エデルソンに学ぶ、低く伸びるロングボールの蹴り方。
前回、トップレベルの試合中でのロングキックによく見られる2種類の軌道を解説しました。
1つ目が野球におけるホームランのように高く上がって放物線軌道を描きながら遠くまで到達するボールです。
ボールに同じ初速を与えた場合に飛距離が最大になるのは地面からの打ち出し角度が30°程度の時になります。以下のシーンのように高く蹴り上げる蹴り方は、物理的に飛距離を最大化するための方法に則った蹴り方であると言えます。
2つ目がエデルソンの代名詞とも言える低く伸び上がるボールです。
この軌道のボールは到達時間が短いのが特徴で、このシーンのように相手に対応する時間を与えずに味方にボールを渡すために非常に有効なボールです。
↓まだお読みでない方は是非!
今回は、その中でも後者の低く伸び上がるボールの蹴り方について詳しく解説していきます。この軌道のボールはなかなか蹴れる選手が多くないのでうまく蹴れるようになるとかなり武器になるかと思います。
上で挙げた動画はカメラが遠くて分かりにくいので今回はエデルソンによるこれらの映像を使って解説していきます。
前回の復習:低く伸びるボールはスピード命
まずは前回の記事で解説した内容を軽くおさらいしておきます。
以下の2つの図は、空気抵抗を考慮した場合(回転の影響は無視)のボールの軌道を表しています。2つの図は到達距離が51m程度であることが共通している一方で、最高到達点はそれぞれ約10m、約5mと2倍程度の差があります。
この時、初速として与えているのは最高到達点が高くなる場合で100km/h、低くなる場合で115km/hとなっており、低い軌道を実現するためにはかなりの初速が必要であることが分かります。
実際にはこれに回転の影響が加わることで滞空時間が伸び飛距離も伸びることになるので、実践上は綺麗なバックスピンを掛けつつ低めの打ち出し角度で初速がかなり速いボールを蹴り出すことがポイントになります。
ボールに加えるべき力:ボールの中心付近に水平〜斜め下方向へ
キック動作について考える前にボールに加えるべき力を前提として考えておきましょう。
ボールの軌道を決めるのはボールに加わる力であって、インパクトまでのフォーム・身体の使い方はどうでも良いので、最初に目的となるスイング方向、インパクト位置を規定した上でフォームを考えることが極めて重要です。
まず通常のロングキックと違ってボールの高さを抑えたいのでボールへインパクトする位置はボールの中心より少し下の辺りになります。
その上でバックスピンをかけることを考えるとボールの中心から下向きに外れる方向にスイングしなければならず、結果として水平方向〜斜め下方向に切るような形でインパクトする必要があります。
NG例:ボールと入れ替わるように足を止める
続いて、このようにボールへ力を加える方法を考えてみましょう。
最もよく見られるエラーは、水平〜斜め下方向へのスイングを意識するあまり振ってきた蹴り足がボールと入れ替わるようにして止まってしまうパターンです。この蹴り方では、蹴り足を振り抜く場合と比べて蹴り足の軌道自体は斜め下方向に向きやすくなるのですが、蹴り足のスイングスピード自体は小さくなってしまいます。
ボールと入れ替わるような、言い換えるとインパクト直後に蹴り足が地面と接触するような場合にはインパクトの瞬間にまだ蹴り足が加速していたとすると足が地面との接触で大きな衝撃を受けてしまうことになるので、実際にはインパクトの瞬間にはすでに蹴り足のスイングにブレーキをかけている状態になってしまいます。
よって、この蹴り方はスピードが命である低く打ち出して伸び上がってくるようなロングボールには不向きです。その一方で同じバックスピンをかけるボールであっても、30m~40m程度のミドルレンジでのボールでは高さをさらに抑えてバックスピンを強くかけることが求められるため、むしろボールと入れ替えるようにして強く切る蹴り方が適切です。
要はすべて使い分けなんですが、どちらも蹴れるようにするには両者のキックで求められる動作の違いを理解しておくべきかと思います。
エデルソンの例:軸足を奥に置いて自然と振り切る
では、低く伸びるロングキックを蹴る際の正解例の1つとして実際のエデルソンのキックをもとに考えてみましょう。
エデルソンのキックのポイントは軸足をボールの奥に置くことです。
実際のシーンの軸足を置いた場面を見てみるとボールのかなり向こう側に軸足が来ていることが分かります。
ここからは軸足を奥に置くのがなぜ効果的なのかから始め、この軸足の置き方はどのようにマスターできるのかまで解説します。
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