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[note56]違いの発見から生まれる未来-庭師の方と話して感じたこと-

初めて庭師の方とお話したこと

その方は20歳までシンガポールで生活をされ、その後、庭師として多方面で活躍されている。年はほぼ、同じ!(だから以降は彼と呼ばせていただこうかな)。直接は聞いていないが、20年間もシンガポールで生活をしていれば日本語に加えて英語、もしかしたらマレー語なども操れるのかも知れない。そうしたキャリアからなぜ庭師なのだろう?
素朴な疑問があって聞いてみた。

庭師になるためには!?


そもそも庭師になるためにはどうすればいいんだろう?
例えば、「自分の子どもが庭師になりたい!」といった時、説明できないや…と思って調べてみた。改めて自分は職業の幅広さについて知らないことが多い。

庭に関する色々な知識を持ち、その地域の気候や土壌、風土にあった庭作りをし、その後の樹木の手入れなど維持管理をする。特に個人宅の和風の庭を手がけることが多い。庭師になるために特別な資格や学歴は必要なく、実務を通じて、技術や知識、伝統的な手法などを体得していく(もちろん大学や専門学校で造園を学んでいると、就職にはより有利だ)。造園会社に就職したり、個人の庭師に弟子入りすることが多い。高い木に登ったり、セメントを練ったり、大きな石を動かしたりと、力仕事が多いので体力が必要。また扱うのは客の大切な庭なので、相手の意見を聞いたり、アドバイスをしたりと、細かな心配りとコミュニケーションが求められる。庭師に関連する国家資格には造園技能士(1、2、3級)がある。個人の庭など小さいものから、都市公園・緑地公園などの大きいものまで野外空間を快適でゆとりあるものに創りあげるスペシャリストが庭師だ。植物を扱う仕事のため、植物の特性を理解する必要があるのはもちろんのこと、大規模な案件になると土木工学や施工管理法等の知識も必要とされ、環境保全や緑化対策等についても考慮する必要がある。具体的には、花壇を作るだけのものもあれば、自然を再現するために、池や小川をつくり、魚や昆虫などが生息できるようにするものもある。造園の資格には「造園技能士」と「造園施工管理技士」があり、それぞれ受験するためには実務経験が必要。

13歳のハローワーク(ウェブ版)

「ずらす」美しさと勇気


ヨーロッパは重要なものを中心に置いて、そこから派生させていくのが特徴だという。確かにパリは凱旋門を中心に放射状に街並みが作られていた。
しかし、彼曰く、日本はそうではなく、少しだけ中心から「ずらす」ことに美を求める部分があり、そこに惹かれたのだという。もちろん、背景には、日本文化への強い憧れがあり、そこから見出した彼の視点なのだろう。
シンガポールは都市国家であり、良くも悪くも超合理主義的に物事が形成されている。教育もエリート主義的で差別という意味ではなく、階層化されている。上位層に対する教育投資は惜しみなく投入することを最近の研究会で知った。そうした環境であれば、「ずらす」ことは非合理的であり、そこに美を察するという価値観は生まれにくいかもしれない。ところが、彼は日本とシンガポールを比べた時に、その「ずらす」ことの美しさに注目した。

Turning Point


もしかしたら「ずらす」という視点は彼独自のものであり、一般的な表現ではないのかも知れないが、とても興味深い話だった。その感覚、感性が彼にとってのTurning Pointになったのかな。グローバル化が進み、世界と日本を比較し、その価値や良さ、課題を見出すことが当たり前となったが、やはりそこにも自分なりの軸というものが必要なのかも知れない。そうでないと、一般的な比較論に留まってしまうかもしれない。庭園には全く詳しくないが日本には色々なところに庭園がある。
どこが、どのように「ずらされて」いるのだろう?と思って見るち違った庭の楽しみ方を感じられるかもしれない。何か彼から新しい視点を与えてもらった気がする。同時に、自分が好きなもの、憧れるものを自国と他国で比べてみた時、自分なりの強い「愛着」が生まれるのかも知れないと思った。

「ずらす」ことは意外と勇気がいることだと思う。
そこに美しさや価値を感じられなければ、不整合なもの、無秩序なものとして捉えられてしまうこともあるだろう。けれど、彼は「ずらす」美しさに魅了されているようだった。違いを発見するだけでなくて、そこから自分の価値観や大切にしていること、美しいと感じることと擦り合わせた時に自分なりの新たな世界が広がるように感じる。日々、生徒に伝えている「好き・面白い・楽しい」から進路選択や進路探究が始まることを別の視点から捉え直す機会になった気がした。一般的な正解(とされること)や最短距離から少し離れて、「違うことを楽しむ」、これも1つの在り方(Being)ではないかと思う。そこには素晴らしい種が埋まっている気がする。

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