「家飲みもビール」競う各社
サクラもちらほら咲き始めて、今週末ぐらいからお花見も出来そうですね。
コロナ禍で随分ご無沙汰でしたが、今年はまだ静かに桜を愛でながら一杯やるのがいいかもしれませんね。
コロナ禍では居酒屋など飲食店で飲むことは人目が気になりましたし、何よりも感染予防への協力と点からお酒は随分控えたかもしれません。
ビールの売上はぐんと下がったのですが、そろそろ各社とも巻き返しを図り始めたようです。
それは様々な要因も絡んでのことなんですね。
今日はビールメーカーに各社の一押しビールを
*スーパードライ刷新、過去最大の広告費
*キリン、クラフトビールで「第2の創業期」目指
*サントリー、「プレモルの最高峰」を発売
*サッポロ、ファンの輪広げるマーケティング
*大手4社、ビールの魅力高められるか
と見比べながら
コロナ下で業務用の回復と、家庭用の値上げがビール商戦の行方を左右
という課題までみていきたいと思います。
*スーパードライ刷新、過去最大の広告費
各社がビール復活に乗り出した一つの理由が
2020年のビール減税
です。第3のビールなどの税率が上がる代わりにビールの酒税が下がり両者の価格差が狭まることになるからです。
そんな中で1987年3月17日発売以来初のフルリニューアルしたのが
アサヒスーパードライ
です。
同社では過去最大規模の広告費を投じ、"誕生日"である3月17日を中心に大規模なキャンペーンを展開しています。
リニューアルでは製法や酵母を調整して、飲み応えを向上させたそうです。
ビールを口に含んだ直後、味や香りを強く感じられてスッと抜けるという同社が「辛口」と定義する特徴をさらに際立たせました。
アサヒは21年にスーパードライの具体的なリニューアルの検討に入ったところ、若者層を中心に
「辛口イコール苦い」
というイメージが強いことがわかりました。そこが敬遠される要因なら新しい層を取り込むのは難しいと判断しました。
しかし、一方でリニュアルを機に熱心なファンが離れてしまう懸念もあるのです。
ただ2000年ごろをピークに右肩下がりでスーパードライの販売量が減り続けていることでの危機感が社内にあり、味わいそのものを変えるフルリニューアルに踏み切ったのでした。
*キリン、クラフトビールで「第2の創業期」目指
アサヒが主力商品を刷新する一方で、ライバルのキリンビールはぶつける商品は、
クラフトビールの「スプリングバレー 豊潤〈496〉」
です。
21年3月に発売して年間147万ケースを販売したそうです。
「ビールを再び魅力ある物に変えて市場の活性化につなげる。キリンビールの『第2の創業期』を宣言したい」
とキリンビールの堀口英樹社長は意気込んでいるそうです。
私はこのビールが本当に美味しいと思っていて、特にキンキンに冷やすのではなく、少し常温に近い温度で飲むとコクを素人でもしっかり感じられます。
22年には「キリン一番搾り」と合わせて、1000万人規模の試飲サンプリングなどを計画しているそうです。
日経POSによると、スプリングバレー(350ミリリットル)の2月の平均価格は246円と、一番搾りよりも35%ほど高い水準でした。
各社が原料高に悩むなかでクラフトビールなど付加価値の高い商品の販売が増えれば単価の引き上げにつながるのです。
*サントリー、「プレモルの最高峰」を発売
サントリービールも高価格帯のビールを拡充する戦略です。
同社にとっての得意分野である「ザ・プレミアム・モルツ」のプレミアムビールを深掘りすることで、ライバルとの差異化につなげることを狙っています。
仕込み釜で麦芽を煮出して麦汁を抽出する「デコクション」を3回実施する「トリプルデコクション」製法を採用してうま味成分を残して柔らかな口当たりを実現しました。
最高峰のマスターズ・ドリームは飲食店やギフト品のみで販売してきたビールです。
缶売りの店頭価格は350ミリリットルで286円を想定しており、キリンのスプリングバレーよりも高い水準です。
糖質ゼロの「パーフェクトサントリービール」も1月に刷新しました。健康志向の人にもアピールします。
糖質0=第3のビール
と勘違いされないように従来品に比べ使用する麦芽の量を30%増やし、さらに缶の正面に「本格ビール」と表示しました。
若年層では「ザ・プレミアム・モルツ〈香る〉エール」などへの流入が増えたと言います。
飲用する年代が広がったことで、さらに価格帯を深掘りする戦略を目指すそうです。
*サッポロ、ファンの輪広げるマーケティング
サッポロビールは「サッポロ生ビール黒ラベル」と「エビスビール」に注力する方針です。
黒ラベルは2月に3年ぶりのリニューアルを実施しました。
麦のうまみと爽快な後味のバランスにこだわったそうです。
ファンの輪を広げる取り組みに力をいれるのが
「デジタルとリアルの融合」
だそうです。IT時代での戦略ですね。
黒ラベルでは会員サイトの「CLUB黒ラベル」を4月にリニューアルする予定です。
ECショップを立ち上げて関連グッズを合わせて販売してブランドイメージを作り上げるようです。
リアルでは、2月にエビスビールのファンコミュニティサイト開設しています。22年秋の本格稼働を目指しています。
コミュニティサイトでは会員同士で交流したり、エビスビールの情報を発信したりする予定だそうです。
ファンとの絆を強め、デジタル時代での展開としてビール業界でマストな戦略だというスタンスです。
*大手4社、ビールの魅力高められるか
実は、21年大手4社のビール類販売数量(日経推定)は約3億3000万ケースと20年比で5%減となっています。
減少は17年連続で、缶チューハイやノンアルコール飲料との競合も激しくなっていることが要因です。
今は嗜好が多様化する消費者のニーズをとらえたマーケティングは必須ですが、メーカーが今期待しているのがビール減税です。最終的には第3のビールもビールも双方54円になる予定です。
今までは味はあまり変わらないのに値段が全然違っていた第3のビールと、本格派の味で妥協のないビールの値段が似通ってくればビール市場が活発になってくるでしょう。
一方で見えてくる課題は、原料高などによるコスト高です。
ウクライナ侵攻などで麦や原油が上がり全ての面で利益を圧迫しかねないですね。
自粛や規制を繰り返した飲食店へ卸す業務用のビールの値上げは状況的に厳しいと思います。
そうなれば家庭用のビールですが、値段が上がればせっかくのコロナが落ち着き始めて気持ちが和らぐところに水を差しかねないようになります。
コロナ下で業務用の回復と、家庭用の値上げがビール商戦の行方を左右
この難しい判断を上手く乗り切れば美味しいビールで祝杯をあげることになるのですね。
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