020年12月5日に試料の入ったカプセルを地球に向けて分離、06日にオーストラリアにて回収された(図01.01,[3])。

図01.01.小惑星探査機「はやぶさ2」。

リュウグウの試料には、約2万種以上の有機分子が含まれていた。その中には、アミノ酸、核酸、塩基、カルボン酸、アミンのような水溶性の分子群や炭化水素などのような非水溶性の分子群が含まれていた。また、右型と左型の立体構造を持つアミノ酸は、ほぼ1: 1の等量(ラセミ体)で存在していた。多様な有機分子群が、空間的に不均質に存在しており、小惑星の母天体上で、水などの流体と鉱物との相互作用により、移動・分離・濃集した可能性を読み取れる(図01.02)。

図01.02.小惑星リュウグウのカケラ。

リュウグウは炭素質隕石、特にCIコンドライトと呼ばれるイヴナ型炭素質隕石から主に構成されていることが判明した。その主な構成鉱物は、リュウグウの母天体中で水溶液から析出した二次鉱物である。母天体中の水溶液は、リュウグウに元々あった一次鉱物を変質させ、太陽系が誕生してから約500万年後に、この二次鉱物を沈積させた。その時の温度は、約40℃で圧力は0.06気圧以上だった。その後、今日まで、持ち帰ったリュウグウ試料は100℃以上に加熱されていないと思われる。これらの結果から、リュウグウ試料は、これまで見つかっている隕石を含め、人類が手に入れている天然試料のどれよりも、化学組成的に分化をしていない、最も始原的な特徴を持っているものだと言える([4])。

同展「第1章 海と生命のはじまり 1-1 原始地球と水の来歴」では、イヴナ隕石以外のコンドライト隕石が展示された。

コンドライト隕石には、イヴナ隕石、オルゲイユ隕石、マーチソン隕石、および、アエンデ隕石が含まれる(図01.03,2のp.20-21,[5],[6])。

イヴナ隕石は、1938年にタンザニアに落下したCI 炭素質コンドライトである。イヴナ型炭素質隕石は一部の元素(希ガス、炭素、窒素、リチウムなど)を除き太陽光球と同じ化学組成を示すが、この様な特徴を持つ隕石はイヴナ型炭素質隕石だけである。

オルゲイユ隕石は、1864年にフランス南西部に落下したCI 炭素質コンドライトで、炭素や水に富み、最も始原的な隕石と考えられてきた。

マーチソン隕石は、1969年にオーストラリア南東部に落下したCM炭素質コンドライトで、この隕石から様々な有機化合物が見つかった。

アエンデ隕石は、1969年メキシコに落下したCV炭素質コンドライトで、太陽系最初期に形成された難揮発性包有物(高アルミニウムカルシウム含有物、Calcium-aluminium-rich inclusion:CAI)を多く含む。

図01.03.向かって左から、マーチソン隕石、アエンデ隕石、および、オルゲイユ隕石。

小惑星や隕石は、太陽系の誕生や生命の起源の鍵を握っていることを痛感した([7])。



参考文献

[1] 特殊法人 日本放送協会(NHK),株式会社 NHKプロモーション,株式会社 読売新聞社.“特別展「海 ―生命のみなもと―」 ホームページ”.https://umiten2023.jp/policy.html,(参照2023年11月27日).

[2] 特別展「海 ―生命のみなもと―」公式図録,200 p.

[3] 国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA).“小惑星探査機「はやぶさ2」とは”.JAXA トップページ.事業内容.太陽系と宇宙の起源の解明に向けて.https://www.jaxa.jp/projects/sas/hayabusa2/,(参照2023年11月27日).

[4] 国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA).“小惑星探査機「はやぶさ2」初期分析 化学分析チーム 研究成果の科学誌「Science」論文掲載について”.JAXA トップページ.プレスリリース・記者会見等.2022年(令和04年)06月10日.https://www.jaxa.jp/press/2022/06/20220610-2_j.html,(参照2023年11月27日).

[5] 国立大学法人 北海道大学.“リュウグウ起源天体の水循環が作り出すクロム同位体不均質-小惑星帰還試料の同位体分析における重要な指針を提示-(理学研究院 教授 圦本尚義)(PDF)”.北海道大学 ホームページ.プレスリリース(研究発表).2023年11月09日.https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/231109_pr.pdf,(参照2023年11月27日).

[6] 大阪市立科学館.“【企画展紹介】C型小惑星とC型隕石”.大阪市立科学館 ホームページ.教育普及活動.出版物.月刊うちゅう.2014年度.月刊うちゅう(2014年発行 Vol.31).2014年 10月号(第367号).https://www.sci-museum.jp/wp-content/themes/scimuseum2021/pdf/study/universe/2014/10/201410_12-13.pdf,(参照2023年11月27日).

[7] 国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA).“小惑星は太陽系の原始的な天体だった”.JAXA トップページ.特集.小惑星イトカワの真の姿を明らかに.https://www.jaxa.jp/article/special/itokawa/nakamura_j.html,(参照2023年11月27日).

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