長く、長かったプロ11年目を終えて
7月1日。
三遠ネオフェニックスの新体制発表会見は
早くも2022-23シーズンの波乱を予感させた。
思い返せば
前シーズンも8人の新加入選手を発表。
「チームの刷新」は話題となったが、
結果は10勝48敗で西地区最下位。
描いた青写真通りにはいかなかった。
だからこそ、
今年の再建にかける熱量は高い。
「この現実をまずは受け止めなければならない」
会見は経営陣の力強い言葉に始まり、
昨季を上回る9人の新加入選手と
大野篤史 新ヘッドコーチを筆頭に
大幅に入れ替わるチームスタッフが紹介された。
その中で継続選手は太田敦也、
山内盛久、サーディ・ラベナ、半澤凌太の4人。
(岡田慎吾はプレイングコーチ専任)
皆、昨季の悔しさを
身をもって知っている希少な存在だ。
「這い上がりたい」と本気で願う
彼らの反骨心こそが
変革の大きなスパイスとなるはずだろう。
この記事は
新体制発表会見から遡ること約1ヵ月前。
プロ11年目の戦いを終えた山内を訪ね、
2021-22シーズンの振り返りを
聞いたものである。
"新天地"で拓いた"新境地"
「1年を振り返ると、
どんな言葉が浮かびますか?」
インタビュー冒頭の質問である。
しばらく悩んだ山内は、
ゆっくり噛み締めるように答えた。
キャリアのスタートは2010年。
琉球ゴールデンキングスで練習生から始まり、
信頼を得ながらプロ契約を勝ち取った。
その後はサンロッカーズ渋谷へと渡り、
入れ替わりの激しいプロの世界で
気づけば10年もの月日を数えていた。
その間には「引退」の道を考えたこともある。
▼山内盛久 特集 (2021年11月公開)
そんなベテランの域に入った山内にとって
プロ11年目を迎えた2021-22シーズンは
新たな挑戦の年でもあった。
フレッシュな選手が顔を揃えた昨季の三遠。
これまでは年上の選手が多い環境で
バスケに打ち込んできたが、
「自らの経験を伝え
低迷するチームを上位に引き上げる」
そんな野望を心に宿していた。
しかし、その挑戦が
簡単ではなかったことは冒頭の通り。
「簡単に勝てたら苦労はしない」と
シーズン中にも苦しい心境を打ち明けていた。
だが、もがく中で発見もあったと言う。
大半を過ごした仲間との時間
オフコートキャプテンを務めた
2021-22シーズン。
成績が振るわない中で、
「みんなはどう考えているのか?」
"チームケミストリー"を高める第一歩は
互いをもっと知ることだと考えた。
だから、自ら働きかけた。
そのアクションの1つとして、
かつてないほど仲間との時間を増やしたと言う。
中でも、もっとも多くの時間を過ごしたのが
キャプテンを務めた田渡凌だった。
2人は家も近所であったことから、
体育館への行き帰りはもちろん
練習前の昼食を一緒に取っては
「チームがどうしたら良くなるのか」
膝と膝を突き合わせて語り合った。
良い選手が集まるだけでは勝てない。
それを痛感したシーズン。
だからこそバスケ以前に
「互いの考えや想いを知ること」、
「そこに主体的に取り組めたこと」は
大きな収穫だった。
▼田渡凌 特集 (2022年6月公開)
もがいた前半戦、変われた後半戦
そうしたコート外での試行錯誤は
明らかにコート内にも影響を与えていった。
前半戦よりも後半戦は先発出場が増え、
ポイントガードの山内を中心に
オフェンスが展開されるように。
自身の3Pシュートやアシストの精度も上がった。
チームファーストの意識の中に
より「個」の面積を増やすようになった転機が
渋谷時代を共にプレーした
清水太志郎のヘッドコーチ代行就任だった。
苦しいチーム事情の中で
初めてヘッドコーチ業を引き受けた先輩。
「自分がもっと助けないといけない」
自然にその意識は強くなっていった。
いい加減、「光」を見ていいのかな
「挑戦」を掲げたプロ11年目は
振り返れば、苦い記憶の方が多いかもしれない。
それでも試行錯誤しながら
チームと個人に向き合い続けた日々は
何にも替え難い経験だ。
1年前の夏。
三遠に加入したばかりの山内は
こんな言葉を残している。
「本当にチャンピオンを取りたいです。
この地域をもっともっと盛り上げたいんです」
熱は、熱い方から冷たい方へと伝わっていく。
来たる新シーズン。
復権に燃えるクラブの熱量に負けず劣らず、
どん底を知った男も逆襲に燃えている。
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