(12)軌道修正

夏の予選は昨年負けたチームを含む4チーム総当たりで行われた。
初戦こそみんな緊張していたが、普段から厳しい練習を毎日行い、コミュニケーションを頻繁にとり、毎週目標とにらめっこをしていたチームは昔のチームとはかけ離れた強さだった。
毎日練習後にダッシュをすることで体力面が向上。味方がパスをするとその選手を味方のチームメイトが追い抜いていき、パスコースを増やす。チームが攻めにかける人数が相手の選手よりも多い。サポート体制が整うと、ボールを持った選手は選択肢が増える。そして心に余裕が生まれる。相手ディフェンスはパスコースを気にしながら、ボールを持っている選手と対峙する。当然集中力が散漫になる。よりゴールに結びつくための選択をしやすくなる。そこに加えてピッチ内の選手の声が覆いかぶさるように聞こえてくる波状攻撃。数的優位を常に作れることで相手を圧倒する。得点を重ねれば重ねるほど、相手チームのモチベーションが下がっていく。声が出なくなる。集中が切れ、切り替えが遅くなる。どこかで以前見たことあるような光景だった。蓋を開ければ予選リーグは全勝し、首位通過。こんな圧倒的な予選は初めてだった。夏はまだ終わらない。



竹松「リーグ戦突破!おめでとう!!ここまで本当に大変な思いをして頑張ってくれたみんなのおかげだ。次の決勝トーナメントまで、さらに今までやってきた練習をこなして、次に備えよう!上田キャプテン、何かあるか?」


上田「みんなお疲れ様!まずは予選リーグを全勝で突破できて、一安心しています。新しく目標を立てて、日々の練習に負荷をかけてきたり、対外試合を増やして、格上の社会人のチームと繰り返し試合をすることがいい結果につながったと思います。でもこれから決勝トーナメント。今までの相手とは比べ物にならないチームばかり。このままの進め方でいいのかな。マネージャーはどう思う?」


府中「そうですねー。ここまで順調ですね。今までの練習でチームの力が上がっていることは間違いないんですが、社会人チームに勝つにはどうしたらいいのかなぁ。社会人のチームに勝てなければ、決勝トーナメントに行っても、強豪相手には勝てない、もしくは苦戦を強いられます。今の自分達の力を分析する必要があると思います。勝てない理由を掘り下げた方が良いかと。」


上田「技術的にはかなり練習をこなすことで差が縮まった気がするんだけど。」


佐藤「うちのチームの攻めの大きな課題と思うんだけどさ、セットプレーを生かしきれないと思うんだよね。守備についてはロングシュートを打たれての失点が多い。上にいけばいくほど強いシュートを打つ選手がが多いから、遠目から打たれたら、なかなか反応できない。」


府中「監督、そこを対処する方法はありそうですか?練習メニューでも戦術でも良いので。」 


竹松「そうだな、セットプレーについてはフットサルのセットプレーは参考になるかもしれないな。セットプレーの数が10以上あって一つ一つが緻密だから、相手は分かっていても止められないことも多い。実さにフットサルをすることで技術的にもかなり上手くなるはず。ロングシュートについては対人を鍛えることが最短の方法な気がするんだけどな。対人のディフェンスが強くなれば、当然シュートを打つチャンスは減る。そもそも遠目からはシュートを打てないはず。」


府中「決勝トーナメントまでまだ1ヶ月あるので、目標を少し変更して[決勝トーナメントを勝ち抜くために社会人チームに勝てるようになる]に変更して、具体的な練習メニューに落とし込んで評価して行った方がいいかもしれません。実際にはその先の目標で全国大会出場があるのは言うまでもないですが、より具体的に実現可能な目標をその前段階で短いスパンで刻むことで練習内容が変わると思います。」


上田「そうしたら、攻めはフットサルを通じて①セットプレーの強化②技術の向上をしていく。守りは①引き続きロングシュートをうける②対人強化。当面、中学生への指導の部分を社会人チームとの練習試合に当てて取り組んでいくのはどうかな?みんなどう思う?」

    

一同「賛成!」

    

上田「よし。じゃあ早速役割分担を確認しよう。先生は中学校へ連絡、社会人チームに打診お願いします。鈴木、斎藤、浅見、佐藤はぞれぞのポジションでミーティングしてそれぞれに軌道修正した部分を共有。その後、全体で戦術やシステムの確認。マネージャーは日々のロングシュートの本数と失点のスコアを業務に追加。あと夏場で足を攣る選手が増えているからスポーツドリンクの濃さを調整してほしい。」

    


さて、順調に予選リーグを勝ち進んだサッカー部ですが、このままの練習や戦術でやっていくと勝てないという自覚が出てきました。
そこで目標の軌道修正をしています。
このままの計画で全国大会出場のための練習メニューよりも、少し目先の部分の目標に対しての到達度が低いので少し直近の目標に対し、どのように取り組むかを話し合うことにした結果、新しい取り組みや練習内容の修正、力を入れたいところの頻度を増やすなどしています。
そしてこれは一人で決めているのではなく、みんなに合意形成をしていますね。

僕たちの仕事の中でも居宅サービス計画に対し、現状を確認、評価したときに軌道修正を図る場面に皆さんも遭遇することがあると思います。
なぜ目標達成ができないのか?
目標の現可能性が低いのか、計画自体が理にかなっていないのか。
本人、家族、多職種で話し合い、改めて計画を変更したり、サービス内容、頻度を見直す。一度決めた計画はあくまでその時点での計画です。よって、そのように適宜、軌道修正が必要ということですね。 

さて物語も終盤に差し掛かってきています。次回は最終話[試合終了ははじまり]をお送りいたします。

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