正月読書で感じたり事
あらすじ
一人の男から始まる群像劇。
登場人物それぞれの深い悲しみと信仰と諦観と安らぎを感じされる物語。
登場人物は男女7人。
それぞれの思惑がありインド旅行のツアーに参加する面々が描かれる物語。
亡くした妻の転生先を探す老人。
本当の愛を探す女性。
共感を亡くしたカメラマン夫婦。
インドの生と死に取り憑かれたガイド。
戦争に参加した心の傷が何年経っても忘れられない老人。
自分の信仰を信じた破戒神父。
それぞれの課題にそれぞれがどう向き合うのかの心理描写がテンポ良くかと言って深く心の奥底に響く人生の旅路の物語。
1・印象に残る台詞
世界的な小説を読もうと思い手に取った一冊。
遠藤周作は
『沈黙』
は知っていたが読んだ当時はさっぱり分からずだった。
歳をとり違う作品をと手に取ったのが今回の作品
『深い河』
遠藤周作はクリスチャンとの事は前作の沈黙で分かっていました。
信仰を交えた話は当時の自分には難しすぎました。
しかし、今回の『深い河』は読みやすく引き込まれる情景描写には時間の経つのも忘れるほどだった。
特に印象的な台詞は
「さようなら」心の中で自分に向かって呟いた。
「これで…いい。ぼくの人生は…これでいい」
「馬鹿ね、本当に馬鹿ね、あなたは」
信仰の果てに犬死にの様に倒れて運ばれていく、もう一人の主人公に向かって投げかける言葉。
「馬鹿ね、あなたは」
さよならが二人の関係上とても似合わない寂しい別れの底深い悲しさが伝わる衝撃的な台詞。
2・印象に残った場面
もう一人の主人公が、宗教観から心の中で反芻する思い。
それぞれに己が正しいと信じ、自分たちと違ったものを憎んでいるのだ。
復讐や憎しみは政治の世界だけでなく、宗教の世界でさえ同じだだった。
この世は集団ができると、対立が生じ、争いが作られ、相手を貶めるための謀略が生まれる。
それぞれの底には、それぞれのエゴイズムがあり、そのエゴイズムを糊塗するために、善意だの正しい方向だのと主張していることを実生活を通して分かっていた。
簡単明瞭に諦観にもとれる内容がすんなり入ってくる自分の歳を感じ老けたのかなと思った。
3・印象的な立場と感想
最終章の『彼は醜く威厳もなく』が、信仰と人生の旅路を表しているようで最後まで心を惹きつけられた。終始通して語られている。
人生とは何か?!神とは?!自分自身とは?!を読んでいる読者も考えさせられる作品。
信仰に根を張っている印象は強いものの心の機微や絶望が痛いぐらいに感じさせる文章力に名作と言われる力が感じられる。
ゴルゴタの丘でのキリストの言葉が思い出される
『我が神、我が神、どうして私をお見捨てになられたのですか』
の通り無信仰の信仰に生きる難しさと信じるものに対する尊厳が感じられる。
最後に登場する『ガンガー』ガンジス河の聖なる河の深さが、それぞれの人の深さと共鳴して溶ける感覚の描写は汚くも美しく感じられました。
最後の最後まで不安定な心境が悟りの境地に至る道なのかもと自分でも困惑です。
正月早々少し重たい本を読んでの感想。
それでも色々な本を読みたいとそう感じます。
もしお目を通して頂けたら嬉しいと同時に、
長々とお付き合いいただき有難う御座います。
ただの譫言です。