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[note44]つなぐチカラー探求学習の場面から感じたこと-

勤務校の探究活動

勤務校では中学2、3年生を対象に「ゼミナール授業」という形で探究学習を行っています。個々の教員が教科の枠を超えて、自由にゼミの内容を構成し、生徒は希望のゼミを選択する形です。もちろん、第一希望のゼミに入ることができるとは限りません。私のゼミも第一希望で入ってきたという生徒ばかりではないのが現状です。私のゼミは「教育と探求社」が提供するQuest Educatonの中のSocial Changeというプログラムを導入しています。
ゼミの目標は「困っている人を笑顔にするプロジェクト」ですが25名のゼミ生を一人の教員が受け持つことは充実感はあるものの、なかなか大変です。自分自身の経験不足もあります。もっと自分にスキル・視野の展開・発想力があれば、より活性化した議論を促すことができるのになあ…と思うこともあります。もちろん勉強はします。しかし、自分のできることに限界があることも事実です。しかし、それは必ずしも悲観することではありません

ゼミのプロモーションスライドの1枚(Canvaで制作)

Social Changeの難しさ

このプロジェクトの難しさは全てを自分たちから生み出すことが求められる点だと思っています。社会に対する問題意識、その実態に対するリサーチ、自分たちに何ができるか、そしてそれらの問題と自分たちがどのように関係しているのかという視点…本当に多様な思考を求められます。「社会問題を自分ごととして考える」これはしばしばゼミの中で伝えることですが、言うは易し行うは難しです。これほど難しいことはないと思っています

探究におけるタテ×ヨコ×ナナメ

授業においてタテ×ヨコの関係は教師と生徒のイメージです。これ自体も今は違和感がある訳ですが、一先ず従来型の関係としておきます。ヨコの関係は生徒間の学びです。ゼミではレクチャーは最初の15分くらいで、後は生徒達に任せます。5つのグループにちょこちょこ関与しながら、話を聞き、混ぜてもらうのが私のスタンスです。私のゼミでは全てのチームが原則として違う学年の男女で構成されます。その中で先輩・後輩の枠を超えて、学んで欲しいという願いからチーム構成には当初からこだわっています。これが、いわばヨコの関係です。最初はぎこちなくても、次第にチームになると先輩後輩というよりはヨコの関係が構築されてきます。でも、これだけでは正直足りません。5チームの複雑なプロジェクトを自分一人で見て回ることには限界を感じることもあります。だからこそナナメの関係が必要になります。

ナナメの関係

あるチームは全校生徒を対象にヤングケアラーに対する意識調査を行った絵上、ケアラーの支援団体にメールで取材を申し込みました。こうして自分達と直接関わりのない対象との関係を持つことが重要なポイントです。これにより、視野と考え方は大きく変わります。取り組みは「困っている人を笑顔にするプロジェクト」ですが、自分達で勝手に対象(笑顔にしたい人)について解釈すると、問題を見誤ることも多々あります。自分たちが思っていたことと実態は違うことがしばしば起こるからです。そのためにもリサーチは不可欠!そして今回は大学生にアドバイザーとして参加してもらいました。先生でもない、友達でもない、同じ学校の生徒でもない、正にナナメの関係と言えます。最初こそ、緊張感があったようですが、そこは大学生の上手なファシリテーションに乗って、2時間目には雰囲気と議論が明らかに活性化していることが感じられました。外から様子を見ていて、「こんなに雰囲気が変わるんだ」というのが正直な感想です。彼らの力には驚かされました。

各チームの1人ずつ大学生がアドバイザーとして入ります

大学生が持つ現在進行形の学びは生徒に大きな刺激を与えます。終わった後の感想でも、「もっと、こうしたコラボレーションがしたい」という感想が大変多かったのが印象的です。中学生×大学生=化学反応を期待したのですが、想像以上に生徒達には大きな経験になったようです。これは私一人では出来ないこと。コーディネートをしてくれた大学スタッフの方、この日の備えて予習してチームに合流してくれた5名の大学生は場の力を何倍にもしてくれたと思います。やはり探究は一人ではできない!と感じた時間でした。
出来ないというと語弊があるかも知れません。日常的には一人で受け持つので、出来る限りのことはやっています。ですが、タテ×ヨコ×ナナメの関係を上手く構築できた時のエネルギーは探究において欠かすことのできない要素であるように感じました

コラボゼミ終了後の生徒の感想から、そのまま抜粋。とてもポジティブな感想が多い。

私達にできること

探究のエキスパートと呼ばれる先生方がいらっしゃいます。様々なスキルを持ち、生徒を深い学びに誘っている様子は憧れの対象とも言えます。ただ、そうした先生方の話を聞いていると、様々な場面で私がイメージするタテ×ヨコ×ナナメの関係を創り出す工夫をされていることに気付きます。生徒が発信することもあれば、教師が生徒と外部を繋ぐこともあります。つまり、「教師が運営する」という発想ではなことが多いのです。様々な場所や人とリンクさせる行動力、発信力そして外とつながろうとする生徒を信じる力を持っていることが、そうした先生方の本当の力なのかなと思います。不確かな時代に、教師が正解を出すことは益々困難になってきます。だからこそ、多面体のような学びの場を作ることができたら良いなと思った時間でした。
改めて、素晴らしい化学反応を起こしてくれた産業能率大学の皆様には感謝です!!!願わくば、これからもコラボレーションできたら良いなあ!




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